2-1話 出立
※注意
継続するのが目的なので、話が途中で終わってます。
1話分にたまったら、2-1話~2-x話を統合して、2話として出したいと思います。
朝日が出たばかりの頃。イズモは寝室で目を覚まし、むくりと体を起こす。寝惚けた思考で目を擦り、ぼやけた視界を整える。
「……あぁ、そういえば一緒に寝たんだっけ」
イズモの横には小動物のように丸まって寝ているマシロが居た。少女は規則正しい寝息を小さく立てていた。
「起こさないよーにしないとね」
イズモは適当に服を見繕うと、忍び足でその場から離れる。洗面所で顔を洗い、魔法を駆使して寝癖を直すと、寝間着から着替える。リビングで机の上にあった鞄を肩から下げ、玄関へと向かう。玄関に行くと、少女用の服が複数と、靴が置いてあった。
「あぁ、ヤードムさん、服作り終わったのか。……流石元服飾屋、仕事も早いしクオリティも高いな」
置いてあった服をリビングの上へと運び、靴は玄関の端へとずらす。イズモは自分の靴を履き、ドアを開けて外へと出る。朝特有の爽やかな、しかし肌寒い風を浴びる。
「うぅ…… 上着ようかな……」
イズモは鞄に手を突っ込むと、その中から上着をとって体に纏う。そのまま、村の出入り門へ向かい、出入り門のすぐ側にある見張り台へ登る。
「あれ、モケさんがいない……? まだ帰ってないのかな」
イズモは見張り台から村の外へ飛び降りる。魔法で風のクッションを作り、着地の衝撃を和らげると、森の中へと入っていく。少し進むと、ひらけた所に、一部分だけ抉れている大樹がある場所に出た。
「今日は…… そうだなぁ、水魔法にしようかな」
イズモは大樹に向かって構えると、魔法を唱えて5m程の水球をつくる。
「……ふん!」
さらに力を込めると、今度は水球が徐々に圧縮され手のひら程の大きさへと縮む。イズモは、縮めた水球を大樹に向かって飛ばすと、水球は風切り音を立てながら大樹にぶち当たり、当たった瞬間に爆発する。その衝撃で大樹はゆらゆらと揺れ、木の葉が数十枚落ちる。
「【遊戯魔法】水鉄砲 改式」
その魔法を唱えると共に、イズモの手のひらに水球が現れ、拳銃に姿を変えていく。イズモはそれを手に取り、落ちてくる木の葉の一枚一枚を狙って引き金を引く。
拳銃から水でできた玉が勢いよく飛んでいき、木の葉に当たる。しかし、威力はまばらで、本物の銃の威力さながらのものもあれば、その名の通り水鉄砲程度の威力しかないものもある。
「30発近く打って、まともな威力だったのは3つってとこだな」
不意に、イズモの後ろから声がした。イズモは声の主の方へ振り向くと、上半身から下半身まで血で真っ赤に染まった老人が血で真っ赤な槍を片手に木の枝上に座っていた。その木の下には、竜の死骸が3つ転がっており、その体には不自然につけられた穴の痕があった。
「……何覗いてるんですかモケさん。ゴブリンにトマトでも投げつけられたんですか?」
「いやなに、昨日の夜、ゴブリンの群れを倒しに行っただろ?普段なら森の奥深くにいるもんだが、すぐに接敵したからこりゃあおかしいと思ってな。仕方なく森の奥地へ行ったら、ワイバーンがうじゃうじゃいたんでな、戦ってきた。面倒だから3匹しか持ってきてねぇけど」
「あぁ、それで帰ってくるの遅かったのか…… 【生活魔法】クリーン」
イズモが魔法を唱えると、光がモケを包み、血で真っ赤に汚れていた服を元通りにする。
「お、ありがとな。しっかしおめぇ、ほんと器用だな。【遊戯魔法】であれだけの威力出してるやつ、そうそういないぜ。まぁ、まだ実践じゃ使い物にならんだろうが」
「魔法に関してはマギアさんに習ってるからね。俺は強い魔法を覚えるの苦手だから、弱い魔法を応用してかなきゃ」
「なるほどねぇ…… 俺ァ槍一本だけで戦ってきたからな、魔法使えるだけでもすげぇと思うが」
「槍だけっていったって、モケさんの槍さばきはほぼ魔法みたいなもんでしょ」
イズモはモケが仕留めてきたワイバーンを見つつそう言った。ワイバーンの体には槍でつけられたと思われる穴があるが、その穴の大きさは少なく見積っても槍の直径より5倍は大きい。明らかに不自然ではあるが、モケの戦いを見た事があるイズモには、その理由が容易に推測される。端的に言うならば、刺された衝撃によって消し飛んでるのだ。その威力はワイバーンの体を貫通させることから察せるほどで、魔法ではないので魔力を必要せず、体力のある限り攻撃可能。さらに言うならば、これはこの老人の通常攻撃であり、奥義やスキルといった類のものでは無いため、魔法などというものより余程タチが悪い。
「そらぁ命符のおかげさね。……そういやお前、今日が命響式だったか」
老人は未だワイバーンの傷から目を離さないイズモにそう言った。それに反応してイズモは目線をワイバーンから老人へと移す。
「そうだよ。どんな命符もらえるのか、楽しみでもあるけど、ちょっと怖いかな」
「んーなんだ、強い命符が欲しいか?」
「いや、うーん…… まぁ、そりゃあ……ね?」
歯切れの悪い返答を受けて、モケは吹き出して笑う。
「はははっ! お前は妙に賢い時もあるが、やっぱりまだまだ子供だなぁ」
「なっ! つ、強い方がそりゃあ良いじゃんか! モケさんだってそう思うでしょ!?」
「ま、強え方が良いってのは賛成だが、大した努力もせずに強くなるのは嫌いだね」
めっちゃ変なとこで終わりましたね