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4-7話 命響式(後編)

遅くなってしまい申し訳ありません……

「神の御加護を。命の御加護を。秘めたる己の才能を。そして――― 己の運命を、夢を、可能性を切り拓く力を」


少女は凛とした態度で言葉を紡ぐ。


「さぁ、目覚めなさい。無数の力を秘めたる若人達よ」


▽▽▽


少女はそう言うと、手を組み(うた)を歌いはじめる。

すると、カタルーニャ大聖堂の天井。太陽を象ったステンドグラスに光が差し込まれ、色とりどりの光の雫が大聖堂内に輝き降る。


「わぁぁ……!」

「綺麗!」


大聖堂内のあちらこちらから感嘆の声が漏れ、ゆっくりと降り注ぐ光の雨に参加者達は目を奪われる。


「~♪」


キャロルの歌はハミングのようでいて、オーケストラの演奏のようにも感じられるキャロルの歌に呼応するように、光り輝く雫達はキャロルの周りへと集まり出す。


「~♪」


少女の美しく、神秘的で、畏怖さえも感じさせる(うた)がより一層の盛り上がりをみせる。それに共鳴し、キャロルの元に集まった光の雫達は少女を中心にして円を描き、様々な色で輝いていた光の雫たちの色が統一し、

半透明に白く輝く。


「――皆様に、大いなる幸せがもたらせられんことを!」


そして、それらはさらに輝き、大小様々な光の球となって360度全方向へと飛び散る。


「わぁっ!」

「光が…… こっちに来るよ!」


光の雫達は、命響式に参加している子供達一人一人の元へと飛んでいく。それはイズモ達も例外ではなく、白く淡く輝く光の球が、まずはルーの目の前にあらわれる。


「この光が命符となるんですわ。ルー、お取りになって」

「はい、おじょー……」


ルーが光の球に触ると、たちまちに光の球は半透明な一枚の札の形へと変貌する。その札はさらに強く輝くと、石を投げる男性のアイコンを一瞬だけ表示し、ルーの身体の中へと入る。


「俺の命符の格は、ダビデらしいです。聞いた事ないですが、偉人系だとは思います」


そうこうしているうちに、今度はミラノとイズモの前に光の球があらわれる。ミラノの光の球はルーのものより幾分か大きく、逆にイズモの光の球はルーのものより小さい代わりに透明度が小さい。2人は光の球に触れると、ミラノは跪いて祈りを捧げる女性の絵、イズモは大きなメガネを帽子に括り付け、コンパスを片手に歩いている男の子の絵が、それぞれ表示される。


(わたくし)は、信奉者ですわね」

「……おじょーは十中八九、猫に対しての信奉者でしょうね」

「うるさいですわ」


ルーの野次はほぼその通りであろうと自分でも感じているのか、ミラノも内容自体は否定しない。


「俺は、探求者だった」

「……あっ! だから魔法の応用が得意だったんじゃない? 魔法の活用法を探求してたってことで……」

「あぁ、そうかもなぁ……」


イズモは魔法の応用に関しては神がかっている。その理由は、魔法の活用法へほ飽くなき探求心の結果ともいえるだろう。そう考え、マシロは言ったのだ。


「イズモの魔法は、才能というより練習の積み重ねという部分が多いですものね。探求者というのも納得ですわ」

「……命符のおかげってことにでもしないと、俺は才能の差に耐えきれないぜ」

「まぁまぁ。あとは、マシロのだけ来てないのか」


イズモ、ミラノ、ルーの3人は命符を手に入れたので、残るはマシロだけである。しかし、マシロが異世界人であることが関係しているのか、周りの子供達が続々と命符を手にしているというのに、マシロの元には未だ光の球は訪れない。


「……やっぱり、私なんかじゃ、ダメなのかなぁ」


そう、マシロが弱音を呟いた時。それまでのどの光の球よりも一回りも二回りも大きい光の球がゆっくりと飛んでくる。そのあまりの大きさに、その場にいる全ての子供達、関係者達はその光の球に目線が移る。


「一説には、光の球の大きさは、その命符の価値・能力の高さに比例するとも言われる……」

「これは…… 一体誰の元へ向かうんだ……?」


全員がその光の球の行く末を見守り、緊張感からか先程までのざわめきは消え、全員が息を飲んでその瞬間を待ち構える。巨大な光の球は、その場にいる全ての者たちの注目を一身に浴びながら、ゆっくりと、ゆっくりと飛び上がる。


そして、その時は来た。

その光の球はカタルーニャ大聖堂最上階へと浮かび上がり、フードから白くも青みがかった髪をのぞかせる、小さな少女の前で停止する。


「……へ?」


至極当然に、その場の視線は光の球からその少女へと降り注ぐ。少女は周りの反応に怯えつつも、恐る恐る手を伸ばし、光の球へと触れる。光の球は煌めき、一枚の半透明の札を形作る。そこには、動物と自然に囲まれる女性の姿が描かれていた。


「イ、イズモどうしよう……? わ、私の命符の格、豊穣神…… だって……」


少女の戸惑いに溢れた小さな声は、静まり返るカタルーニャ大聖堂に、いやに響いた。


やっとみんなの命符を出せました

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