ユウチャン、混浴に浸かる
「風呂には絶対入りたくないでござる!」
ユウチャンは強く風呂に入ることを拒絶した、ユウチャンの風呂嫌いは相当なものだった。
「どうしてよ!温泉に浸かればきっと肩も良くなるわ」
カノンは必死だった。ユウチャンの四十肩を治すことが魔王討伐に繋がることを確信したからだ。
「風呂は嫌!風呂に入るくらいなら別に肩が治らなくても構わんでござる」
「このわからず屋!この者を眠りへと誘え(いざなえ)!」
カノンの杖がまばゆい光を放った。
「スピー……スピー……」
ユウチャンはカノンの魔法により眠ってしまった。カノンの魔法もユウチャンと旅をしてから段々と強力になっていた。
「ごめんユウチャン!取り敢えず、温泉地に連れて行くからね」
カノンはユ眠るユウチャンを上手に杖に乗せ、温泉地に飛び立った。ケイから貰った温泉チケットはゲロ村の物だった。
「なんか……卵の腐った匂いがする……」
ちょうどゲロ村に着いたとき、ゲロ村の温泉の匂いによってユウチャンは目覚めた。
「おはようユウチャン!温泉についたわ」
「くっそー、絶対来たくなかったのに。寝落ちしてしまった拙者の不覚であった」
ユウチャンは魔法で眠らされたことに気づいていなかったので、カノンは少し罪悪感を感じつつも黙っておくことにした。
二人は温泉宿に入り、浴室へと向かっていった。
「む!カノン殿どこまでついて来られるのかな?拙者服を脱ぎたいのだが」
「なに言ってるの?ここ混浴よ」
ユウチャンはすごく嫌そうな顔をした。
「ただでさえ風呂に入りたくないのに、おなごに肌を見せるなんて嫌でござる。やっぱり帰る」
「ちょっとちょっと!ここまで来てそれはないでしょ、入りましょうよ。じゃあ私脱ぐからそっち向いてて」
「嫌だなぁ、御意でござる……」
ユウチャンが他所を向いた瞬間、カノンはローブを脱ぎ、身体にタオルを巻いた。
「はい終わり、次はユウチャンが脱ぐ番よ」
そういうとカノンはそっぽを向いた。
「はぁ……風呂……嫌でござるなぁ」
ユウチャンも渋々脱いで、腰にタオルを巻いた。
「あっ、ユウチャンの身体…」
ユウチャンの身体は傷だらけだった。幼い頃より実家の道場で無理やり鍛えられた時にできた傷だった。
カノンは心から申し訳無い気持ちになった。ユウチャンは自分の傷だらけの肌を見られるのが嫌で風呂に入ろうとしなかったのだ、それを無理やり魔法で眠らせてまで温泉に連れてきた自分はなんて愚かだったのだろうと後悔した。
「あんまり見ちゃイヤンでござる。ぱっぱと入って、ぱっぱと出ましょうぞ」
ユウチャンは全く身体の傷を気にしていなかった。カノンは目が点になった。
チャンポン
「うへぇ、やっぱり湯船に浸かるのは気持ち悪い。馬のしょんべんをかけられているような気持ちでござる」
「もう変なこといって!気持ちいいじゃない、ちゃんと肩まで使って百まで数えたら出ていいわよ」
「うう、拷問でござる……」
ユウチャンはカノンに言われた通り肩まで使った。
このゲロ村に恐ろしい影が近づいていることを二人はまだ知らなかった。