ゆりえの浮気5 - 保身
ゆりえは、結局2時頃に家へ帰ってきた。
僕はお酒を飲まないと、どうにかなってしまいそうだったので、ゆりえに焼酎を買ってきて貰っていた。
ゆりえが来た後の、部屋の中の空気は重くて、二人とも何も喋らずに、黙って部屋のベットに座っていた。
「そういや、私の荷物は?」
「ゴミ捨て場」
ゆりえはそれを聞くと、すぐに荷物を取りに行った。
僕は苛立ちと疲れで、手伝いをする気がおきなかったので、部屋で待っていた。
ゆりえは10分ほどすると、すべての荷物を持って部屋に帰ってきた。そして黙々と、服や小物なんかを片付け始めた。ゆりえは15分程度で、僕が捨てた物を片付け終わっていて、ゆりえの手際の良さに驚いていた。
「本当にごめんね」
「つかさ。浮気をしないって昨日言ってたのに、ナチュラルにするってなんなの?」
「ごめん」
「しかもさ、俺は今日仕事だったのに休んだからね?お前本当にふざけてるよな?」
「しかもさ、こんな状況ならすぐに、歌舞伎から帰って来るでしょ?普通。それなのに、1時間もバーにいて帰ってこないってなんなの?もしかして舐めてる?」
「ごめん。怖くて帰れなくていちゃったの」
僕は少しかわいいと思ってしまった。
「まぁいいや。浮気の話をしよう。どんな状況で、どんな感じだったの?」
「グリーンプレイスってバーで、アキさんに会って、意気投合して、バクに誘ったの。そして、ホテルに行くって話になったの」
嘘じゃねーか。
「みき、ゆりえの態度が酷くて、怒ってたそうだよ」
「でも、みきも、ホテルに行きなよって煽ってきてたよ?」
は?と思った。
友達の浮気を止めもせず、ホテルへ煽るなんて、本当ならば、みきもクソ野郎だ。だが、みいめろに確認をしなければ、真実は分からない。
僕はすぐにみきに電話をした。みきは普段は仕事が忙しくて、あまり電話に出ないのに、この時はすぐに連絡に出た。
「忙しいとこごめんね。お疲れ。聞きたい事があるんだ。ゆりえに聞いたんだけど、みきが二人でホテルへ行けばって、煽ったって言ってるんだけど、それ本当?」
「はぁ?ゆりえがそう言ってんの?私は煽ってねーよ!そもそも、ゆりえの態度が悪くてムカついてたんだよ。それでイライラしてて、二人に勝手に二人で行けばって言ったの。しかもさ。その日用事があって、流石に疲れてて、帰りたかったんだけど、ゆりえが帰してくれなかったの。それなのにホテルへ行ってさ。その間、私は疲れてたのに、ずっと置き去りで待ってたんだよ。すげぇむかついた。帰るなっていっておいて、自分はホテルに3時間も行ってんだよ?つか、煽ったとか人のせいにするとか、何なの。まじムカつくんだけど」
「そっか、わかった」
「そもそも、煽るみてーな、ガキみたいな事しねーよ」
「分かったよ」
僕は電話を切ると、ゆりえの言い訳ばかりをする態度に、少しうんざりしていた。
近くにいたみきに聞けば、ばれてしまう話だし、そもそも浮気はもうバレている。正直に言えばいいのに。ホテルはゆりえから誘ったのだと。細かい言い訳で、微妙にごまかすゆりえに、苛立ちを覚えた。
僕は部屋に戻ると、浮気の話の続きを話そうとした。
「で、バクから何処のホテルに行ったの?」
「I島」
「どんくらい?」
「2,3時間くらい」
本当はアキさんは、二時間半しか時間がなかったけど、それでもいい?って聞かれたゆりえが、猛プッシュで、ホテルへ誘ったんだろ?
僕は何も話す気が無くなってしまい、今後のことを、ぼんやりと考え始めていた。
僕はゆりえの浮気を許せるだろうか?と。