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7-8話 命符

「先程の説明で最終的な性能(・・・・・)という言葉がありましたが、それはつまり命符は成長する(・・・・)って事であっらっしゃいます?」

「ん、いい所に気づいたな。君の言う通り、命符は成長するんだ」


メトルはそこで言葉を切ると、その手のひらに淡い光が集まり、半透明であるのに白く輝く1枚の札が現れる。


▽▽▽


「命符の成長は、5段階になっていて、まず最初は『一見(いちげん)』と呼ばれる状態なんだ。君たちも昨日、命符を受け渡された時はこの状態だったろう?」


メトルは分かりやすいように自分の命符を見せながら解説を続ける。


「命符を使うことで、独自のスキルや魔法、力を使えるようになるが、この段階ではまだ命符の力を引き出すことは出来ない。そこで―――」


メルトの命符が光ったかと思うと、半透明で触ったら消えてしまいそうに(おぼろ)だった命符が、実態のあるしっかりとした一枚の札へと変化していた。その札は透明感こそ残したままだが、先程とは違い、刻まれた模様が浮かび上がり、色づいていた。


「これが第二段階。『姿見(すがたみ)』と呼ばれる状態だ。この状態になると命符の力を使うことが出来る。ただまぁ、そこまで意識しなくても使えるやつは使えるから、いつの間にかこの状態になっている奴もいる」


メトルは自分の命符を身体の中へとしまうと、説明を続ける。


「この『姿見(すがたみ)』以降は、『具現化』、『顕現』という段階を踏む。そして、『顕現』に辿り着いた極々一部の中のさらに一握りのみが『明神(アキツカミ)』と呼ばれる最終段階へと登る」


メトルが淡々と説明していると、学生の1人が手を挙げる。メトルはそれに気づき指名すると、その学生は立ち上がり声を上げる。


「その、『明神(アキツカミ)』になれた人はどんな人がいるんですか?」


学生の質問に、メトルは顎に手を当て少し考えると、口を開く。


「身近な人でいうなら、この学園のトップである学園長先生は『明神(アキツカミ)』だな。それ以外にも数人、この学園には『明神(アキツカミ)』がいる」

「メトル先生は『明神(アキツカミ)』なんですか?」

「残念ながら、まだ『顕現』だ。いつかは『明神(アキツカミ)』になりたいが、どうやったら『明神(アキツカミ)』になれるのか、未だ条件は明らかになってないからなぁ」


メトルはボヤくようにそう語ると、その学生は一礼をしてその場に座った。


「とりあえず、今日はこの『姿見(すがたみ)』の状態になれるよう皆は頑張ってくれ。その前にはまず、命符を出せるようにならないとだから――― さぁ、出番だぜイズモ君」

「えっ!? あ、出番?」

「そーそー。俺が命符の出し方を指示するから、言われたとーりにやってくれ。君は器用だし、一発で出来るよ」

「そんな期待されても…… ま、まぁやりますが」


メトルに指示されるまま、学生達から一番見えやすい教壇へと移動させられるイズモ。イズモはそこで一息つくと、斜め後ろに立つメトルに指示を仰ぐ。


「それじゃあ、これからイズモ君がお手本としてやるので、皆さんも一緒にやってみて下さい。それじゃあまずは、身体の中に流れる魔力――― あぁ、魔力がない人は血液でも気でもなんでもいいので、とりあえず身体の中へ意識を向けてください」


言われるままに、イズモは身体の中を流れる魔力に意識を向ける。


「それでは次。身体の中へと意識を向けると今までは感じたことの無い何かがあると思う。それに気づけたら、今度はそれに意識を向けてくれ」


この説明段階で、多くの学生は頭を抱えていた。何とも抽象的で感覚的な説明すぎて、メトルの説明についていけていないのだ。


しかし、イズモは違った。魔力操作に長けており、普段から自身の魔力を感じ取っているイズモは、身体の中に流れる魔力とは別に得体の知れない何かがある事に、すぐ気づいた。


「感覚的な話だから出来ない奴もいるだろうが、ひとまず説明を続ける。その感じたことの無い何かに気づいた者は、それを身体の外に放出してみてくれ」


言われるままにイズモはやってみる。すると、身体の外に淡い光が集まり、一枚の札を形成していった。


「……できた!」

「おぉ、流石イズモ君」


イズモの手のひらには、半透明ながらも白く淡く輝く一枚の札が表出していた。しかし、その札は昨日見た時とは少し異なっており―――


「あ、少し色づいてる……?」


イズモの出した命符には、僅かではあるが色がついていた。


「おぉ! 流石はイズモ君、まさか既に『姿見(すがたみ)』になってるとは!」

「えっ!? そ、そんなまさか……!?」

「イズモ君。昨日、命符を受け取ってから、普段と違う力を発揮できたり、新しいスキル、魔法、力を身につけたりはしてないかい? もしくは、不思議な体験をしたことは無いかい?」

「い、いや、特段変わってないですよ!? 前とは違う力を身につけてもないですし、不思議な体験も―――」


そう言いかけて、イズモは昨日の戦いに考えを巡らせた。コール侯爵の手下に追い詰められ、遊戯魔法で時間を稼いで突破口を考えた時。遊戯魔法の効果時間はせいぜい30秒だというのに、まるで思考だけが加速したかのように、時が流れるのを遅く感じたことをイズモは思い出す。


「昨日は夢中で気がつかなかったんですが、戦ってる時、時が流れるのがやけに遅かったことがありました……」

「間違いない。それがイズモ君の命符の力の一部だろうな」

「で、ですが、俺はその力を自在に使えませんよ?」

「色づき加減を見るに、『姿見(すがたみ)』になりたてだろうからな。まぁ、命符の表出にも成功しているし、『姿見(すがたみ)』にもなっているから、同期の中では1歩リードだ、おめでとう」


そう言うとメトルは、学生全員に向けて声を張る。


「このイズモくんのように、表出したら既に『姿見(すがたみ)』だった、というパターンもある。とはいえ、それは誤差のようなものだ、そこまで気にしなくていい」


メトルの言葉で安心したのか、講堂内の学生達はイズモに注目するのをやめ、自分の命符を表出させるのに集中しだした。すると、ちらほらではあるが命符を表出させるのに成功する学生が現れ出す。イズモはマシロ、ミラノ、ルーの3人を気にかけていたが、ルー以外の2人は命符の表出に成功していた。ルーは心底悔しそうに、変な顔をしながら力を込めていたが、全く成功しない。

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