ユウチャン、最強の鎧を手に入れる
「ふぁぁ、よく寝た。ユウチャン起きてる?」
カノンが隣のベットで寝ているユウチャンを起こそうと近づくと、ユウチャンは布団に入りながらスマホをいじっていた。
「一晩中いじっていてもスマホの充電が全く減らない、ありがたいでござる」
「一晩中!?あなた一晩中起きてたの?」
「そうでござる、拙者あまり寝なくても大丈夫でござる」
ユウチャンは深夜アニメやネトゲに熱中しすぎていたため、段々と睡眠時間が極端に短くなっていった。ネトゲのイベント時などは三日ほど寝ずにプレイしても問題なかった。
「クッソー、自分が見れていないアニメの実況をみるのは大変腹立たしかったでござる」
「嫌なら見なければいいじゃない……スマホもいいけど鎧を取りに行きましょうよ!」
「おお!すっかり忘れていた!取りに行きましょうぞ」
ユウチャンとカノンは昨日の鍛冶屋に向かった。
「頼もう!鎧を取りに来たでござる」
鍛冶屋の男は眠そうな顔をして窯から現れた。
「おお、やっと今できた所だ」
鍛冶屋の男はふらふらした足取りでユウチャンに鎧を渡した。銀色の軽くて丈夫な鎧は昨日体型を測ったユウチャンにぴったりだった。
「ミラクルフィットでござる!肩もこんなに動きやすい」
ユウチャンは肩を回そうとしたが、四十肩なので水平以上に腕があがらなかった。
「まぁ肩は置いといて、とにかくありがたいでござる」
「こっちこそあまったオリハルコン貰っちゃっていいのかい?あまった塊だけで一年くらいは遊んで暮らせるぞ」
「この鎧があれば他にオリハルコンの使い道ないし、いらないでござる」
貰った鎧を着て、飛び跳ねているユウチャンにカノンが突っ込んだ。
「ちょっと待って!武器はどうするの?もらった細い棍棒なんかで魔王倒せると思う?オリハルコンで武器も作ってもらいましょうよ」
「こんなに硬ぇオリハルコンを叩いて鋭い剣にする技術は俺にはねぇなぁ」
鍛冶屋の男が首を横に振った。
「金属の剣とか重そうで拙者の肩に悪そうでござる。もらったこの棍棒でいいでござる」
「そういうわけには行かないわ!ねぇ鍛冶屋さん、いい武器の情報があったら教えてほしいの」
カノンは必死に鍛冶屋に頼み込んだ。
「魔王を倒せそうな武器か、ちょっとやそっとの武器じゃ無理だろうなぁ。う~ん、『魔術師のソナタ』ならなにかわかるんじゃねぇかな」
「『魔術師のソナタ』?」
カノンも初めて聞く人物の名前だった。
「ああ、なんでも【予知】の能力で困っている人間を助けてくれるんだと、ただしすげぇ変わり者で気に入ったやつにしか協力しないらしいぜ」
「変わり者でも結構よ、この男ほど変わり者はいないわ」
ユウチャンはカノンに褒められたと思い、ドヤ顔をした。鍛冶屋は一瞬呆れ顔をして魔術師のソナタの情報を教えてくれた。
「ここから北に3時間ほど歩いた、ジンボー村の北の外れに住んでるらしい」
カノンは笑顔になった。
「ジンボー村なら行ったことがある、飛んですぐ行けるわ!」
カノンの【飛行】の能力は行ったことのある場所であれば杖の魔法石が場所を記憶しているので、一瞬で飛んでいけるのだった。
「すぐ向かうでござる!」
そういうと二人は杖に乗った。
「あっ!おい!あまったオリハルコン本当にいらないのか、売っちまうぞ?」
鍛冶屋の叫びも虚しく、二人はもう飛んでいってしまった。