62話
大金を手に入れ、商業ギルドを出た俺たち。
「リリア。おいしっかりしろ」
「だ、大丈夫だ。落ち着いた」
リリアはスーハーと深呼吸している。ある程度落ち着いたようだ。
「とりあえず金返すわ」
「お、おう」
一気に大金をゲットしたので借金を余裕で返せる。俺はアイテムボックスに入れてある金貨を一枚取り出してリリアに渡した。
「釣りはいらねぇ」
髪をかきあげながらそう言った。
「イラっ」
言いたかったことがまた一つ言えた。相手がどうなるかはともかく一つ野望は果たせた。
「じゃ、早速買いもん行こう!奢ってやるよ!」
「あっ、おい待てよ!そっちじゃねぇって!」
☆☆☆☆☆☆☆☆
其処は…声が飛び交う商人たちの戦場。
「らっしゃい!今日はペポルの実が安いよ!!!」
「ウチの魔道具は長持ち!魔道具を買い換えるならウチが一番!!」
声を張り上げて客を呼び寄せ、金を集める戦士たちが集う。
なんかどこの世界でも似たようなもんだな、と思いました。おっちゃんおばちゃんが笑顔で、大きな声で行き交う人々を呼び寄せようとしている。
とりあえずペポルの実が気になったので、八百屋みたいなところに寄ってみる。
日本で見たことあるような見た目の果物や野菜ばかりだが、ペポルの実という果物っぽいものがあった。
「お、にいちゃん!何がお目当てだ?」
鑑定してみようと思っていたのだが、おっちゃんが話しかけてきた。
「このペポルの実ってなんですか?」
「ペポルの実をしらねぇのかい?ペポルの実はこの地域に生える特産品だな!果汁たっぷりで爽やかな喉越しが良いと評判だな!二日酔いにいいぜ」
「へぇ、じゃあ二つ…いや10個ください」
「気前がいいね!…銀貨2枚でいいぜ。ほら、もってきな」
「ありがとうございます」
そう言って八百屋を後にした。
早速、もらった袋の中からペポルの実を取り出す。見た目は赤くて、ひょうたんみたいな形をしている。
「あむ……!」
噛んだ瞬間果汁が溢れ出てきた。溢れないように吸うようにしながら噛みちぎる。殆ど水に近かったので、ほぼ咀嚼せずに飲み込めた。
たしかに爽やかな喉越し。りんごジュースが近いかもしれない。あんまし飲んだことないけど。
「食べるか?」
「いや、いい」
リリアに聞いてみるが首を横に振った。
俺も一つで満足したので、袋ごとペポルの実をアイテムボックスにしまった。
「じゃあ次に行こう。お前はどこに行きたいんだよ?」
「ん〜…先ずは靴とか見に行ってみたいな」
「くつ?…わかった。どこだ?」
「付いてきてくれ」
リリアの後ろをついて行った。
この後も、いろいろと回ったのだが、女性の買い物は時間がかかるというのを身をもって実感した。目的の場所に行くのにも寄り道して時間がかかるし、店員さんがいろいろ進めてきて迷ったりしていた。
一度『彼氏さんですか?』と聞かれて、ぼーっとしていた俺は『えっ、はい』と答えてしまい気まずくなった。そして怒られた。でもリリアが赤くなってたのも悪かったと思うんだ。
まあ時間がかかったのは俺としてもよかったんだけどな。
「ん?なにあれ」
俺が指差した先には檻に入れられた動物…いや、魔物か?…がいた。それだけなら異世界のペットショップかな、と納得するのだが全く違うものがいた。
「ああ…奴隷市場だよ」
「奴隷…」
それは人間だった。
日本でも昔はあったらしいし、えらい口たたけるようではないのだが、やはり奴隷という単語にいい感情は持てないな。
「ま、まぁ最近は奴隷の扱いもよくなったけどな。安心しろって。少し前までは『隷属の首輪』だったらしいけど、今は禁止されてるしな。『隷属の腕輪』しかつけてねぇよ。今のご時世に生まれて良かったな」
…そうか。国王様…おっちゃんがやったのか……?いや、ちょっと怪しいな。ティアとフィアのおじいちゃんがやったんじゃないのかな。
「そういえば服装も綺麗だな」
「そりゃあな。汚い奴隷なんて好かれねぇよ。まぁ酷え使い方する奴もいたみてえだけどな…」
よく小説で悪徳貴族が肉壁とか囮にしたりするな。そういうことか?
「ん?買いたいのか?」
「いやぁ…」
ぶっちゃけ買いたい。奴隷が嫌だみたいなこと言っておいてなんだけど欲しい。
だってファンタジーラノベとかでもみんな買ってたし、何よりロマンがある!『ご主人様』とか呼ばれてみたいっ!けどーー
「無理だな」
奴隷(女)を城にお持ち香りしたらバットエンドルート間違いない。きっと、いや絶対にただでさえ少ないであろう俺の信頼度が下がってしまうだろう。
「気になっただけだ。悪い、次に行こう」
「そうか。なら飯食いに行かね?腹減ったぜ」
「そうだなぁ…」
そういえば辺りは暗くなってるし、晩御飯の時間か。いつもは城で高級なご飯ばっかりだから…。
「庶民の料理を食べてみたいでござる」
「イラ!」
「スンマセン」
だから早くダガーをしまってくれ。




