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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ある島の住人の独り言

作者: どんC
掲載日:2020/06/19

 

 ─ この島は何処かおかしい ─  


 何気なく見た島の掲示板に殴り書きされていた言葉が目に飛び込んできた。

 この島の小さな案内所の前に掲示板がある。

 その言葉は掲示板のすみに書かれていた。



 私は恋人を病で亡くし、新しく生きなおすためにこの島に来た。

 この島の美しい海の青さや山の緑が私を慰めてくれる。

 私と彼は釣り仲間で、この島にも何度か彼と来たことがある。

 島の住民も気さくで好い人ばかりだ。

 私は島の一軒家を借りて、果物農家を手伝ったり。

 漁を手伝ったりして慎ましく暮らしている。


 ─ また島民が消えた ─


 別の日また震えるような文字でそう書かれていた。

 これは一体誰が書いたんだろう?

 島民が消えた?

 また?

 名前はかすれて読めなかった。



 数日たってまたあの掲示板に不可思議な事が書きこまれていた。


 ─ ある無人島で居なくなった島民に出会った。彼は私の事を忘れていた。彼は記憶を失っているようだった ─


 彼とは誰だろう?

 この掲示板を書いたのは誰だろう?

 記憶喪失?

 どこの無人島?

 この島で暮らしたことを忘れる?

 また文字がかすれて名前が読めない。

 彼は単に高齢でボケ始めたと言うことだろうか?

 この島も高齢者が多い。

 それとも……

 これを書いた人の勘違いか?

 よく似た人を知り合いと勘違いしただけなんだろうか?

 ぼんやりと掲示板を眺めていると誰かがぼそりと呟いた。


 ____ ちっ。勘づきやがった _____


 えっ?


