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4-3話 命響式(後編)

話してる内容が同級生というより保護者のそれだが、男衆は男衆なりに仲を深める。その会話の内容が少し聞こえたのだろう、「受け入れられるか心配ってどういう意味ですの?」と怪訝な表情でミラノがルーを問い詰め、ルーは失敗したなぁとボヤいていた。


▽▽▽


「はっ! そ、そんな事より、イズモ。その、あの可愛らしい魔法はどうやったんですの!?」


ルーからイズモへと矛先が変わり、ミラノは興奮した様子でイズモへと詰め寄る。


「そ、その、ミラノちゃん。私、そんなに魔法詳しくないんだけど、イズモの魔法ってそんなに凄いの?」

「凄いですわ。魔法自体の独創性も高いですし、魔力制御も神がかってますわ」

「や、やっぱり凄いんだねイズモ!」


褒められるのがこそばゆいのか、イズモは右手で頭を掻く。


「いやいや、褒めすぎだよ」

「褒めすぎじゃありませんわ! だって、(わたくし)が見てきた中でも、ここまで魔力制御が上手い方はいらっしゃらなかったですわ」


ウルツァイト国、四大貴族の一角であるサフィール家の生まれであるミラノは、当然子供の頃から魔法を習い、多くの優秀なお抱え魔術師達を見てきているのである。そのミラノをして、魔力制御に関して右に出るものはいないと言わしめるイズモの魔法制御が、どれだけ卓出したものなのかは想像にかたくないだろう。


「それに加えて、最初にもいいましたが、魔法とは思えないほどあの魔法()は自然な動作をしていましたわ。どうやってるのか想像もつきません……!」


ミラノはそこで、更に目を見開き、イズモに頭を下げる


「お願いですわ! (わたくし)にあの魔法を教えてくださいまし!!」

「うぇぇ…… 教えるっていっても……」

「あんなに素晴らしい魔法ですもの、教えたくな「」気持ちは分かりますわ! ですが、そこをなんとか……!」

「いや、教えたくない訳じゃなく……」

「お願いですわぁぁぁ~!」


ミラノは泣きながら懇願すると、声が大きいために周りの目もちらほらと集まってしまう。少女が泣かされている、ともとれるその状況に注目が集まってしまうのは非常にバツが悪い。


「やっ、やめ、泣くのはやめてくれよ! ちょ、ルー!助けて!」

「はいはい、おじょー。イズモが困ってるから落ち着いて」


ルーは流石に扱い慣れているのか、落ち着いた様子でミラノをなだめる。


「ごめんねイズモ。おじょーは猫が大好きで、屋敷では猫に囲まれながら暮らしてたんだけど、流石に猫達を連れてくる事は許可されなくてね。丁度、猫ちゃんロスの時にイズモの魔法を見て……」

「興奮してこうなったって訳か」

「そういうこと。だからさ、もし嫌じゃなかったら教えてあげてくれない?」

「あぁ、嫌じゃないんだけど……」


イズモは教えることに拒否感はないものの、なんとも歯切れが悪い。というのも、イズモはなんとなくの感覚でこの魔法を扱っているが、この子猫を作る魔法自体は複雑で緻密なため、どういう風に教えたらいいのか分からないのだ。


「その、どうやって教えたらいいのかわからなくて……」

「それなら、まずはゆっくりやって見せてもらってもいいかな?」

「いいけど……」


イズモは魔法を唱えて風を集め風の玉を作ると、その風の玉は緑のエフェクトを放ちながらゆっくりと中央に向けて凝縮する。


「ちょっと待ってくださいなイズモ。貴方、魔法の凝縮出来るんですの?」

「うん。師匠にあたる人が、魔法凝縮大好きだったらしくて、魔法覚えた次の日には教えこまれたんだー」

「いやいやいやいや…… 大人でも使える方は少ないんですのよ……?」

「師匠のおかげだよ」


言わずもがな、イズモの師匠とはマギアのことを指す。マギアは魔法凝縮を教え込むために、コンロから洗面所まで、家のありとあらゆるものを魔法凝縮を教えるための訓練設備へと改造していた。その甲斐あって…… というか、甲斐がありすぎてか、イズモは魔法凝縮を身につけ、今や魔法凝縮だけでいえばマギアをも超える実力を手に入れていた。


「でも、魔法を覚えたりするのは苦手なんだよ。だから、他のところでカバーしてかないとって思ってるんだ」


そんな事を話しているうちに、風の玉は新たな風の収集と凝縮を繰り返しつつも、両手で持てる大きさまで成長していた。今度はそれを、魔力制御によって粘土のように捏ね、子猫の形を創っていく。


「……ルー、どうやったら風の玉を粘土のようにあつかえるんですの?」

「……あれだけ動かしても崩れない、人並外れた魔力制御の賜物じゃないですかね」


魔法について素人であるマシロを除いた2人は、イズモの手のひらの上で起こっている事象に呆気に取られる。


「ミ、ミラノちゃん、イズモが今してることって、凄いの?」

「凄いですわよ。普通なら崩れて、魔法が壊れますもの」

「そ、そうなんだ…… イズモが普通にやってるから、皆できるんだと思ってた……」

「できる人も勿論いますわ。ですが、少なくともあの芸当が出来るのは、並の魔術師じゃできませんわ」


そんな嘆きのような呟きを顧みず、イズモは仕上げへとかかる。子猫の形へと変貌させた風の玉の中心を一部切り離し凝縮させる。極限まで凝縮させビー玉程の小さい玉を創り、その部分に魔法を重ねがける。緑の光が子猫を一瞬包むと、そこには意志を持ったか(・・・・・・・)のように動く風の子猫が存在していた。


「はい、出来たよ?」


風の子猫はイズモの腕を渡り、肩に腰掛け毛繕いをする。その様子に、マシロはメロメロになり、風の子猫の頭を撫でる。そんな可愛らしく、猫好き(ミラノ)にはたまらない光景を前にしているというのに、ミラノとルーの2人は愕然としていた。


「おじょー、最後のあれ、何ですか……?」

(わたくし)にも、見当がつかないですわ…… イズモ、何をしたか教えてくださる……?」


呆然とする2人に、イズモは口を開く。


「核を作ってたんだよ。核を作ると、まるで生きてるみたいに動き出すんだ。けど、なんであの手順で核が出来るのかはよく分かってない」


イズモの説明を聞いても理解が追いつかない2人。


「核……? 魔法で、意志を創ったのか……?」

「これ、命符並ですわ…… こんなの、(わたくし)、身につけられるのかしら……」


諦めの境地にいる2人。だが、2人はすぐに気を持ち直すと、イズモに色々と聞きながら練習を始めた。丁度いい機会だったので、イズモは目的地に着くまでの間、マシロに魔法のいろはを教えつつ、2人の練習に熱心に付き合った―――

主人公の強みが段々出てきましたね。

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