見えない鎖
※※胸くそです、ご注意ください。
トレーネに言っていた、アイトの聞いてほしい事について。
僕、アイト・ゼーンズフトは戦闘用奴隷として産まれた。産んだ女は何処かの国で戦争に使われて死んだらしい。
強い奴隷と強い奴隷を掛け合わせて作られた僕は、奴隷商人達から才能があると言われて育った。
いくら才能があっても、ただの“商品”の僕は数字で呼ばれていた。
僕と同じように作られた子供は何人も居た。
使い道が無い子供の末路は悲惨だった。
あの頃はただ、明日も生きる為に必死だった。
“使い道がある(高く売れる)”と判断された僕に、奴隷商人達は様々な知識を教えてくれた。
大国や毎年戦争している小国等、僕が買われるだろう6ヵ国語の読み書き。人の殺し方、治し方。貴族に粗相をしては困るからと常識とマナーも叩き込まれた。あと……閨についても男女に対応出来るようにと、両方。
いつしか世界がモノクロに染まった。
いつしか明日を望まなくなった。
ただただ、奴隷商人達が望むままに動く人形になっていた。
『お前、何してる?』
『…………』
『すんませんね皇太子殿下、奴隷がお邪魔をしまして』
『いや、気にするな』
『ほら、早く来い!!手を焼かせるな!!』
『ッ、痛っ……』
『私が買おう』
『こ、皇太子殿下?』
『その者、私が貰う。おい』
『はっ』
『代金は十分に払ってやれ』
『承知しました』
『ぁ…………あの…』
『おいで。そなたの名は?』
『……名は…………ありません。如何様にもお呼びください。誠心誠意お仕え『あぁ、そんなのはいい』
『は……?』
『そのままのお前がいい。私はグランツ・クルーガー・オルドヌングだ、私の事は好きに呼べ、“アイト”』
『ぁ………………あ、私は……』
『お前がいい、否定は許さない』
『皇太子…殿下…………僕は……貴方を護り、支える為なら命をも惜しみません。貴方が望むなら国の全てを手に入れてみせましょう、世界中の知識と力を集めましょう。いつか僕を邪魔だと思われたなら、その時は貴方の手で始末してください』
『ははっ。いいだろう』
身体が
心が汚れる度に視界から色が消え
いつしか灰色に染まってしまった
しかし彼の差し出す手に触れた瞬間
世界は色とりどりに輝き
今まで身体を縛り付けていた
見えない鎖が漸く外れた気がした
『殿下……皇太子殿下、何故僕を…』
『ん?お前さえ居れば何だろうと面白そうだ。着飾った女も堂々たる体躯の男も城に大勢居るが、アイトのような者は見た事が無い。そんな理由では不満か?』
『いえ、いいえ皇太子殿下。十分です』
『そうか?さぁ、帰るぞアイト』
『…………』
『アイト?』
『はい!!』
“アイト”はグランツ様が、“ゼーンズフト”は先代がくれた。
グランツ様を護り、グランツ様の為に死のうと、あの日決めた。