 振り返ったが誰もいない。


 ぞくり


 言い知れぬ不安が広がる。

 私は足早に家に帰る。


『マリアンナ。マリアンナ』


 下の家のおばさんに呼び止められた。


『これ食べなせい』


 おばさんは私にバナナンの葉で包んだお肉をくれた。


『うちの旦那が山で取ってきただ。イノシンシの肉だ。せいが付くよ』


『ありがとうございます』


 私はお肉を受け取る。

 るんるん♪ 気分で肉を抱きしめる。

 今夜はシチューね。


 ん~~~おいひい~~~♪

 熱々のシチュー❤

 ああ~~~幸せ❤

 生きててよかった。

 私は三人前のシチューを完食した。

 皿やスプーンを洗い、私はベッドに入った。


 机の上の彼の写真におやすみなさいと言って。

 眠りについた。

 眠りに落ちる寸前。

 彼の姿が目に映る。

 彼は良く笑う人だったのに。

 泣き出しそうな顔をしていた。

 そんな彼の顔を見ていると私も切なくなって涙がこぼれた。



 ~~~~*~~~~*~~~~*


 皇帝歴○○○○年○○月○日


 突然この世界の全てのダンジョンがゾンビを吐き出した。

 瞬く間に人類の半分がゾンビになり。

 このままでは人類は滅びると思われた時。

 特効薬が発見された。


 マリアンナ草。

 その花は発見者の名からそう名づけれれた。


 とある島に生えているその花から薬が作られ。

 ゾンビになった者の半分は正気に返った。

 だが、ゾンビになった時間が長い者達は人間にかえる事はなかった。

 ゾンビになった事で脳にダメージを受け、言語障害や記憶喪失や幻覚症状が出て。

 元の人間に戻る事が出来なかったのだ。

 人間に戻ることが出来なかった者達はほとんど処理されたが。

 帝国のとある島にゾンビ島と呼ばれる島が作られた。

 そこで人間に戻れなかったゾンビ達の脳に魔法陣を刻むという実験が行われた。


 魔法陣を脳に刻まれたゾンビ達は研究者の姿を認識する事が出来なくなる。

 研究者はゾンビに襲われることなくゾンビ達を観察できた。

 魔法陣を刻まれたゾンビ達は生前の様な普通の生活を送っている。

 ただ時々人肉を与えられているが。

 研究者達は日夜研究を進めて彼らが人間に戻る日を切望していた。

 何故ならばそのゾンビ達は研究者の身内の者がほとんどだったから。


 そのゾンビは生前彼の恋人だった。

 名をマリアンナ・ペダーソスと言った。

 マリアンナ草の発見者だ。

 二人は幼馴染でライバルで婚約者だった。

 彼と彼女の父親が帝都学園のクラスメイトで薬師だった。

 彼には魔法の才があり、魔法学園に進み魔導師となった。

 彼女は父親の後を継いで薬師の道に入った、そして二人の趣味は釣りだった。

 彼は友人の学園の釣り部に誘われ、釣りにはまり。

 マリアンナは事故で亡くなった父親に良く釣りにつれて行ってもらっていた。

 その事がきっかけで彼女も釣りにはまる様になった。

 それと彼女は子供の頃に見た黒い花を探していた。

 釣りに来た時、父親と逸れた時に見たのだ。

 図鑑にもその花は載って居なくて。

 ずっとずっと探していた。

 あまりにも見つからなくて夢の中だけの花かと、思い始めた時。

 その花を見つけた。

 それは神の配慮だったのか?

 或いは悪魔の悪意か?


 その花を見つけた時、世界にゾンビが現れた。

 彼女と俺はその花から解毒剤を作った。

 薬が完成する前にマリアンナはゾンビに噛まれ。

 彼女はゾンビになった。

 彼はすぐにマリアンナを氷漬けにした。

 薬が完成するまでマリアンナは研究所の地下で氷漬けのまま眠っていた。


 八割がたできていた、薬は薬師や魔導師達の手で完成した。

 マリアンナ達が作った薬は人々を救った。

 しかし皮肉なことに彼女は氷漬けによる脳のダメージで元に戻る事は無かった。


 彼女は夜中に起き上がり村の掲示板に向かう。

 マリアンナは気が付いた事や閃いたことを、壁や黒板に書きなぐる癖があった。

 俺しか知らない、彼女の癖だ。

 そう掲示板に色々書きこんでいるのはマリアンナだ。

 この島のゾンビは魔法陣を脳に刻み込まれているためか、寿命が短い。

 その為次の実験体ゾンビが補充される。


 ___ 島民がまた消えた ___


 そのことに気づいたのだろう。


 ___ ある無人島で居なくなった島民に出会った。彼は私の事を忘れていた。彼は記憶喪失だった ___


 研究途中でゾンビになった者達で記憶が消えている者が居たり幻覚を見たりしている者が居た。

 ゾンビになって長い時間がたった者ほど記憶がない者が多かった。

 記憶を持つ者は人に戻った時自殺する者が多かったので、我々(魔導師達)は人々の記憶を消し。

 高熱の為に記憶を失くしたと偽った。

 人の肉を食べた記憶は人間に戻った時、彼らを苦しめる。

 真実では誰も救えないと我々は知っていたから……








 マリアンナは悲しげに青い空を見つめる。

 そして……調子はずれの鼻歌を歌う。

 マリアンナは歌が下手だ。

 料理や縫物は得意なのに。

 俺はいつものように彼女の隣に座り彼女の鼻歌を聞く。

 こんなに肉体は近くにいるのに。

 心はこんなに遠い。

 マリアンナは俺が死んだと思って泣き。

 俺はマリアンナを見つめて泣いた。

 俺達の側で黒い花が咲いている。


 マリアンナと名付けられた黒い彼岸花が俺達を憐れむように揺れる。









                ~ 完 ~




 ***************************

 2020/6/19 『小説家になろう』 どんC

 ***************************

この作品のジャンルをホラーにするか、ファンタジーにするか。悩みました。

でも恋愛要素が強いのでこっちにしました。

最初の設定では現代日本で瀬戸内海にある島の話にする予定でしたが。

ゾンビが現れた理由を突然現れたとするよりもダンジョンのスタンピードにする方がもっともらしいと考えました。このネタは強欲タヌキのせいで借金地獄になるゲームからヒントを得ました。それと筋肉ラブの羊が良く座り込んで空を見上げている瞳が何故か切なげに見えた事から(八の字眉のせいでしょうか?)この話を書きました。それとゲームの中で歌われている○○アイドルの歌が切なげでヒロインが歌っている鼻歌はこの曲です。

時代的にはビクトリア朝ぐらいで汽車も電話も新聞もある感じですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 島、掲示板の時点で某ゲームを思い浮かべた、島移住者です。 クトゥルフホラー的な香りがして、すごい好きです! 作者さんのホラー作品、どれも私好みでニヤニヤしてしまいます。
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