4-5話 命響式(後編)
命響式が長い!
「ちなみにイズモは、魔法凝縮覚えるのにどれくらいかかったんだ?」
「俺は10日くらいかなぁ」
「10日!? 大人でも使える者が少ないこの技術を、10日で覚えたのか!?」
「うん、師匠が教えるの上手かったからね」
勿論、マギアが教えるのは上手だったというのは正しい。とはいえ、そのマギアが教えても覚えられないものは多いのだ。つまり、ここまで魔力制御が上手く、魔法凝縮が得意になったのは、マギアの教えの部分以上に、イズモの資質が高かったからだといえる。
▽▽▽
「ま、根気よくやってこうよ! それよりほら、見えてきたよ!」
4人の眼前に広がる人の群れ。その先には、雲をつくようににそびえ立つオレア・コラン学園。そして、それを囲む城壁のように立ち並ぶ大聖堂の姿があった。
「あれが…… かの有名なカタルーニャ大聖堂ですわね」
「カタルーニャ大聖堂……?」
ミラノの発言に、例のごとく小首を傾げるマシロ。
「命響式の会場ですわよ。……マシロは知らずについ来たんですの?」
「あはは…… イズモに付いていけば何とかなるから」
「おじょーも中々だと思ってたが、マシロも意外と抜けてるんだなぁ……」
「ルー? あなたにだけは言われたくありませんわ」
ルーの言葉によって、ミラノから物々しい空気が流れ出す。一触即発のその状況をイズモとマシロの2人で宥めつつ、カタルーニャ大聖堂へと4人は向かう。大聖堂へと繋がる道は、命響式へ参加する子供達によって大渋滞しているもののゆっくりながらも動き、そして4人はカタルーニャ大聖堂の麓までたどり着く。
「うえぇ…… だっるーいだっるーい!! こんっっっな仕事早く終わらせたァァい!!」
そこには、子供のように悪態をつく成人女性。
「あの鬼畜先輩!! ぜんっぜん帰ってこないし! あんっの野郎、仕事押し付けたなぁ!?」
その女性は、絵本に出てくる魔女のように特徴的な真っ黒な三角帽子を被り、その帽子からは艶やかな紫苑色の髪がのぞかせている。イズモとマシロの2人は、その色んな意味で個性的な女性を見たことがあった。
「……何してるんですか、シオンさん」
「あのアホっ! ……って、その声は……イズモくん! それにマシロちゃんも!」
「ご、ご無沙汰してます……」
「そーんなよそよそしくしなくていいんだよマシロちゃん! ……あれ? そっちの2人は? もう友達出来たの?」
シオンはルーとミラノの2人に向けてそう尋ねると、シオンはスカートの裾を掴み、一礼をする。
「城塞都市国家ウルツァイト出身、ミラノ・C・サフィールですわ。何卒、お見知り置きを」
「同じく、ルー・コランダムです」
2人の自己紹介を聞くや否や、シオンは目を輝かせる。
「あっ、貴方がサフィール嬢!? ってことはルーくんはかの有名な英雄コランダム!? いやーっ! 私達の間でも話題になってたんですよーっ!」
「話題? わ、私達がですか?」
自分の名も名乗らず興奮するシオンの姿に、困惑するミラノとルー。
「そう! 学園内でも、あのサフィール家のお嬢様に、英雄コランダムが入学するって聞いて話題だったんですよっ!」
「あっ、学園……の、関係者の方、ですの?」
「シオンさん、シオンさん。まずは自分の名を名乗んないと、ただの変質者ですよ」
「あっ、そうか! これは失礼しましたっ!」
シオンはミラノに頭を下げ、謝罪の意を伝えると、咳払いをして仕切り直す。
「私はオレア・コラン学園、新任魔法教師のシオン・メディアです!」