ユウチャン、ダメ元で魔物に説得してみる
「旅の人、気持ちだけでワシらは充分じゃ。どうか少しでも遠くに逃げておくれ」
村長はほほえんだ顔で諭すようにユウチャンに話しかけた。
「浸かり心地はおいといて、この村の温泉の効能は見事でござる、肩が治りもうした。今の拙者なら全打席ホームランでござるよ」
村長はユウチャンがなにを言ってるのかよくわからなかったが、この男の溢れんばかりの自信に賭けようと思ってしまった。
「旅の人、外には二百を超える魔物たちがおる。本当に戦う気かい?」
「分からん、取り敢えず説得してみるでござる」
そういうとユウチャンは走って出ていってしまった。
「説得……なんと愚かな……」
村長は目まいで倒れそうになった。
「ここがゲロ村か、中の人間は皆殺しにしていいと指示が出てる。獣王団と手柄の取り合いだなぁ」
上空のガーゴイルはニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら隣のガーゴイルに話しかけた。
「まて、なにか村から出てくるぞ」
話しかけられたガーゴイルは村の入口を指差した。
「なんだあいつ、タオルを腰に巻いてやがる。大方俺たちの存在に気づき必死になって逃げようとしてるんだろ。おい!人間!逃げる方角を間違えたな!」
ユウチャンは話しかけてきたガーゴイルにこう返した。
「おおい、魔物のみんな。今日は見逃してやるからうちに帰るでござる」
ガーゴイルは一瞬固まったあと、大笑いした。
「カーッカッカッカッ!これだけの人数によくそんな減らず口がたたけるもんだ。普段ならお前みたいな馬鹿はじわじわと苦痛に歪む顔を楽しみながらなぶり殺すんだが、あいにく今日は時間がない。おい!ミノタウロス共!その馬鹿の手柄はくれてやる!」
ミノタウロスが一度に三匹、ユウチャンに斧を振り落とそうと猛突進していった。
バタ…バタ…バタン!!
突撃していったミノタウロスは倒れた。ユウチャンの拳がミノタウルス達の意識を一撃で絶った。
「なんだアイツは!」
そう叫んだガーゴイルにユウチャンは強靭な脚力で地面を蹴って飛び乗り、ガーゴイルの背中の羽を根元からナイフで切り裂いた。
「グアァァァ!!」
羽を切り落とされ、地面へと落下するガーゴイルを蹴落とし、ユウチャンは次のガーゴイルに飛び乗って同じように羽を切り裂いた。
「駄目だ!俺たちじゃ太刀打ちできねぇ!獣王ライオス様を呼べ」
一匹のミノタウロスが大声で叫んだ。