再会
「……え?」
「私の中から、恋心が消えたのよ」
侍女は髪を切った私を見た時以上に、驚いた顔をしていた。
そんなに驚かれるってことは、それだけ私がエドワード陛下に執着していたってことよね。
反省しつつ、侍女を見つめる。
「それでね、あなたに頼みたいことがあるのだけれど……」
◇◇◇
先ほどの侍女——メイカに用意してもらったお忍びの服に着替え、鏡の前でくるりと回る。
ドレスのようにごてごてしていないワンピースは、機能性はもちろんのこと、見た目もシンプルで可愛い。
メイカは、休日によく城下町に遊びに行っていると聞いたので頼んだのだけれど、正解だった。
マーサも私のものに似たワンピースを着ている。こうしてみると、マーサと私はまるで姉妹みたいだわ。
心の中で呟いた言葉に、なんだかくすぐったくなった。
「ありがとう! メイカ」
「いいえ、お役に立てたなら、何よりです!」
得意げなその顔もとっても可愛らしいわ。
「それで王妃殿下、肝心のかつらはどんなものにしますか?」
「そうね……」
かつら、といってもその種類は様々。色や形など、こだわり出したらきりがないほどだ。
「これにするわ」
メイカがたくさん用意してくれたもののなかから、一つを選び指をさす。
選んだのは、茶髪のかつらで、髪の長さは肩ほど。
どうせなら、今までの私とは似つかない色がいいなと思ってこれにした。
「かしこまりました」
早速、メイカが私にかつらをつけて、お化粧を整えてくれた。
「大変お似合いですよ」
「ありがとう」
鏡に映る私を王妃だと思う人はいないんじゃないかしら。
これなら、城下町におりても全く問題なさそう!
マーサも護衛として——マーサは腕も立つのだ——私についてきてくれる。
エドワード陛下には、でかけると侍女を通じて伝えて、了承はとってある。
「では、いってくるわね」
「はい、いってらっしゃいませ」
◇◇◇
城下町は、とても賑わっていた。
「わぁ……」
公務で訪れる時は、みんな畏っているから、こんな風に活気あふれる姿を見るのは初めてだ。
「リュゼリア様、まずはどちらを見ますか?」
「そうね……」
立ち並ぶレストランからは美味しそうな香りがする。
でも、やっぱりまずは。
「露店巡り、かしら」
「かしこまりました。行きましょう!」
マーサと一緒に露店が多い通りまで足を運ぶ。
そこで、見覚えのある人物と出会った。
赤い髪に青い瞳。——恐ろしささえ感じる、整い過ぎた顔。
「最も必要な薬は、お役に立てましたか?」
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