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Farewell  作者: ミニト
1/8

ゆりえの浮気 - 約束

 11月16日の朝、目が覚めると吐き気が酷く、あきらかに二日酔いだった。

 僕は吐き気を抑えながら、そばに置いておいたアクエリアスをガブ飲みすると、ふとベットを見た。そこには帰っているはずの彼女のゆりえがいるはずだった。

 彼女は15日の昼から歌舞伎町に飲みに行っていた。飲みに行くとき、僕らは約束した。

「終電で帰るよ」

 それが昨日の夜には、

「もっと遊びたいから早朝に帰る」

 と言って帰って来なかった。

 その時も約束を守らない彼女に苛立ちを覚えて喧嘩になったが、結局僕が折れた。

 彼女がどうというより、一緒に遊んでいる友達がもうオールをするつもりだったので、悪い気持ちになったからだった。

「ゆりえの事は任せて!私がいるから、浮気とか危ない目には合わせないよ」

 一緒にいた友達もそうも言っていたし、彼女のことを信用していたので、頭には来ていたが許す事にした。

 が、朝の10時になっても、帰ってきていないうえに、明らかにまだ歌舞伎町で遊んでいる彼女に、僕は苛立ちを覚え、電話をした。が、彼女は電話にはでなかった。

 2度、3度、電話をしても出なかったので、仕方ないと諦め、僕は仕事へ行く準備をした。準備はすぐに終わり、そのままバス乗り場へ向かった。

 男の準備は楽だ。服さえ着ればすぐに仕事へ行けるのだから。

 僕はいつも通り、家の近くにあるバス停から、バスに乗った。

 昨日、寝るのが遅く、寝不足だったのもあり、席に座った瞬間に、うつらうつらとして、眠ってしまった。

「ててててててん。ててててててん」

 聞き覚えるのある音、LINEの通話の音だ。

 バスの中で、寝ている所を起こされた僕は、不愉快な気持ちで、バスの中だからと、すぐ切るつもりで電話を取った。

「今、バスだか」

「ねぇ、レン!そんなことより!ゆりえマジでやばいよ!」

 みきという、俺と彼女の共通の友達だった。

「ずっと飲んでんだろ。知ってるよ」

「違う!ゆりえ、浮気してるよ。ホテル行ってた。生外だしだって」

 僕はショックで、頭の中がぼんやりした。その次に怒りが頭に湧いてきた。

「バーで会ったやつと?」

「うん」

 分かったと僕はいい、すぐにバスを途中下車すると、職場に体調が悪くて休むと連絡し、ゆりえに電話をした。が、数回電話をしても繋がらなかった。

 頭にきた僕は、LINEでメッセージを送った。

「今日、男と浮気したんだって?みきから聞いたよ。頭にきたからお前のものすべて捨てるから。さよなら、顔も見たくねぇ」

 頭に血が上りまくった僕だったが、本当に荷物を捨てるつもりはなかった。頭に来て言っただけだったのと、こう言えばすぐに帰るだろうと思ったからだ。

 僕は帰りのバスに乗り、ショックと、悲しみと、憎悪で何とも言えない気持ちになり、地獄にいるような気分だった。

 人生で、家まで帰る時間が、こんなに地獄のようだと思った事はなかった。どうして、浮気なんて、そんな事ばかり考えた。


 ゆりえとの出会いは、歌舞伎町のバーだった。。

 その時は、単なる友達としてしか思っていなかった。

 ただ不思議な事に、ずっと一緒にいたいと思っていた。だから僕らは色々な事をした。

 お世話になっているバーで、一日バーテンをしてみたり、ゆりえはヒースのJOKERが好きだったので、二人でハロウィンに、ジョーカーとハーレー・クインのコスプレをしたり、30時間ほど歌舞伎町で飲んだり、ゲームセンターで遊んだりと、常軌を逸するような遊びもしたりした。


