80話
部活さぼりたぃぃ
「キングの討伐、お疲れ様でした!これが報酬です!」
『うおおおおおお!!!』
キングの討伐から帰って納品だのなんだのして一通り騒がれて、鑑定とかも終わり、報酬をもらった。
袋いっぱいの金が今俺に手渡される。他のみんなが無言で下がったので俺が貰う感じになった。
「ありがと…あの?ちゃんと掴んだんでもう手を離して大丈…この、おい離せ!この手を離せ!諦めて早く渡せ!」
なかなか金から手を離さないお姉さんの手をペシペシと叩き、大金を手に入れた。
とりあえずギルド内にある酒場の席について適当に食べ物を頼む。
「お疲れー!おいこの金どうする?」
「僕はいらない。いい防具ももらったんだし、これ以上はもらえない」
「オレもいいや。もう金には困ってないしな」
「私たちもそれでいいわ」
「お?ならこの金は俺の好きなようにしてもいいのか?」
『うん』
「え?マジ?アレだよ?俺、よくイケメンとかが『みんな平等に命をかけたんだ。だから山分けにしよう』とか言わないからな。全部俺の好きなように使うぞ?」
「いいわよそれで」
そうか。
袋の中をみると金色の硬貨がジャラジャラと音を立てている。ニヤニヤが止まらない。よし、これなら……。
「おいお前ら!そう同業者のお前らだ!今日は英雄の俺が奢ってやる!!!ありがたく思えよ!
好きなだけ飲みやがれえええ!!!」
ギルドの外にも聞こえるくらいの声で俺は叫んだ。
『う、ウオオオオオオオオオオオ!!!』
一瞬ポカンとしたような表情だったが、次の瞬間野太い雄叫びを上げた。
「もちろんお前らもだからな!好きなだけ飲み食いしろよ!」
そんな俺の言葉にメンバーは本当にポカーンとしたような顔をした。そして顔をシワクチャにして笑った。
『イヤッホオオオオウ!』
「こっちエール5つ…いや、樽で持ってこい!」
「コッチはオーク肉を一等丸ごとくれ!」
「今日は酒場の貯蓄を無くしてやるぞ!」
『オオオオオオオオオオオオオ!!!』
コイツらっ!
「おいお前ら!そんなもんでこの金が無くなると思ってんのか!誰か肉屋のオッさん連れてこい!ギルドにオークとかあるだろ!プロにオークとか焼いてもらおうぜ!」
『ヒュウウウウウウウ!!!ソラさん最高だぜええええええ!!!!!」
宴は夜遅くまで続いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「…………」
眩しい日差しが差し込む。堪らず瞼を開く。
「…知らない天井だ」
や、やった。言いたいセリフを言えた。
いや、そうじゃない。本当に知らない天井だ。というか何処だここ?俺はどうしてこんなとこにいるんだ?
「………あれ?」
昨日の記憶がない。正確には昨日の晩ごろの記憶がごっそり無くなっている。
はて?キングを討伐したあとどうしたんだっけ?確かお金を貰って…あれ?もらったっけ?…いやもらったもらった。
うん?金は何処に行ったんだ?アイテムボックスの中にもそれらしいのは見つからない。
「……あれえ?」
本当にどうしたんだろう?とりあえずこの部屋から出よう。幸い監禁とかされているわけじゃなかった。
「ん?」
どうして俺は上着を着てないんだ?まあいいや。アイテムボックスから適当な服を出して着た。
「お、おっとっと」
妙にフラフラする。なにか変な薬でも飲まされたのか…!?
と、思っていたらドアが開いた。
「お、おお!リリア!よかった。無事だったのか」
「無事?お前こそ無事なのか?」
「いや、何故かはわからないがフラフラする。それに昨日の記憶がない」
「き、記憶がない?本当か?本当にないのか?」
「ああ。正確には帰ってきてからの記憶があやふやだ。なにか知らないか?」
「……うん、お前は知らない方がいい。なにも悪いことはなかった。そう、なにもなかったから忘れたままていろ。わかったな?」
「お、おう…?」
何故か頰を赤く染めながら物凄い剣幕で迫ってきたリリアに頷いてしまった。
「そういえばライルたちは?」
「……呆れて…いや、自分たちでできることをやってくってさ」
「そうか。俺も帰らないとな」
休みは1日だけだ。というかたぶん、もう遅刻だ。太陽はもう高いところまで上がっている。
「そ、そっか…。また来週も来るのか?」
モジモジしながら、何処か不安そうに尋ねるリリアに俺はこう答えた。
「たぶん」




