表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非公開  作者:
41/42

41これから


「あー…疲れたぁ」

 テレビを見ていると、屍よろしく、よろよろとした足つきでダイニングに入ってきたユリ。

 普段よりは早い帰宅である。

 たぶん、定時で切り上げて、そのまま真っ直ぐ帰ってきたのだろう。

「おつかれ」

「ありがとー。・・・あ、ゴハン、買い忘れた。いや、もう、このまま寝るかなぁ」

 寝不足なのはユリも同じで、そして、昼寝ができる俺と違って、社会人に昼寝できるほどの休憩なんてないだろう。

 人間的な欲求の食欲より睡眠力が上回っているほど、判断能力も鈍っているようだ。

「なんか食わないと、夜中腹が減って、太る、太らないとか言い出すじゃねーの?」

「むー! 良ちゃんのいじわる。睡魔が瞼がぶら下がっていて重いのよぉ!」

 ジャケットを羽織ったまま、テーブルに転がるようにうつ伏せになって、ごねている。

「はぁ。見た目とかいいなら、スープ食う?」

「えっ?」

 ウサギの耳でもついているのかと見まごうほど、ピョンと起き上がって、キラキラとした純粋な瞳を向けられる。


 ほんと、これで年上とか、詐欺だよな。


「まぁ、あれだ。時間があったし、なんとなく作ったスープだからな」

 そう、ほんと。なんとなくなのだ。

 なんとなく立ち寄ったスーパー。なんとなく安くなっていた鶏肉に、キャペツに手が伸びた。

 鍋に突っ込んで煮込めばできそうだな。と、実際、できたし、まぁ不味くはないと思う。

 ただ、作りすぎたようで、余ってしまったから翌朝に回そうと考えていたところだったので、渡りに船というもの。


「期待すんなよ」

 押しすぎなくらいに念押しをして、コンロに火を入れスープを温める。

「わーい。良ちゃんの手料理、手料理っ」

 歌うようにゆらゆらと揺れるユリに思わず口元が緩んでしまう。


「ほら」

 数分のことだが、ユリは温めている間に自室に戻り、お下がりの襟ぐりが開いたTシャツにハーフパンツというラフな格好に着替えていた。

 俺はユリが座ったのを確認して、目の前に置いた。

 ユリは香りを楽しむようにスープに顔を近づけたあと、かかりそうになる髪を耳にかけて、軽く息を吹きかけて、声を漏らす。

「はふっ。んんー! 美味しい!!!」

 小さい口をもごもごと動かし、鶏肉を噛み締めては、震えて歓喜の声をあげる。

 そんなにも全身で表わされると、嬉しいを通り越して、照れる。

「具材も大きくて、食べ応えも良い感じぃ」

「ま、俺が作ったんだから、当然」

 熱が集まる頬を隠すように手の甲を当て、ユリから視線をそらした。

「ふふっ」

「んだよ」

「べっつにぃ? 良ちゃん、美味しい。ありがとぅ」

 噛みしめるように言葉を発するユリについ視線が動いてしまうが

「…どーいたしまして」

 ずっと見ていることができず、すぐにテレビを見ているように装う。

 画面にはバラエティー番組が流れているが、全く、頭に入ってこない。

 

 あぁ。ほんと、俺はユリに振り回されっぱなしだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