 あれは出会って半年程だったころだった。ある日、衝撃な事を聞いた。

 お世話になっているバーで飲んでいる時だった。

「私、あなたの友達とやってる。他の人とも。10人くらい。Tinderをあわせたら13人とか」

 僕は頭がくらくらした。そして激怒した。

「男女関係は自由とはいえ、友達とセフレにするために、紹介したんじゃねぇ。それに他のやつとは、なんでやったの?」

「お酒を奢ってもらいたくて」

 風俗で働く女性に失礼な程の理由だ。酒を奢ってほしいから、体を売るなんて。まだ、お金を貰ってSEXをした方がいい。

 酒を奢ってほしいから、体を売るなんて。

 僕はブチ切れた。何を言ったのか覚えてないくらいに。

 そしてゆりえはこう言った。

「もうやめるよ」

 僕は安堵した。友達(当時は)としてホッとした。


 それから時間が立ち、僕らは付き合い始めた。

 馴れ初めは、ゆりえからの告白だった。

 僕は友達としてしか思っていなかったから、最初は戸惑った。友達だと思っていたからだ。でも、自分も一緒にいるのが好きだったので、僕らは付き合った。

 そして、そのまま同棲を始め、今では2年ほど一緒に暮らしていた。


 バスの中で僕は彼女の言った事を考えていた。

「もう、体を売ったりはしないよ」

 という事は、本気で浮気をする気でやったという事かと。


 バスが家の近くに着き、部屋に帰るとただぼんやりとしていた。

 僕は昔の彼女に浮気をされた事はあるので初めてではない。その時も辛かったが。

 そして、自分も昔にした事がある。

 が、今回はレベルが違う。

 ゆりえとは2年間も同棲をしていたし、喧嘩もしたけれど、何も問題がなかった。

 あるとしたら、セックスレスと、ゆりえの病気、統合失調症の薬による副作用の対応だった。

 統合失調症の薬は、どうしても薬効が強く、ぼんやりとした状態になってしまうのだ。

 そして、薬のせいで、ゆりえは性欲がなくなっていた。

 頭が悲しみといらいらと、憂鬱で考えがまとまらず、どうしたらいいのか、分からなかった。


 11:58だった。

 ゆりえから電話がきた。

 僕は電話を取ったけれど、なぜかすぐに電話が切れた。

 僕はすぐに電話をかけ直した。

「なんだよ!」

「ごめん。服とか捨てないで」

「つかさ、今、お前どこにいんの?」

「バク」

「お前、ふざけてんの?こんな状況で、バーで飲んでるって、お前どうかしてんじゃねーの?」

「ごめん」

 ぶち。

 僕はゆりえの非常識な行動に頭にきてしまい、電話を切った。


 その後は、彼女とのLINEのやり取りの応酬がずっと続いた。

 こんな状態になっても、彼女は戻ってくるつもりが無かったのか、帰るという連絡はなかった。

 ゆりえは、ただ、"本当にごめんなさい”、”捨てないで”とばかりメッセージを送ってきていた。


 僕はやりとりの中で、ふと興味が湧いた。どんな奴とやったんだろうと。

 僕はゆりえにメッセージを送った。

 "ちなみに誰と浮気したの?いや、興味本位で知りたいんだけどさ”

 ”バクであった人"

 ”名前は?"

 “あきさん"


 聞いた瞬間後悔と、憎悪と怒りが湧いてきた。聞かなければ良かったと思った。自分の好奇心を憎んだ。僕はまた頭に血が上るのが分かった。が、不思議な事に、冷静にゆりえの過ちを選ぶ言葉を選んで責め立てた。


 "お前、飲みに行く時、こう言ってたよな?

 終電で帰るともいってたし、浮気なんてしないよって。で、終電で帰るって約束を破った。むかついたけど、俺は許した。信用もしてたからな。それなのに、よりによってバーで会った奴と浮気って……

 ゆりえを信用していたのに。だからオールも許したのに。

 俺の事を舐めてたんだろ?

 全ての約束も何もかもを裏切って、ナチュラルに浮気してくる最低な奴の事なんかもう知らないわ。家にあるお前の荷物は全て捨てるからな”


 “そしてもう一つ聞きたい事があるんだけどさ、なんで浮気したの?"

 ”レンとセックスレス"だったから"


 嘘だ。彼女は薬のせいで、性欲が無くなっていた。酒を飲む時は、薬を飲まないようにしていたけれど、そんな簡単に効果が消えるような弱い薬ではない。

 僕はTwitterを開き、ゆりえのTweetを見た。分かるだけで、六軒以上ハシゴをしていて、彼女がさっきいると言ったバクで、クライナーというショットを、少なくとも6杯以上は飲んでいた。


 レスだからというのは言い訳だ。彼女は性欲が強い。少しは本当だと思う。

 が、ただ今回に限っては、酔っ払って、そういう雰囲気になり、SEXをしたくなり、ホテルに行ってやったというのが、本当だろう。

 僕は更に頭に血がのぼるのがわかった。

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