表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非公開  作者:
22/42

22


「はぁ〜。ただいまぁぁぁぁ」

 その日の晩。ユリは普段より遅い24時近くに帰ってきた。

 今日は新人歓迎会があったらしく、2年目などの若手新人は、そういう飲み会の幹事をやるのが若手社会人の登竜門だとか、連日張り切っていた。

「おかえりー」

 ダイニングでテレビを見ていたので、気の抜けたような惰性な返しをした。


「良ちゃーん。うぅー大変だったよぉー。あぁ、私、頑張った。頑張ったよぉお」


 夜帰ると、音に敏感に注意しているユリだが今日は違っていて、どたどたと足音を立てながらダイニングに入ってくると、ふわりと煙草(タバコ)とお酒のアルコールの混ざった、なんとも言えない匂いが漂ってきた。


「うっ」

「良ちゃーん。よく頑張った私にぃ、おつかれぇって言ってぇ〜よぉ〜」


 玄関に背を向けるように座っていた俺に、首に手を回すように抱きつかれた。肌に触れる髪がくすぐったい。吐息を感じる。ユリの顔が頬に触れるほど近い。

 そんなドラマティックな体勢ではあるけれど、ユリのまとう空気は、微妙な、なんとも言えない匂いである。呼気からはアルコールの匂い。


「はいはい。お疲れ、お疲れ。ユリは頑張った、頑張った」

 通常なら突っかかるであろうおざなりな言葉に対して、パッと回していた腕を離して、俺と目線が合うように隣へと回りこむ。

「ほんとにぃ⁇」

「ほんと、ほんと、よしよし」

 そのことから重度の酔っ払いであると判断した俺は、お疲れのユリを労わるように、頭を数回撫でてやる。

「えへへ」

 それはそれは嬉しいそうに破顔するもんだから、匂いはいただけないが、酔っ払いも悪くはないな、と思った。


「良ちゃん、良ちゃん」


 子供のように、名前を連呼し続けるユリ。を、いつまでも観察しているわけにはいかない。

 相手は酔っ払いであるし、このまま、付き合っていたらいつ寝れるのか分からない。

 ということで、

「風呂に入って、サッサと寝るんだ」

 隣にいるユリをぐるりと半回転させて、風呂場に体の向きを変える。

「もっと、おしゃべりしようよぉ」

 酔っ払いらしく、俺の腕を掴んで強請ってくる。

「はいはい。そうだな。ならば、風呂に入ったら聞いてやるよ」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと」

 同じような会話を数回繰り返して、やっと理解したのか、渋々と風呂場に向かって、スーツを脱ぎはじめた。


 ・・・ん?


「むー。なんか臭いぃ〜」

 自分が着ていた水色のワイシャツの襟口をクンクンと嗅いで、顔をしかめるユリ。

 そのまま、ボタンを外して、シャツは床に落ち、お酒で火照った色づいた肌があらわれた。 

 キャミソール姿とはいえ、下着も、控えめな谷間だってバッチリ見える。

 そのまま指先はスカートのホックへと移動し、それもまた床へと落ちた。

 そして、ストッキングへ。

 よたよたとバランスがおぼつかない姿勢になるので、思わず手を伸ばしてしまった。


「ありがとぅ、良ちゃん〜」


 これ、フツーなのか?

 え、何、フツーってなんだ⁉︎


 そんな俺の葛藤など気付くはずもなく、なんとかストッキングを脱いだユリは、キャミソールへと手をかけはじめた。


 ので、


「ほら、風呂場に行けって」

 洗面所兼脱衣所の扉を開けて、強引にユリを押し込んだ。

「はいはぁーい」

 慌てる俺と反対に、気の抜けたような返事。


 扉を閉めた後に残ったのは、ダイニングに散らばったユリの(ぬけがら)と俺。


 ユリとの生活は、本当に予想がつかないことばかりだ。


異性に兄弟&姉妹がいる方は分かるかもしれない。あるあるです(°▽°)ほんとにあるところはある!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