ユウチャン、ついに能力が明らかになる
カノンはユウチャンと長いこと一緒にいても、ユウチャンが何者なのかよくわからなかった。
カノンはユウチャンが本当にすごい人間なのか若干疑い始めた。
「ねぇ、ユウチャン。私の友達に占い師がいるんだけど会ってみない?彼女はまだ開花していない人間でもどんな【能力】をもっているかわかる【能力診断】のチカラがあるの」
「おお!占い師!それはよい、どう小説を書けばブックマークが貰えるかヒントを教えて貰えそうでござる」
ユウチャンは自分の能力にあまり興味がなかった、小説の人気につながりそうもないと思っていたからだ。
「小説のことを教えてくれるかわからないけど、ユウチャンが何者かきっとわかるわ」
「ユウチャンはユウチャンでござる」
「まぁ、それはそうなんだけど。とにかく会いに行きましょう」
二人はカノンの杖に乗りシモキタ村に向かった。
「ここがシモキタ村、拙者とは違う意味で人生を間違えた方向に進めている若者が多いでござるな」
「ここは若者であふれる村よ、しかもちょっとアングラ系のね。ついてきて」
カノンに言われるがままにユウチャンは細い路地裏に入っていった。路地裏にはウェーブの入った紫色の髪の女が椅子に腰掛けていた。女の目の前にある机には大きな水晶が乗っていた。
「あら!カノンじゃない久しぶりね、男の趣味変わった?」
「ケイ、久しぶり。今日は用があってきたの」
「なに?またあなたのこと見てほしいの?どれどれ…」
ケイは水晶を撫で回した。水晶が澱んだように光った。
「あんた【浮遊】の能力伸びたわねぇ、これなら行ったことある所なら一瞬で行けるじゃない!魔力もだいぶ上昇したわ、上級魔法使い見習いってとこね」
「ケイ、私じゃないの。今日はユウチャンを見てほしい」
カノンはユウチャンの背中を押した。
「どうもユウチャンでござる」
「どうも、じゃああなたを見させてね。はじめての人は水晶に両手を置いて」
ユウチャンは言われるがまま、水晶に両手を乗せた。水晶の鈍い冷たさがユウチャンの両手に伝わった。
「この後どうすればいいでござる?」
「ちょっと集中させて…」
ケイは目を瞑り、静かに瞑想した。ユウチャンはボーッとしていた。
「信じられない…」
「どうしたのケイ!?」
ケイが震えている。顔は真っ青で全身に滝のような汗をかいていた。その尋常ではない怯え方にカノンは驚いた。
「この人、恐ろしいほどの力を持った伝説級の勇者よ。こんな力初めて……もはや神に片足を突っ込んでると言っても過言ではないわ」
「ユウチャンやったじゃない!」
カノンは飛び跳ねて喜んだが、ケイはユウチャンに怯えていた。
「待って!この人から底しれない闇を感じる」
カノンは驚いた。ユウチャン、実はすごい悪人だったのか、私は今まで騙されていたのかと悲しい目でユウチャンを見つめた。
「闇は心じゃない、肩にどす黒い何かを抱えている」
「ああ、四十肩でござるな」
「え!そんなものがどす黒くみえるの?」
「いやいやカノン殿、これはマジでキツイんでござるよ。これはなった人間にしか分かりますまい」
ケイはまた重たい口を開き始めた。
「肩のどす黒いものが取れたら。この人、世界を変えてしまう…魔王なんて目じゃないわ、この人は神話になる」
「あっ、じゃあ拙者無理でござる。拙者の四十肩は本当に頑固だから」
カノンはユウチャンを揺すった。
「ちょっと!ユウチャンなんとか肩治しなさいよ!」
「あぁぁぁ!!肩が外れる!無理でござる。拙者にはこの四十肩はどうしようもない」
ユウチャンが死ぬほど痛そうな顔をしたのでカノンは手を話した。
「ケイ、ユウチャンはどんな【能力】を持っているの?」
「ユウチャンの【能力】は…」
「なに?ユウチャンの【能力】はなに?」
カノンがケイに近づいた。
「彼の【能力】は……」
「引っ張るなぁ全く、早く教えてほしいでござる」
カノンはユウチャンを口を塞いだ。
「彼の【能力】は……【戦闘神】よ。どれほど強力な魔物でも彼の本気の前ではひとたまりもないわ、ただ発動を肩のどす黒いものが邪魔している」
「だから拙者の四十肩は治らんでござるよ」
「なんとか治しなさいよ!世界の平和がかかっているのよ」
カノンはユウチャンを激しく揺すった。
「あぁァァァ!!!痛い痛い!肩が悪化する!!!」
ユウチャンは青ざめた顔をして泡を吹き始めた。
「ご、ごめん。つい興奮しちゃって」
「カノン殿、ホント勘弁してほしいでござる」
カノンはユウチャンがどうすれば【戦闘神】として戦えるか考え始めた。
「ケイ、ユウチャンが【戦闘神】として戦えるようになるためになにか方法はない?」
「こんなものが役に立つかわからないけど……」
そういうとケイはカップル用の温泉チケットを取り出した。