70話
それから俺たちの口論、というか俺が言い訳、こほん論破してるだけなのだが、しばらく続いた。
途中から取り巻きの女の子たちも参加してきた。だが賢さのステータスが同レベルなのだろう。同程度のことしか言って来なかった。まぁ女の子だからそこまでキツイ言い返しはしなかった。
「ライルがカッコいいから嫉妬してるんでしょ!フツメン!」
「ああ?調子乗んなよクソビッチが。テメェだって大して可愛くもねぇのに恥ずかしくないんですかぁ?」
前言撤回だ。女の子じゃなくてクソビッチで充分だ。
俺の正論に言い返せなくなり、だんだんとただの悪口を言ってくるようになった。
ライル君は涙目になってて大人しかったのだが、俺たちの様子を見かねたのかなだめるようになっていった。
「ま、まあまあ落ち着いて…」
「「黙ってて!」」
さらに涙目になったライル君。
そこに、今まで掲示板を見て依頼を探していたリリアも参加してある程度落ち着いた。
「そもそもが誤解なんだよ。俺は弱みを悪用なんてしてない」
「じゃあ隷属の…あれ?弱みを握ってるん「勿論隷属のなんたらとかも付けてないぞ」
ライルの言葉を慌てて遮るように言葉を発したリア。首や手首、足首などを見せて何もないことを証明していた。
「ていうかお前最初から説明してれば面倒なことにならなかったんじゃ?」
多くの冒険者たちの注目を集めてしまった。悪い意味で。さっきから俺を見る目がちょっと辛い。女性冒険者からの視線が痛いです。
「いえ…こちらこそすいません…。迷惑かけちゃって……」
最初見た時とは打って変わり、少し老けたような顔をしているライル。気のせいか色白になっている。
「い、いやいや。誤解を招くような言い方をしたリリアが悪いんで気にしないで」
と、俺。
「気にすんな。アホなこと言ったソラが悪いんだからよ」
と、リリア。
「「……」」
言い返してやろう、と思ったが思い当たる節があるので黙っておく。リリアも同じだったみたいなので、お互いに無言。
「すいません…本当に……」
げっそりとしてるなぁ…。
「ら、ライル。元気出して、ね?」
「ほら、ライルならもっと頑張れるでしょ?」
そんな彼を必死に励ます女の子たち。
だがそれとは逆にドンドンと縮こまっていくライル。まああの二人に散々言われてたからなぁ。
そんな様子を見かねたのか、リリアが頭をボリボリとかいた後に立ち上がり近づいて行った。
「あー…なんだ。オレの事を心配してくれてありがとうな。だから少し考えが偏っちまったつぅか視界が狭くなったんだろ?」
「は、はい。そうです…!」
「でもな。それはこの子達も同じなんじゃねぇのか?」
「っ!!」
「だからさ、お前も許してやって欲しいんだ」
「も、もちろん!ゴメンな、二人とも」
「ううん。私たちもゴメンね」
「ゴメン」
なんか…丸く収まったみたいだ。
お母さんが優しく諭すように、優しい笑みを浮かべてゆっくりと話すリリアは…一瞬だけ聖女のように見えた。
それは俺だけだったわけじゃないらしい。ライルはリリアに向ける視線の中に尊敬や敬愛といった感情を含ませている…ように見えた。それは女の子たちも同じのようだ。
「ありがとうございます。なんだか自分が恥ずかしいですね」
「んなことはねぇよ。誰かを思ってすぐに動けるのは立派なことだぞ」
「っ!!…はい!」
なんというか…誰だろう彼女は。
ふむ……。
「俺も…大人気なくいろいろ言って、すまなかったな」
「ホントだぞ。引くわー」
……あれ。
「そうだなぁ。気をつけないとなー」
「頼むぞマジで」
………。
「おい、なんか俺だけ扱「そうだ!みんなで依頼行こうぜ!」
コイツめ。