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46話

再来週くらいにもがき苦しむだろう。



「くっ!やっぱり強い!」


コウキ達は周りのワイバーンと比べて一回り身体の大きいワイバーンと戦っていた。


「瞬華!」


サユリが身体強化を行った上での技能(アーツ)を使用する。日本の古武術というやつだ。身体の筋肉のバネを使って一瞬で相手を両断する技である。


「くっ、硬い!」


だが硬い鱗の前に思う通りにきれない。だが傷をつけることには成功した。


ワイバーンは久しく自分を傷つけるものをみなかったために驚いているようだ。そして同時に憤怒した。たかが人間ごときが自分を傷つけたことに。


煩わしいものすべてを食らわんとするために大きな口を開けて迫るワイバーン。


光明(フラッシュ)!」


「縮地!」


コウキが光魔法で激しい光を作り、ワイバーンの目を潰す。ちなみにソラに教わった方法。カシム達兵士も何度も模擬戦でくらっている。


そしてサユリが縮地。直線でしか動けないが一瞬だけ凄まじいスピードで動き、コウキを抱えてワイバーンの攻撃範囲から逃れる。


投擲(スローイング)


そして大きく開いたワイバーンの口に何かしらの薬品を投げるユイ。投擲(スローイング)という物体を目標に当たりやすくする魔法。ちなみにこれもソラが考えた。


投げた薬品は綺麗に口の中へと入っていき、ガラスの容器が割れる音がする。


「グオオオオオオ!」


「ブレスが来る!?」


「っ!コッチに!」


面倒になったのか他のワイバーンが巻き込まれるのを厭わずにすべてを焼き払ってしまおうと、息を食い込み始める。


「グアアアアアア!」


口から凄まじい量の炎が噴出される。先程他のワイバーンがソラに放ったものとは格が違う。


「アアアァァ....」


やがてブレスが止む。勝利を確信したワイバーンは満足そうに笑みを浮かべている。未だに辺りから煙が出ており、巻き込まれ焼け焦げたワイバーンもいるが大して気にしていないワイバーン。だが、


「ホーリーレイ!」


黒い煙の中から一筋の光線が出てくる。油断していたワイバーンは右翼に大きな穴をあける。この程度と思い、翼を動かそうとするも思うように身体が動かない。やがて空を飛んでいられなくなったワイバーンは地へと落ちる。そしてーーー


「紫電一閃」


鞘に収まった刀が一瞬ブレたかと思うと、チャキっという音がする。次の瞬間ワイバーンの首筋に一筋の線が入り、胴と頭が別々に崩れ落ちる。


「勝った....」


「うん....」


「今回は大分危なかった」


「ユイちゃんが守ってくれなかったら死んでたかもね」


ブレスを吐き出される寸前に魔法で水の壁を作り出し、炎を相殺していた。おかげでかなりの魔力を消費してしまい、気分が悪い。


「だれかレベルが上がった?」


「ちょっと待って。鑑定するから」


基本的に一度の戦闘で何人も同時にレベルが上がることはない。主にその戦闘でのMVPがレベルアップする。同じくらいだったら二人レベルアップする。豆知識。


鑑定を終え、レベルアップしたのはーーー


「ユイちゃんだね」


「ん。嬉しい」


「ユイなら納得だね。麻痺のポーションを投げてくれてなかったら逃げられてたかもしれないし」


そう、あの時ユイが投擲したのは麻痺ポーションだった。これもソラが悪戯のために何処からか仕入れていたものを没収したものだ。


「これで僕たちはまた強くなった....」



☆☆☆☆☆☆☆☆



一方のソラ


「な、なんだ今の....!」


逃げてる途中に全身に寒気が走って何事かと思ったらリーダーっぽい奴がブレス使おうとしてるし超びびったんですけどっ!


地面に潜ってなかったら危うく焼死するところだったぞ。


俺はブレスの予備動作を見た瞬間地面の土をアイテムボックスに収納し、その中に隠れて避難した。一応大岩を使って蓋をしておいた。


ただ一つ言いたいのが、この大岩にぶつかったワイバーンの顔がクッキリ残ってるんだよね。いわゆるデスマスク。それと目があってすごく不快だった....。


「お?音が止んだ」


蓋を回収し、一足で穴から出る。


「お、おぉー....」


コウキ達が立ってる場所を除いて辺りが軽く溶けている。あのブレスを受けきったのか?こぇ....。

というか生き残ったワイバーン達が一目散に逃げている。うん。気持ちは凄くわかる。


「あ!ソラさーん!」


「レベルが上がった。ぶい」


「お、おお。えらいえらい」


「ふぁ....。子供じゃないよ?」


「あー、スマン。妹と似てた上に混乱してるから勘弁」


「いいなぁ....」


「それよりもう帰らない?お腹空いたしさ!いい時間だろ?」


一刻も早くお家に帰りたい。この短時間で何度も命の危機を感じた私だよ。


「それなら安心して!アイテムボックスにお弁当入れてきたから」


俺は膝から崩れ落ちた。


世界は....この世界には希望がない....!


