ミアリーとメアリーの愛の唄
ミアリーとメアリーの二人が謳う愛の唄
あるところにメアリーとメアリーという二人組がいました。二人はたいそう仲が良くまるで姉妹のようだと言われていました。でもそんな二人にも悩みがあったのです。それは・・・。
「ねぇメアリー。どう?」
「だめよミアリー。全然届きそうにないわ」
「そう・・・。今日も駄目だったわね」
「えぇ。早くあなたに触れたいわ」
二人は未だに触れ合ったことがなかったのです。恋人と見まがうような友愛と親愛を謳う二人でしたがその指先にすら触れたことがなかったのです。そんな二人は今日も埋まることのないその距離を埋めようと必死にもがいていました。
「悔しいわ。あなたのその美しい肢体も真っ白な肌も触れることはできないのに、毎日その美しい身体を見るなんて」
「あなたこそ美しい洋服にかっこいい時計がついているじゃないアフリカチックな柄が今日もとてもすてきよ」
「いえいえあなたこそ、一色でそこまで美しいのは素材がいいことの証明じゃない」
「でも私にはそんなカラフルな色は似合わないわ。どんな色でも着こなすあなたが羨ましいわ」
今日も今日とてお互いに大好きな二人はお互いに褒めあっていました。
「約束するわ。いつかあなたとこの手をつなげた時にはあなたにきっといろいろな色の服を似合うまで探して見せるわ」
「えぇ、私も約束するわ。シンプルな服であなたに似合う服をきっと見つけて見せるわ」
そうして結んだ約束はいったいどれだけの数になるのでしょう。それだけの日々を二人は過ごしていました。
こうして毎日のようにお互いを褒め、お互いを望み、お互いに触れられないまま数年が過ぎました。今日もまたお互いに触れられないまま一日が終わるものだと思われました。でも今日は様子が違いました。
「なんだか家の中の様子がおかしいわね」
「そうね、こんな夜更けなのに随分と騒がしいし夏でもないのに随分と暑いわ」
炎が爆ぜるパチパチという音が、視界を真っ黒に染め上げるような煙が、二人を覆います。でも二人は気づきません。
「ねぇ、どんどん暑くなっているような気がするのだけれど」
「えぇ、それになんだか夜よりも暗い気がするわ」
遂に炎は二人のいる部屋にまでやってきました。勢いがとても強くなっている炎はたやすく部屋を包み込んでしまいました。その炎は全てを燃やし、ついには部屋を崩してしまいました。
そして二人は初めてお互いに触れ合えたのです。
「メアリー!私、あなたと触れ合っているわ!」
「私もよ!ミアリー!あぁ、あなたの肌はこんなにきめ細かくて美しいのね」
「あなたもよ!メアリー!やっとあなたの体温を感じることができたわ!」
「でもなぜかしら。なんだか涙が止まらないわ」
「私もよ。やっとあなたに触れる夢が叶ってうれしいのになぜかしら」
そしてその炎は二人を結び、そしてその髄まで燃やし尽くしました。
二人はきっと幸せだったでしょう。だって生涯の夢が叶い、愛する彼女の腕の中で燃え尽きたのですから。
おしまい