表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非公開  作者:
17/42

17


「うぅーん。どうしよう」

 あれから、劇場近くまで戻った俺たちは、真新しい商業施設に入った。

 ユリいわく、建ってから1、2年ほどで、ここにしかないブランドショップがあるのだとか。

 残念ながらあまり興味もないので、あまりピンと来るものがなく、ユリの行きたい店を雛鳥のように後をついて行くばかり、その中で、女子向けのファッションブランドの多さには驚いた。色んなジャンルがあるとはいえ、似たような服もありつつ、お値段は倍以上なんてのもあって、大変だと思った。

 男子は大概、ブランドもそうだが、それ以外も、ある程度限られているのだから、その幅広さに驚くばかりである。


「ねぇ。良ちゃん、どっちが可愛いと思う?」


 そして、先ほどから悩みに悩んでいるユリは、俺に意見を求めて来る。

 だがしかし、それは、10代男子に求めるのは間違っている。

 いや、ハードル高すぎやしないか?


「良ちゃん?」


 至極当然に聞いてくるユリの手元には、ランジェリー。そうつまり下着、ブラの柄を聞いてきてるのである。

 なんでも、創立祭だとか、なんとかで、ちょいお高めの下着屋がセールをしているらしく「絶対、1つは買いたい!」とか意気込んでユリが入店したのは30分ほど前。

 俺には関係ないと、スマホをいじりつつ店の外側で待っていたのだが、数秒前。

 2種類のブラを持って「どっちが可愛いと思う?」と聞いてきているのが今。


 ふつー聞くか?

 兄弟に聞くのか?

 いや、姉妹ならアリだから兄弟もありかも?

 え、異性の兄弟でもあり?

 この違和感感じるのって俺だけ?


 色々とツッコミ&質問したいことは山々だけど、ちょっとお高め故の、品の良いお姉様店員方々の生暖かい視線に、これ以上、耐えられない!


「こ…こっちが、いいんじゃね…?」

 と、震える指先で示せば

「ありがとうっ! はぁ〜悩んだ時は、身内の意見よね」

 満足気に頷いて、レジへと向かって行った。


 早く、この場から去りたい。


 通り過ぎる人々の視線もあり、刺さる痛さも倍増である。

 この心労に対して、なにかドリンクの一杯奢ってもらおう。と考えていると、ふと人影が近くで止まっているのを感じて、視線を上げる。


「あ、やっぱり、小鳥遊じゃん」

「ホントだ。よくわかったねー」

 そこにあゆかと宇汐がいた。

「どうしたんだ、二人とも?」

 大学以外でも会う仲なのか、と驚きつつ聞くと

「あ、近くの映画館でミュージルカル映画見てきたの」

「ここの映画館は音響がいいシアターがあるんだよー」

 そういえば、二人には共通点があることを思い出した。

「で、ついでに、次のライブの衣装探しにブラついてたら、妙に目立つ場所にいる男子がいるーと思ったら、なんか、見たことある気がするなぁーって」

 ニヤリと笑うあゆか。

「俺は、全然、気づかなかったんだけどねー。

 あゆかが”あれは小鳥遊よー”って、ついてきたら、ホントに良でびっくりした」

 善とも悪とも感じない笑顔に、どっちの味方か判断がつかない!


 あぁ、宇汐だけだったら、どうにかできただろう。

 しかし、現状、あゆかの狙いの定まった目からは逃れられない。


「ソウナンダ」


 乾いた言葉しか出ない。

 ここにいる理由。いや正当な理由ではあるけれど、じゃあ、ユリを紹介するのか?

 それもそれで、誤解を招く予感しかしない。

 どうにかユリが出てくる前に、どうにか、二人との会話を終わらせるしか。


「小鳥遊が下着屋さんかぁ。

 まぁ、プレゼントするような仲の良い女友達っていうか、彼女なんていないはずだから…

 噂の同居してる”規格外のお姉さん”かな〜??」


 一気に確信を詰めてきた。

 背中に嫌な汗が流れる。


「あぁ。ま、そのなんだ。

 俺の姉ちゃんは、その、人見知りするから、ちょっと移動しようぜ」

 それとなく、移動を促せば

「えぇ? 良の話を聞く感じでは、そんな風なキャラには思えなかったけど」


 宇汐。お前は、(あゆか)側なのか。


「そうよねぇ。何、照れてんの?

 それとも、見せたくないとかの独占欲的なやつとか〜?」

 あゆかの笑みはどんどん深くなる。

「いや、そういうんじゃなくてっ」

 俺のイメージダウンは必須ではあるが、せめて、最小限に納める方法はないものかと脳内をフル回転させる。そんな俺の悪あがきは虚しくも、あの甘い音色によって、終わりが告げられた。


「良ちゃん?」


 ショッピング袋片手に、首を傾げるユリ。「今日のファッションは綺麗めのワンピースです」と言っていたけれど、小花柄が全体に散るそれは、俺からすれば、大人の女性とは言い難いもので、可愛いワンピースと言えるし、下手したら中学生にだって見える。それに、声に童顔とくれば

「えっ!」

「んー?」

 引き気味の友人達の声が聞こえてくるのも当然なことだろう。


「えっと、良ちゃんのお友達かなぁ?」

「あ、え、はい。良くんのお友達です」

「そうですー」

 宇汐の動じなさはさすがであるが、あゆかは思いっきり、挙動不審であるし、人当たりの良さそうな笑顔を振りまきつつ、むしろ(さげす)む鋭利な視線をザクザクと刺してくる。


 って、ちょっと、待て!

 俺は変態なんかじゃないからなぁ〜〜!!!!

 ほんと、違う。誤解だっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