「早速お昼にしよ?」


「そうだね。お腹ぺこぺこです」


「ん。魔法で結界を張れば感知されにくくできる」


あ、もう決定ですかそうですか。わかってたけどね!


適当に見つかりにくそうな場所を見つけ、結界を張る。結界には単純に攻撃から身を守る効果のある壁を出すものだが、結界内の気配を消したり、相手を弱体化させたりできるなかなか興味深い魔法だ。


サユリが何もないところからレジャーシートみたいなものを取り出し、硬い土の上にひく。砂埃や風邪で飛ばされる心配はない。結界があるから。


「どうぞ〜」


そしてまた虚空から弁当箱を取り出す。水筒、コップ、ハシ、次々と出てくる。うん、ピクニックですわ。


「開けていい?」


「もっちろん!」


ユイが弁当箱の蓋をあけるとそこにはとても美味しそうな具材が入ってーーーいなかった。別におかずが入っていなかったわけじゃない。ただ、その、見た目がグロすぎるだけで。


「今回は自身作なんだ〜!」


「「「お、おぉ〜」」」


これ以外にどう反応しろと?うっ!臭いが!?この鼻腔を焼くような匂い!?


「えへへ....」


『えへへ』じゃなぇよ!?そんな期待したような、嬉しそうな顔をされても!?とても『マジで食べ物?』って聞けない!


「さ、サユリ?これって味見したの?」


「ううん。量が足りないか心配だったし、つまみ食いは良くないからね」


それ!味見をしないっていうのは料理下手の典型的な例だから!


思わず2人と目配せする。2人とも同じことを思っていたようだ。


「(どうする?これ絶対やばいやつだって)」


「(いや、でも案外味はいけるかもしれませんよ?)」


「(バカヤロウ。呻き声が聞こえる料理が美味しいわけねぇだろうが!)」


俺の幻覚と幻聴じゃなければさっきから『ウォォォォ....!』という声が聞こえてくる。いやいやいや、きっとシミュクララ現象というやつだろう。そうに違いない。


『ウォォォォ....』


「「「(ビクっ!」」」


!?


「さっきからどうしたの?みんな」


「い、いや。なんでもない。(どうする!?)」


「(私が行く)」


っ!?正気か!?

思わず声に出してしまうほどの驚愕。調べるまでなく毒物だとわかるような物を口にするだと!....あんたぁ勇者だよ。


........調べる?そうだ!


「じゃあ先ずは俺からいただこうかな」


「「(!?)」」


「(安心しろ。超鑑定を使ってみる。毒かどうかはわかるだろ。....多分)」


「はい!どうぞ!」


さてと、先ずは....この形容し難いなにかを....超鑑定!


ーーーーーーーーーーーーーーーー


怨念渦巻く卵焼き


何らかの因子によって卵焼きに呪いがかかってしまったもの。そこからは生前凄まじい怒りを持ったものの怨念が込められている。更に£♯Unknown


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「っ!?」


バカな!予想された数値を大きく上回るだと!?それに何だこれは!Unknownだって!?一体何なのだこれは....?


「い、いっただっきまーす!」


覚悟を決めて箸を手にし、怨念渦巻く卵焼きを掴む。そして口の中へと持っていく。

くっ!匂いだけで意識が持っていかれそうだ....っ!それに匂いだけじゃないっ。箸を持つ手から謎の寒気が全身に伝わる。


そしてついに口の中へと収まっていき。


「「っ!...っ!?」」


「ど、どうかな...?」


コウキとユイが忙しなくコチラを伺っている。ユイなんかはバレないように回復魔法を詠唱してるし、コウキは袋を用意していた。それゲロ袋?


「ま、まあ普通じゃないか?」


「「!?」」


「そ、そっか。普通....」


そ、そんな悲しい顔をしないで欲しい。かなり気を使ったはずなのにとてつもない罪悪感が....!


「そ、それなら僕も一口」


「止めろ!」


慌ててコウキの手を叩く。危うく1人の勇者を殺すところだったぞ!?


「(な、何でですか?)」


「(鑑定した結果ヤバい物だとわかった。『怨念渦巻く卵焼き』という名前で超鑑定でも途中から読めなくなった)」


「「(!?)」」


「(そ、ソラさんは無事なんですか?)」


「(ああ、口の中に入れた瞬間にアイテムボックスに収納した)」


「ど、どうしたの!?」


「え、い、いやその....。俺が全部食べるからお前らにはやらん!」


そう言って弁当箱を掴み、口の中にかき込むーーフリをして収納。多少箸は溶けてしまったが犠牲は最小限に収めたと思う。


「あっ、ゴメン。弁当全部無くなっちまったな!お詫びにトンカツでも出すよ!」


「や、やったー!嬉しいなぁ」


「ん!ちょうどトンカツが食べたい気分だった!」


見事な連携プレーでなんとか怨念渦巻くお弁当コースから、俺のアイテムボックスに入れてあるトンカツコースに変わった。勿論時間が停止しているので出来立てのトンカツだ。白米とソースも忘れない。


なんとかお昼ご飯イベントをくぐり抜けた俺たちだった。


「ふふ、また作ってあげるねっ!」


やめなさい。




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