ユウチャン、小説を批評してもらう
ユウチャンは困っていた。投稿している小説がちっとも評価されないからである。
「このままでは一生帰れぬ、アニメが見れぬ。どうしてみんな拙者の小説をブックマークをしてくれないのだろう?PVはそこそこあるはずなのに?わがままを言わないから10人が読んだら1人くらいブックマークしてほしいでござる、いややっぱり全員にブックマークしてほしい。というか読んでなくてもブックマークしてほしいでござる」
ユウチャンはわがままの限りを吐き散らしながら、酷く苦しんでいた。
「ユウチャン、また小説について悩んでんの?もう諦めたら?たぶん魔王やつけるとこまでいっても対してみんな評価してくれないわよ」
「なんと恐ろしいことを言う娘だろうか…それだけは言っちゃいけないでござる。それでは拙者はなんの為に…」
「あっ、ごめんごめん!」
カノンはあっけらかんとしていた。
「物書きの苦しみは物書きにしかわからぬ、絵本作家のソナタ殿の所へ連れていってほしいでござる」
「え、あの陰険魔術師のソナタの所?あそこ本当に臭くて無理なんだけど。ソナタのこともちょっとニガテだし……」
「連れていってほしいでござる!連れていってほしいでござる!」
ユウチャンはその場に寝転がり、ジタバタと手足を動かした。
「わかったわよもう!じゃあ杖に乗って」
「かたじけない、ありがとうでござる!」
二人はソナタの住む魔術師の館に飛んでいった。
トントン
「……誰?」
館の扉が少しだけ開き、ソナタが隙間から顔を出した。
「ソナタ殿!物書き仲間として遊びに参ったぞ」
「……入って」
ユウチャンの顔を見て、ソナタが扉を開けた。カノンは嫌そうな顔をしながらユウチャンと共に館に入った。相変わらずソナタの家は魔術でつかう鍋から生ごみのようなにおいが漂っていた。ソナタは本棚から一冊の絵本を取り出してユウチャンに手渡した。
「……また新しく書いたの。読んで」
ユウチャンとカノンは並んで絵本を読んだ。
(ある所にアリとキリギリスがいました。アリは働き者でキリギリスは遊び人でした。キリギリスはあまりにも働かないのでアリに食べられました。めでたしめでたし)
『これはクソを拭くちり紙ではないわ、クソそのものよ。クソオブクソ! そしてこのクソを製造する女はう○こ製造機と呼んで差し支えないわ』
カノンは読んだ感想を心の中で叫んだ。
「……どう?自信作なのだけど」
「アリとキリギリスの悲しくも優しい友情をここまでシニカルに表現するとは、やはりソナタ殿は天才でござるよ、オイオイオイ」
ユウチャンの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
『えー、このクソを読んでどこに泣く要素が?変わり者同士、なにかシンパシーがあるのかしら』
カノンは心の中で叫びまくっていた。
「本当いい絵本よね。今回も最高以外の言葉では表せないわ」
「……そう、よかった。ゆっくりしていって」
ソナタはにこりと幸せそうな顔をした。
「ところでソナタ殿、実は拙者相談があって待ったのである」
「……何?」
「拙者の書いている小説が一向に評価されず、困り果てているのでござる」
「……そう、読ませて」
ユウチャンはスマホを取り出し、自分の書いた小説をソナタに読ませた。ソナタは大きな魔術師の帽子が揺れるくらい頭を動かして一生懸命小説を読んだ。
「どうでござるか?」
「……設定が無茶苦茶すぎる。文章力もないし、読者層の設定が謎。登場人物に魅力もないし、クソみたいな小説だと思う。書いてる奴は本当にクソ」
「グッヒー!!」
ユウチャンは深く傷ついた。
「ありがとう、正直に言ってもらって助かったでござるよ」
「……そう、よかった」
ユウチャンはぐったりしていた、カノンはユウチャンの背中を優しくさすってあげた。
「帰ろうユウチャン」
「うむ、ソナタ殿失礼する」
「……また来て」
カノンの杖で移動中、ユウチャンはほんのりソナタと距離を置こうかなぁと悩むのであった。