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2-3話出立

新たにこの小説の名前を『星雨の誓い (毎日更新版)』として、1話分溜まったものは、『星雨の誓い』という小説を新たに作り、そちらの方に載せることにしました。


何卒ご容赦ください

そう、猛攻をしのぎきったと確信したモケの胴を、風の速さで飛んできた小太刀が捉える。流石のモケも反応が遅れ、呻き声を漏らし尻もちを着く。


「ふふ、魔法で小太刀を飛ばしたんだ! あぁぁやっと勝てた!!」

「くっそ、油断した……」


▽▽▽


モケは苦虫を潰したような顔でそう漏らす。


「何が攻撃速度上げるため、だよ。軽いから飛ばしやすいから小太刀にしてたんだろ」

「ふふん。ハッタリ使えなきゃ、モケさんには敵わないかなって」

「ちっ、まぁその通りだな」


モケは立ち上がると、イズモの頭に手を載せ撫でる。


「ばーさんに習ってることを鵜呑みにするんじゃなく、応用してる。そんなお前なら、命符に恵まれなかろうとやってけるさ」

「……ありがとう」


老人に褒められ、少し照れるイズモ。


「さて、帰るか。日も昇ってきたし、そろそろばーさん達も起きるだろうしな」


そう言ってモケは、ワイバーンの死体を槍に突き刺し、その槍を方に乗せて帰路に着く。イズモは小太刀を鞄に片付け、その後を追うようにして村へと帰った。村に帰ってすぐにモケとは分かれ、モケはワイバーンを置きに解体屋へ、イズモはマギア宅へと向かった。


「ん…… まだ起きてないか」


イズモは寝室を覗いてみるが、2人とも起きる様子すらなかった。リビングにある時計の針は6の文字を指しており、朝ご飯を作り始める時間帯だった。米をとぎ、炊くために鍋にセットし、火をつけようと試みる。


「今日は火がつくかな…… 【生活魔法】イグニッション」


手のひらに炎が現れ、その炎を少し圧縮してコンロへ放つ。しかし、その炎はコンロにたどり着く前に、何かにかき消される。


「……マギアさんめ、鬼畜設定にしてるな」


マギア特製魔術訓練用コンロ。このコンロの特殊な所は、火をつけることがかなり困難な所である。まず、コンロであるのに火をつけるためには魔法でつけなければならない。さらに厄介な点は、このコンロからは魔法を無効する魔法を微弱ながらも発している。そのため、込められた魔力が弱ければ掻き消されてしまう。この魔法の威力は調整可能で、今日の調整はどうやら鬼設定のようだ。


「【生活魔法】イグニッション」


再度着火に挑戦する。今度は炎を出来るだけ圧縮し、スピードも上げてかき消されないよう注意する。


「よかった、何とか()いた」


上手いこと火がついたので、今度は主菜を作るためにマギア特製魔道冷蔵倉庫の中を確認する。


「今日は…… ベーコンハムエッグ……? いや、ベーコン切らしちゃってるよな~」


マギア特製魔道冷蔵倉庫の中身と睨めっこしながら、メニューを考える。


「あ、鮭あった。焼くか」


鮭の切身を3つ取りだし、両面に塩をふりかけ、油をひいたフライパンに載せる。先程の要領で反対側のコンロにも火をつけ、フライパンを乗せる。


「んぁ…… おはようイズモ……」


匂いにつられたのか、目を擦りながらマシロがリビングへとやって来る。白く染めた長い髪は少しボサボサになり、寝癖もついていた。


「おはようマシロ。よく眠れた?」

「うん。久々に、あんなにフカフカのお布団で寝れたから」

「そっか、それなら良かった。もう少し待ってて、もうちょっとで朝ご飯できるから」

「うん、分かった…… なにか手伝うことある?」

「大丈夫大丈夫。それより、寝癖直さないとね……」


マシロは顔を赤らめて自分の髪を触る。手触りで寝癖があることが分かり、急いで洗面所へと向かった。その間にイズモは焼き鮭とご飯を皿に盛り、テーブルへと運ぶ。さらに魔法で湯を作り鍋へ注ぐと、空いたコンロに置き、作り置きの出汁を加えて火にかける。次にワカメと豆腐を取りだし、小さく切って鍋へ入れて火を通す。


「イ、イズモ~! ね、寝癖なおらない!」


マシロが焦った様子で戻ってくる。その髪はたしかに、洗面所へ行く前とそこまで変わっていない。


「こっち来て、直してあげる」


イズモは魔法で水球を作ると、クシの形に変化させる。そのクシでマシロの髪をとかす。


「あれ、温かい……」

「水じゃ冷たいかと思って、40℃くらいにしたんだ。ほら、こっち向いて」


後ろ髪をとかし終わり、今度は前髪をとかす。クシでとかされた所から、寝癖がどんどん整えられる。


「あれ? 髪が濡れてない……?」

「あはは、濡らしたあと、すぐに乾かしてるんだよ。シャワー浴びた後にすぐ乾かされてる感じ」

「すごーい! やっぱりイズモ、魔法上手だよね?」

「昨日も言った通り、覚えるの苦手だけど、マギアさんに教えてもらってるから細かい操作や応用は得意かな」


とかし終わると、先程までボサボサだったマシロの髪には、寝癖ひとつなかった。


「ありがと!」

「いえいえ。あ、そういえばヤードムさんが作ってくれてた服、完成したみたいだよ。ほら着てみたら?」


イズモから渡された服を受け取ると、マシロは嬉しそうに、軽い足取りで着替えるために部屋へと戻る。イズモはその間に火にかけておいた鍋に味噌をとき、味見をしてから器に盛る。


