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チャイムの音と共にざわつきを取り戻す講義室。
「はぁ」
「どうしたんだ? 陰気なため息なんかついて」
講義終わりに声をかけてきたのは、日下部 宇汐。
俺と同じ1年、同い年なんだけども、柔和の雰囲気も相まって年上に見える優男である。
「いやぁ、同居人と昨日、共有スペースの使い方でチョット、な」
「あぁ。お姉さんと住んでるんだよね?」
説明が面倒なので、近所のお姉さんを略して、姉と住んでいる。と説明している
「まぁ、そうなんだけど。洗濯物をどこに干すかどうかでさ」
「あー。そう言うことかぁ」
洗濯物という言葉だけで、察してくれたようで、苦笑をこぼしていた。
「異性でも姉弟ってだけで、無頓着になるよね」
「そうなのかー」
第三者の意見でさえそうならば、変えること難しいことが容易に想像がつき、再び、ため息をこぼす。
「なーに、男二人で浮かない顔してんのよ」
机にチェーンのついたバックを下ろしてきたのは、鮎川 貴子。切れ長の瞳にダメージジーンズを履きこなす彼女は、さながらトラのような雰囲気を持ったサバサバ系女子。下の名前が気に入らないようで「ウチのことは、あゆかって呼んで、ね?」と有無を言わせない圧を出会って早々にくらった。最初は猫っぽいなぁ、と思ったけど、数秒後には、虎に変更したのは言うまでもないだろう。
「おはよー、あゆか」
宇汐は入学前から顔見知りであったらしく、突然の登場にも慣れたもの。柔和の雰囲気が崩れることはない。
「はよ、あゆか」
「おはよう。 で、その顔の理由はどうしたの?」
挨拶も早々に切り込んでくる。
さすがに、このネタは同性としては嫌な気分になるのではないか?とあぐねていると
「お姉さんと、洗濯問題で揉め揉めしたんだってー」
そんな俺と正反対にスルッと答える宇汐。
「洗濯物? へぇーそんなの気にしてるの? 小鳥遊って意外と初心ね。
あ、それとも、規格外の美人とか!?」
何かを面白いことが思いついたかのように笑みを綻び出した。
「おいおい、なんか勘違いされそうだから、言っとくけど。そう言うのじゃないからな」
一応、釘を刺してみるが
「ふーん?」
ますます笑みが深くなる。あゆかにはあまり効果はないようだ。
「えぇ?そうなの??」
お前もか、宇汐。