29想い
「き、急にどうしたんだよ?」
あまりにも急な変化に言葉が詰まる。
「ふーん。良ちゃん、わかんないんだ?」
「わかんないから聞いてるんだろっ!?」
冷めた視線は変わらず、わざとらしく息を吐き出すユリに少しずつ苛立ちが積もっていく。自然と語気が強くなるが、それはユリも同じだった。
「だからっ!宇汐くんに”スタジオのバイトだけに絞って音響の勉強部時間を費やした方が効率よい”って言ったことよっ」
「はぁ? 俺はユリみたいに知識があるわけでもないんだ。
そんな疑問が生まれるのは当然だろ!?」
意味がわからない。
知らないことを聞いて何が悪いんだ。
「そうね。わからないなら仕方がない。
なら、宇汐くんに”イベントスタッフが音響に関係あるのか”で、止めとくべきだったわね」
言葉は荒くはない、しかし、平坦に坦々と続く言葉は俺の苛立ちを逆だてる。
「なんでだよっ! ”関係あるのか”と”効率よくないか”って、同じ、知らないからこその”普通の疑問”じゃねぇか!!」
テーブルに両手を叩きつけるように椅子から立ち上がり、目の前に座るユリを見下ろす。
「ーーーねぇ。夢に効率がいいとか悪いかとかって、他人が判断できることじゃない。
それは仕事も同じよ。自分にとっては効率が良くても、他人からしたら非効率だったり。
良ちゃんの言葉は正しいかもしれない。
だけど、抗えないものもあるの・・・良ちゃんは純粋で残酷なのよ」
静かに諭すような声だけど、今の俺には責められているようにしか聞こえなかった。
言葉は理解できる。
だけど、俺がその言葉を出した時の宇汐の困ったような…どこか寂しそうな顔が浮かんで、頭から離れない。
「…無駄なことはしない方がイイってのも分かるけど。良ちゃんの言い方はよくない」
宇汐の表情が語った理由に気づいていないわけじゃない。
間違ったことをした、かもしれないという罪悪感。
でも俺にとっては違う理由があったんだ。
「じゃあ、友達が違うかもしれないって道を歩いてるのに、知らないふりしろっていうのかっ!?」
「そうじゃないってば!」
「なんだよっ。ユリの言ってること…意味わかんねぇよ」
吐き捨てるように出た言葉。
「っ!」
ユリは息をのみ、苦しそうに眉を寄せる。
ーーー違う、本心だったたけど、そんなつもりじゃない。
心とは裏腹に、苛立ちは言葉を制御不能にしていた。
「どんだけ、たくさん言葉を並べられてもっ。ユリの話は結局、中身がないんだよ!
理解できない話ばかりされたって、俺にとっては中身がない”意味のない言葉”だっ」
全てを吐き出した刹那、何かが倒れる音がした。
「いてぇ!?」
ちりちりとした痺れが左頬に広がる。
その原因は分かっている。
しかし、今までのように受け流すことはできない。
俺には俺なりの理由があるから。
そう反論しようと口を開いたのに、その言葉が出ることはなかった。
「・・・ユリ?」
自分で叩いたクセに、なんで泣きそうなんだよ。