「味噌汁も完成っと……」


出来た味噌汁と箸をテーブルに配膳し、準備を終える。イズモは魔法を唱えて半透明の鳩を作ると、マギアの部屋へと飛ばす。それから少し経つと、気だるそうに欠伸をしながらマギアがやってくる。


「【生活魔法】伝書鳩か。うるさいったら無いねぇ」

「そうでもしなきゃ、マギアさんは起きないじゃんか」

「まぁそうだけどね…… ん、マシロは? まだ寝てるのかい?」

「いや、ヤードムさんが作ってくれた服に着替えに部屋に戻ったんだ。そろそろ来ると思うけど……」


そういうや否や、バタバタと大きな足音が近づいてくる。足音がする方を向くと、丁度よくヤードムお手製の服に着替えたマシロがいた。


「あ、マ、マギアさんおはようございます」

「あぁおはよう。ふぅん、中々似合ってるじゃないか」

「うん、マシロの髪の色も映えるし、可愛いね」


マギアとイズモの褒め言葉に照れるマシロは、冒険者風の動きやすい服に、それらを覆い隠すように白を基調としたフード付きの上着を纏っていた。


「このフードで顔も隠しやすいし、流石だね。あとは…… 自動修繕・自動清浄の魔法をかけてあげるよ。ついでだ、防御魔法もかけるかね」

「ほ、ほんとですか?」

「……やり過ぎないでね、マギアさん」


孫を可愛がるかのように甘やかすマギアを、イズモがジト目で釘を刺す。


「分かってるよォ、人は成長する生き物さ。アルコの時みたいなことはしないさ」

「ア、アルコの時って……?」


マシロは首を傾げる。


「マギアさん、アルコが命響式の時に今みたいに魔法を付与した服をプレゼントしたんだ。その時の服、名のある剣で切っても切れない上に、自動修繕の力が強すぎて着用者の傷も治してた」

「そ、それはなんていうか…… 凄すぎますね……」

「あん時は青かったのさ。今回は大丈夫、自動修繕の範囲を服だけにしたし、服自体の防御魔法は弱いよ。魔法耐性は少し強めにしたけど、防げて初級魔法程度さね」


マギアは悪びれずにそう言ったが、そもそも自動修繕に防御魔法がかかってる服は十分高価なものである。それを知ってるイズモは指摘するか迷うが、マシロのためならいいかと指摘するのを諦める。


「マシロ、十分高価なものになったから、あっちに行ったら魔法が付与されてることとか言ったらダメ。悪い大人に目をつけられるからね。分かった?」

「う、うん。分かった」

「なんだい、十分手を抜いたってのに。そんなの欲しがるやつそうそうおらんよ」

「絶対いるって。それにこれ、ヤードムさんが作ったってことは着用者に合わせてサイスが変わるでしょ。冒険者なら喉から手が出るほど欲しいはずだよ」


その言葉にマギアが黙ったことで、イズモは己の推測が正しかったことを確信する。


「そんなわけで、絶対に話しちゃダメだからねマシロ。同世代の子にも、先生にもね! それでも何か聞かれたら、俺が魔法かけたってことで説明して。マギアさん程じゃないけど、俺もあの魔法使えるから嘘じゃないし」

「わ、分かった!」


そんなこんながあったが、3人は朝ご飯を食べ始める。マシロは故郷の朝ご飯とほぼ同じことに驚いていたが、イズモが心細い思いをしているだろうマシロのために合わせて作ったのだ。早々に朝ご飯を食べ終わると、イズモは後片付けを始め、マシロはそれを手伝う。2人はその後、歯磨きをして支度を終わらすと、自分の部屋から荷物を取ってリビングへと戻る。そこには、おめかしもして準備万端のマギアが椅子に座っていた。


「さて、それじゃあ行くとするかい。あ、それとこれ、命響式を迎える2人へ、あたしゃからプレゼントさ」

「あ、ありがとうございます!」

「マギアさん、ありがとう」


マギアが2人へ渡したのは、肩から下げるタイプの茶色い鞄だった。何の変哲もない、使い勝手のいい鞄に見えるが、イズモはすぐになにかに気づく。


「……マギアさん、これ、マジックバッグ?」

「おぉ、よく分かったね! そう、マジックバックさ!

昨日の夜から急ピッチで作ったから、容量は部屋1つ分くらいしかないけど」

「いや、昨日の夜からなら十分す……」

「代わりに、マシロの服と同じ魔法かけといた」


その言葉に、イズモは空いた口が塞がらなくなった。


「いや、だから、やり過ぎだよ!」

「大丈夫さ。それに加えて、これは所有者を設定する魔法をかけたからね。なくしても、誰かに盗られても、魔法を唱えれば戻るようにしといた。その魔法についてはメモを中にいれといたから、覚えときな」

「いや、それなら人質にとられ…… いや、もうダメだこの人に何言っても聞く気ないや…… マシロ、とりあえずこれも他言無用でね……」

「う、うん!」


ネジの外れっぷりに驚き通り越して呆れ果てたイズモ。

そんなイズモとマシロの手をマギアは握ると、


「さ、行くよ!」


紫の魔法陣を広げ、学園都市オリーブへと飛んだ。



最近寒いですね

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