ユウチャン、魔術師ソナタと出会う
「ここがジンボー村でござるか。なんかカビ臭いでござるよ」
二人は『魔術師のソナタ』が住むと言われるジンボー村へとたどり着いた。
「本の村だからね、じゃあソナタを探しましょ」
二人はソナタが住むと言われるジンボー村の北の外れに向かった。北の外れには魔術師の帽子の形をした屋根のあるなんとも特徴的な館を見つけた。
「ここがソナタの家っぽいわね、ユウチャン行くわよ」
カノンは魔術師の館をノックした。
ギィィ……
少しだけ扉があき、目深に魔術師の帽子の被った目の下に大きなクマのある少女が顔を出した。
「……なに?」
「私たち魔王討伐のために旅をしているんだけど、あなたに予知してほしいことがあってきたの」
「……今、絵本書いてるから」
バタン
「え?閉められた!?なにあの女!」
カノンは突然のことに驚きと怒りの感情が同時に沸いた。
「まぁまぁ、拙者に任せるでござるよ」
トントン
ユウチャンは扉を叩いた。
「……何?」
ソナタが扉を少しだけ開け、隙間からまた顔をにゅっと出してきた。
「拙者、小説を書いているものでござる。作家仲間としてソナタ殿の絵本を拝見したく参った」
「……入れば」
ギィィと音を立てて扉が開いた。
「失礼致す」
ユウチャンが部屋に入った。カノンもこっそりと後ろからついていった。
ソナタの家には大量の本と魔術に使うのであろう様々な薬草や干からびた魔物の肉や羽などが棚にぎっしりと置かれていた。ソナタは棚から一冊の絵本を取り出し、ユウチャンに渡した。
「……読めば」
ユウチャンは絵本を開いた。カノンもユウチャンの後ろから絵本を読んだ。
(昔ある所に三匹の子豚がおりました。三匹はオオカミに食べられてしまいしましたが、オオカミは食べ過ぎで腹痛になりました。めでたしめでたし)
『えー、なにこれクソつまんないんだけど!野良犬の交尾でも見てたほうがまだマシ。犬のクソにも劣る作品、今すぐちり紙として便所で使ってやりたいくらい駄作極まりないわ』
カノンが心の中の感情を必死に吐き出さないよう堪えているとユウチャンは涙を流していた。
「なんと悲しい作品、三匹の豚達の悲しくも逞しい生き方をここまで表現するとは。ソナタ殿は天才絵本作家でござる」
「……そう?本当にそう思う?」
ソナタは顔の表情こそ大きく変化しなかったが、心から喜んだ。自分の書いた絵本を褒めてもらったのは初めてだったからだ。
「うんうん!いい絵本だったわ〜、書籍化が楽しみ!」
「……そう、あなた達が波長の合う人でよかった。今日はなんの用?」
ソナタはユウチャンを大変気に入ったようだった。
「実はあなたに武器の情報を教えて欲しくてここまで来たのよ」
カノンが
「……そう、少し待ってて」
そういうとソナタは巨大な鍋をグツグツ煮始めた。
「なんかすごい匂いがするんだけど」
「……待って、もうすぐ答えが出る」
「本当臭くて無理、下水を煮詰めたみたいな臭いがする。窓開けていいかしら?」
「……東の谷に大きな龍の姿が見える、その龍の牙からすごい武器が作れそう」
「なんと!ソナタ殿ありがとう、早速向かうでござる」
「……また来て絵本読んでね、新作書いとくから」
「楽しみにしているでござるよ、カノン殿参ろう!」
そういうと二人は魔術師の館を出ていった。
「ユウチャン、今度来る時は一人で来てね」
「え?何故にござるか?」
二人は東の谷へドラゴン討伐に向かった。
「……ドラゴンの牙、最上級の剣じゃないと切れないけど。まぁいいか」
ソナタはポツリとつぶやいて、執筆活動に戻った。