……まさか
本日二話目の更新です!お気をつけください。
「……ふぅ」
食事の間を出て、息を吐く。
今日の夕食、とーっても美味しかったわ。
これまで本当に勿体無いことをしていたわね。
明日の朝食も楽しみ! 早く明日にならないかしら。
とりあえず、自室に戻って、寝る準備をしなくっちゃ!!
私はうきうきで、自室へと続く廊下を歩く。すると、男女の声が聞こえてきた。
「……が……」
「だから……だと思うの!」
「だが……」
ところどころはよく聞こえないものの、その声の主かは、目を凝らさずとも誰かわかった。
私は、厄介ごとに巻き込まれる前に、回れ右をしようとし——。
「あっ、王妃様ぁ!」
捕まった……!!!
うきうきした気分が勢いよく萎むのを感じながら、ぎぎ、と音が立ちそうなほどゆっくりと振り向く。
「あら、アイリ嬢。……それにエドワード陛下も。ごきげんよう」
うふふ、と優雅に微笑みつつ礼をする。
「ちょうど今、王妃様の話をしていたんですよ!!」
アイリは、満面の笑みでこちらに近づいてくる。対してエドワード陛下は気まずそうに、顔を逸らした。
「王妃様、髪を切ったんですね! とっても可愛いです!!」
「ありがとう、アイリ嬢」
アイリを見ても、以前なら間違いなく湧き起こった嫉妬心は全く以て生まれない。……良かった。
そのことに内心で喜びつつ、慌てた演技をする。
「……あら、もうこんな時間だわ! 私、用事があるので、失礼いたし——」
「……こんな夜更けに用事だと?」
エドワード陛下が、疑いの目を私に向けた。
「どんな用事なんだ?」
夜更けだからこそ、寝る前の用意とか、明日の朝食を万全の状態で食べられるようにするためのストレッチとか、いろいろあるでしょうが!
「明日の用意をしようと思いまして。……というわけで」
「明日は特別、公務はなかったはずだが?」
びっくりー、私の予定を把握してらっしゃる。
そういえば、エドワード陛下ったら、王としては有能なのよね。
夫としての評価……は、言うまでもないけれど。
「そうですが、早めに眠りたいので」
「なぜ、そんな必要が?」
め、めめめめんどくさーい!
一から十まで説明しないといけない理由あるかしら。そもそも夜だから早く眠りたい。それって当然のことよね。
「明日の朝食のためです!! では……」
「そういえば今夜の夕食もやけに、楽しげだったな」
「ええ、イーディスの料理はとっても美味しいので!」
全部話したし、これで満足よね。
じゃあ、今度こそお暇してもいいわよね。
「まさか……」
えっ、なに。まだ何かあるの?
お腹いっぱいだから、早くストレッチして、肌の保湿をして、眠りたいんですけど。
「まさか、私に対する当てつけ……なのか?」
「…………………………………はぁ?」
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