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お説教

 不機嫌そうな声。聞き間違えるはずのないはずの声に、そちらを向く。

「出かけるとは聞いていたが。供がひとりだけとは、自覚が足りないんじゃないか?」


 その言葉の言い方よりも。

 その瞳の厳しさよりも。


 私は、彼によって今までもたらされてきた感情が、胸の中のどこを探しても見当たらないことに、感動した。


「……良かった」

「良かった、とは?」


 会えば少しくらい、その瞳に映ることができたことに喜びを感じてしまったらどうしよう。


 そんなことも、考えたけれど。


 全く以てそんなことはなかった。


 エドワード陛下は、髪や顔はそのままで、服装を平民用のものに替えていた。

 護衛も三人ほどいるみたいね。


「……いえ、こちらの話です。ごきげんよう、陛下」

「あぁ。それで話を戻すが——」

 くどくどと始まったお説教を、何も考えずに聞き流す。


「……わかったか?」

「ええ、はい。申し訳ございません」


 お説教が終わったあと、反省した風な表情をつくって、しおらしくする。

「わかったならいい」

 私の態度に満足そうに鼻を鳴らして、エドワード陛下は頷いた。


「ところで、陛下。アイリ嬢は今日はいらっしゃらないのですね」


 城内ではあれだけべったりだったのだし、今日も一緒かと思っていた。単純な疑問だった。


「……なぜ、そこでアイリが出てくる?」

「よく一緒にいらっしゃるところをお見かけするので」


 顰めっ面だったエドワード陛下は、急に表情を変えた。

「悋気か」

「……は?」


 いけない、思わず素の声がでちゃったわ。


 いやいやいやいや、単純な事実を述べただけですけど。


 確かに前の私なら、嫉妬の一つや二つじゃすまないくらい嫉妬してたけれども。


「いや、いい。……良い機会だから言っておく」


 あー、これはまたお説教かしら。

「私とアイリにやましいところは何もない」


 はいはい。事実がそうだったとしても、周りからどう見られるかは考えた方がいいのではないかしら。


 無感動にそう思いつつ、エドワード陛下の言葉の続きに耳を傾ける。

「だから、アイリに嫉妬などと狭量なことをするな」

「かしこまりました!」


 嫉妬はもうしない。なので、元気よく頷く。

「!? ……まぁ、わかったならいい」


 不思議そうな顔をしながら、エドワード陛下は腕を差し出した。


 えっ、ええー。

 これは、エスコートしてくださるってことよね?


 でも、はっきり言って、好きでもなんでもない人と——しかも地位が高い——せっかくの休憩時間を過ごすなんて、嫌だわ。


 でも、断って角が立つのもあれよね。


 仕方がないので、私はその腕にそっと手を添えた。


 

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[一言] これはいい「もう遅い」が味わえる予感…!
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