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52話



少し長めの廊下を歩き、扉を開けるととても大きな訓練所があった。コロッセオみたいな形で円状になっており、周りを椅子が囲んでいる。


「ここには結界が貼ってあるので、どんな攻撃も防ぎます。安心してください」


俺の様子をみて解説してくれた。

そうか、あの薄い膜のようなものは結界なのか。でっかいな。


「今からお二人には冒険者になるための最低限の戦闘能力を確かめさせていただきます」


「具体的には?」


「試験官と模擬戦をします。お二人は特殊職なので、スキルも確かめさせていただきますね」


「その試験官はどこに居んだよ?」


「目の前にいますよ?」


「えっ?お姉さんと戦うんですか?」


「はい。安心してください。手加減はしますよ?」


あっ、コレ多分強い人だ。


「おいおい、女のくせに舐めてんじゃねぇぞ」


お前も一応女だろうに。ていうかお前がチンピラ役になってどうする。セリフが次のページでボコボコにされるスキンヘッドキャラみたいになってるぞ。


「お二人同時でもどうぞ?」


「ちっ、おい。いくぞソラ」


「おう」


まっ、駄目元、当たって砕けろだ。せいぜい狡い手を使っていきますかね。


「行くぜ!」


腰にあったナイフを抜き、一気に距離を詰めるリリア。対するお姉さんは構えはするものの素手である。

俺も遅れてついていく。


素早くナイフを振るうがスイスイと避けられる。


「くそっ!」


俺は横から距離を詰めて素手で殴りかける…と見せかけて途中でボックスから鉄の剣を取り出す。

少し驚いたような表情をするが手首を握られ、止められる。


俺は急いで剣を手放し、手首をグルリと回し手のひらを返して相手の手首を掴む。母さんに教えてもらった護身術が役に立ったな。


ぐいっと引っ張ってバランスを崩…くず、あれ?くず…せない。


「ナイス!」


だが片腕を封じることができたので、好機とばかりに攻撃を仕掛けるリリア。


「うお!?」


しっかりと掴んでいたのが悪かったのか、お姉さんは逆に俺を引っ張りリリアにぶつけた。


「いてっ!」

「ぬおっ」


押し倒す形でリリアを下敷きにしてしまった。殴られるのを覚悟したがーー


「大丈夫か?」


逆に心配された。


「お、おう。悪い、邪魔しちゃったな」


「気にすんな」


おおう。コレがオレっ娘クオリティー。理不尽に殴ったりしないところが嬉しい。しかもニカッ!て笑いかけてくるところがイケメンです。


「…………」


お姉さんは黙ってこちらを伺っている。若干目がマジになっているというか冷たくなっているのは気のせいだろうか…。


「り、リリア。次は俺が陽動で行く。お前は隠密を使ってくれ」


「はぁ?でも障害物なんてねえぞ」


「まぁ見とけって。行くぞ!」


俺は走り出す。真っ直ぐに。だけど俺の、俺だけのスキルがある。


聖剣召喚!


カッ!と訓練所が光包まれる。そして光が収まったところには大小さまざまな剣が刺さっていた。


「無限の剣製…」


なんちゃって。怒れるかな?


冗談は置いておいて。


「うおおお!」


レベルが上がったおかげか一気に召喚しても疲れたり調子が悪くなったりすることはなくなった。なのでもう一本手に片手剣を召喚し、剣を振るう。


やはりスイスイと避けられるが、隠密を発動してるリリアを見失ってるようで注意が散漫だ。

ならもうひと押し!


「ヘイ!そこの可愛い彼女!」


お姉さんの注意をこちらに引きつけ、その隙にリリアが攻撃!完璧だろ!

狙った通り、お姉さんは『えっ?急になに?』みたいな顔でこちらを向いた。絶好のチャンス言えるだろう。


…だがリリアもこちらを向いて『えっ?』みたいな表情をしていた。


「お前じゃねぇよ!」


すぐに気がつき、走り出すリリア。

だが次の瞬間にはお姉さんが振り向く。


くそっ!間に合うか!?


「行け!」


お姉さんの左右の虚空から短剣が飛んでくがお姉さんは避け、地面に突き刺さる。飛んできた方向にリリアが潜んでいると思ったのか、目を左右に配る。


だが出てきたのは正面。


「うおおお!」


叫びながら逆手にナイフを持ちながら走るリリア。


「よしっ!」







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