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Farewell  作者: ミニト
7/8

ゆりえの浮気7 - 軽視

 僕は朝方の歌舞伎町のホテル街を歩いていた。朝方のホテル街には、意外に人が少ない。

 朝方にいるのは、カラスとたまに走り回っている、ネズミだけだ。

 僕はポイ捨てられた、空き缶や食べかけの牛丼を蹴飛ばしながら、あてもなくぶらついていた。そうすると、一軒のホテルが目の前に現れた。

 ”ホテルI島"

 ゆりえが浮気した場所。

 歌舞伎町ではGローと二分して安いと評判で、お金のない人が節約のために利用する人が多い。お手軽なラブホというやつだ。

 僕がホテルの外観を見ていると、なぜかホテルの壁が透明になっていき、部屋の内部が見えた。そこにはゆりえと、浮気相手のアキがいた。

 アキはまずゆりえの服を脱がし、ブラも脱がせると、キスをしながら、乳首をなめ、そしてゆりえをベットに押し倒した。


 "やめてくれ頼む"

 "やめて"

 "やめて"

 "やめて"


 僕は夢の中で叫びながら眠りから覚めた。僕は気づけば、ベットで寝ていて、隣ではゆりえが寝ていた。

 いつ寝たか記憶がない。時間を見ると、19時を回っているところだった。

 記憶では15時までは起きていた筈だ。


 僕の寝起きは最悪だった。夢の事なんて忘れるくらいに、浮気のショックと苛立ちが、胸の底から這い上がってくる。精神的な苦しみでまともに動ける気がしなかった。

 僕はそばにいつも置いてある、精神安定剤を2錠程飲むと、台所へ行きウーロンハイを作り、一人で飲んでいた。

 そうすると、ゆりえがゆっくり起きてきた。僕の動き回る音がうるさかったのかもしれない。

「おはよ」

 僕は荒い口調で言った。もちろん普段は、こんなきつい言い方はしない。

 ウーロンハイを飲みながら、僕は話し合いの続きをしようといった。が、話し合いとは、名ばかりで、ゆりえの言い訳を聞いて、それに俺がキレての繰り返しだった。

 そうこうしていると、ゆりえはコートを着始めて、何処かに行く準備をしていた。

「お酒を買ってくる」

 ゆりえは外にそのまま出ていった。

 一人残った僕は、YouTubeで好きな曲をかけていた。


 "L'Arc~en~Ciel"

 "OASIS"

 "Radiohead"


 とりあえず、好きなバンドで切ない曲ばかりを流していた。が、何も頭に入ってこなかった。

 頭にあるのは、

(どうして浮気なんてしたの?)

 その事だけだった。

 ウーロンハイの2杯目を飲む。そして、すぐに3杯目も飲む。そして、時間が過ぎていった。

 ゆりえが出ていって、45分を過ぎた頃に、酒を買いに行っただけにしては、ゆりえの帰りが遅い事に気づいた。こういう状況とはいえ、心配になった僕は電話をすることにした。

 プルルル、プルルルと、電話の呼び出し音がなり、ゆりえが出た。

「ゆりえ、帰りが遅くない?今どこにいんの?」

「公園で飲んでる」

「なんで?」

「耐えられなかったから」

「俺もこの雰囲気は嫌だし、気持ちは分かるけどさ、公園で一人とか危ないし帰ってきて。それこそなんかあったら、あんたの親に怒られる」

「分かった」

 ゆりえと電話を切ると、ぼんやりとした。帰ってきたら何を話そう。そう、別れ話、それしかなかった。

 僕はウーロンハイを飲みながら、彼女が帰って来るのを待った。


 ゆりえは20分程で帰ってきた。缶チューハイを袋に、数本入れていたが、どうも雰囲気がおかしい。

「ゆりえ、酔っ払ってるだろ?」

「軽く」

「ゆりえさ、薬のせいで吐くタイミングとか分からなくなってるから、程々に、、、」

 と言いながら、そういえばこの人は、今日の朝方に、テキーラローズを6杯、クライナーを6本も飲んでいたんだった。

 流石に一人ではないだろうが、話ではホストと二人で飲んだようなので、合わせて6杯は飲んでいたんだろう。

「とにかく、飲みすぎんな」

 それだけ言って、話し合いをしようとした。

 ただ、何を言っていいのか分からずに、沈黙が流れるばかりで、ゆりえはひたすらにチューハイを飲んでいた。

 そのうち、ゆりえが、吐きそうになるのに気づいた。

「ゆりえ、吐きそうならゴミ箱にしな、ほら!」

 僕はゴミ箱を渡したが、とき既に彼女は、座椅子にすべてを吐いてしまっていた。

「だから言ったじゃん!」

 ゆりえに座椅子の掃除をしておいてと、伝えたが、フラフラで、使い物にならないのをみて、仕方なく、自分で彼女の嘔吐物を拭き、お風呂で洗い流した。

 僕はイライラとしていた。

「俺のこと舐めてんだろ?やっぱり」

 彼女は吐いてぐったりしていた。

「舐めてんのかって聞いてんだよ!」

「舐めてた」

 え?と、僕は放心状態になった。

 酔ってゆりえが言い間違いをしたのかとも思った。

「俺を舐めてたってこと?」

「舐めてた」

 彼女はベッドで横になりながら、気持ち悪そうにしていたが、はっきりと言った。

 僕はきっとその言葉を一生忘れない。

「レンを舐めてた。浮気しても大丈夫だと思った。最初から浮気をする気だった」

 その言葉を聞き、僕は彼女のスマホを殴りつけた上に、家の窓からぶん投げた。投げた彼女の携帯は、大きくバンガラガラと音が鳴り、そして止まった。

 家は3階だ。まず間違いなく使い物にならないくらいに壊れているはずだ。


「レンの事をなめてたから、浮気しても大丈夫だと思った」


 その言葉が頭から離れなかった。

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