変わったな?
……ん?
何か今変な音が聞こえたような……。
まぁ、気のせいよね。
私は気にせず、イーディスとハグをした。
途端に、給仕や他の使用人などがパチパチと拍手をする。
「おめでとう、イーディス」
「イーディス、よかったね!」
イーディスの頑張りは、他の人も知っていたのね。それだけ苦労をかけさせたってことよね。
「……リア」
その歓声に紛れて、誰かの声がする。どうしたのかしら。まぁ、いっか!
「……ゼリア」
そんなことより、イーディスにおかわりをもらわなくっちゃ!
「イーディス、本当にありがとう。それでね、とっても美味しかったからおかわりが欲しいのだけれど……作ってもらえないかしら?」
「はい!!! 喜んで!!!!」
大きく頷いたイーディスはいそいそと厨房に戻って行った。
「リュゼリア……!」
その後ろ姿を料理の味を思い出しながら眺めていると、大きな声で名前を呼ばれた。
どうしたのかしら?
「…………はい?」
ちらりと、そちらに視線をやる。エドワード陛下が、ふるふると震えていた。……あらやだ、寒いのかしら。
給仕に、部屋の温度を少し上げるように指示を出す。
「リュゼリア、君は」
エドワード陛下は、私を見つめていた。
「なんでしょうか、陛下」
仕方ないので私も席に座って、エドワード陛下を見る。
「……君は、変わったな?」
「……ええ、まぁ」
変わったか、変わってないかで言えば、変わった。恋心が消えた私は、生まれ変わったから。きっと、恋心があるままだったら、イーディスがこんなにも頑張ってくれていたことにも気づかなかった。
いいことだらけよね。
「それは……髪をきったことと関係があるのか?」
あっ、もうおかわりが運ばれてきたわ!! さすがイーディス。仕事が早いのね!!
「……そうですね」
もぐもぐ。美味しー!!!!
やっぱりイーディスの料理は最高だわ!!!
あっ、さっきよりも更にスープが薄味になってる。塩分取りすぎになることにも配慮してくれたのね! さすがイーディス!
「リュゼリアっ!! 私を見てくれ」
あら、やだ。また、料理に夢中になって、すっかりエドワード陛下のことを忘れてたわ。
見てくれ、と言われたのでエドワード陛下を見ると、なぜかかなり辛そうな顔をしていた。
……えっ、なに?
エドワード陛下もおかわりが欲しかったのかしら。それならそうと言ってくれれば——。
「君が……心配、なんだ」
「………………………は?」
思わず間抜けな声を出してしまったわ。
あ、ああー! 食べ過ぎってことね? それなら、心配に及ばないわ。
「心配には及びません、陛下。……なぜなら、私とっても幸せなので!」
そう、満面の笑みで伝える。
食べ過ぎで死ぬなら本望よ。いや、でもまって、イーディスの新しい料理がもう食べられなくなるのは辛いわね。
「っ!」
なぜだか、エドワード陛下は驚いた顔をした。
? 少しは控えるべきかしら……って、ああー! ようやくデザートの時間だわ。可愛い可愛いミニケーキが私を誘惑する。
甘い香りが、鼻をくすぐった。
そうよね、先のことなんてまだわからないわ。まずは、目の前の料理に集中しなきゃ。
「いただきます!」
私は、ミニケーキを口に運び……!! えっ、なにこれ! なにこれめちゃくちゃ美味しいわー!! 甘いけれど重すぎず、クリームは口の中でふわっと溶ける。
私が、ケーキの感動で打ち震えている間に、エドワード陛下は席を立った。
「お待ちになって、エドワード陛下」
「リュゼ——」
「召し上がらないなら、そのケーキをいただいてもいいですか?」
ほら、最近隣国でフードロスなるものが話題になっているらしいし。こんなに、美味しいものを残すなんて勿体無いと思うの。
「……は? あ、あぁ、勝手にしろ」
「ありがとうございます! 責任を持っていただきますね」
なぜかエドワード陛下はふらふらとしながら、食事の間を、出て行った。
そんなことより、ケーキよ、ケーキ!
私は給仕がいそいそと運んできてくれた、エドワード陛下用のケーキを口に運び、叫んだ。
「料理長、料理長を呼んで頂戴!」
本日二回目のイーディスの呼び出しは、みんな慣れたもので、イーディスを胴上げしていた。
そんな風にして、私が生まれ変わって初めての夕食会は過ぎていった。
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