夕食会
お風呂から上がり、支度を整えて食事の間へ。
さてさて、今日の夕食は何かしら?
そう思いながら、扉を開けると私を待っていたのはとっても美味しそうな料理——だけじゃなかった。
げ、と思わず漏れそうになった言葉を寸前で飲み込む。
「……どうしたんだ? そんなに驚いて」
驚いても何もあるわけないでしょー!
今まで散々食事を共にする機会をふいにしておきながら、今更食事の間に来るなんてどんな心境の変化かしら。
そう、私の目の前には黒髪に翡翠の瞳の麗しいお顔があった——端的に言うと、エドワード陛下がいた。
はっきり言って、最悪の気分だわ。
気を遣いながら食べる食事なんて美味しくなーい!
せっかくの私の楽しい夕食が……。
いいえ! リュゼリア、よく考えるのよ。食事に集中すれば、気にならないわ。そう、目の前の人物ではなく、目の前の食事に集中するの。
だって、私が今向き合うべきは、このご馳走たちでしょう?
よし、落ち着いてきた。
「……リュゼリア?」
返事がないことを不審に思ったのか、名前を呼ばれた。
「いえ、少々考え事をしておりました」
そう言って何事もないように席に着く。
——そして、夕食会が始まった。
料理を口に運ぶ。美味しーい!
えっ、ええっ、なにかしらこのソースの味!! 我が国の料理はソースが決め手! とはよく言われるけれど。こんなに、コクがあるのに、重すぎず、口溶けも滑らかなソース食べたことがないわ!
それに、お肉の焼き加減も最高に私好みだわ。
うわー、なんて贅沢な時間——。
「髪を、切ったんだな」
「え……あぁ、はい」
待って待って、このお魚もとっても美味しいわ。身も柔らかいし、骨も取ってあるから、パクパク食べれる。
「何か心境の変化でもあったのか?」
「……そうですね」
スープはどうかしら……? お、美味しーい!
魚やお肉の味付けが濃いめだからか、薄味で上品な味付けだ。それで、魚やお肉を食べると、スープが飲みたくなって、スープを飲んだら、魚やお肉が食べたくなって。
このループから抜け出せないわ!
「どんな心境の変化があったんだ?」
「……えぇ、まぁ」
最高!!! 最高すぎるわ。今まで、孤独なことばかりに気を取られて、こんなに美味しい食事にしっかりと向き合えていなかったわ。
「その……何かあったのか?」
「……そんなところです」
ところで、さっきからずっと気になっていたけれど、時期尚早と思って我慢していたのだけれど。デザートは、ミニケーキなのよね。
そのミニケーキの愛らしさと言ったら!!
あぁ、あなたはどんなお味なの。早く食べたいわ。でも、その前にこのお肉とお魚とスープとサラダのおかわりを……。
「リュゼリア!」
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