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42話



「此度の件、大儀であった!」


『ははぁー!』


国王(おっさん)の言葉にリサを含める兵士たちが頭を下げて、なんか喋った後に退出する。なんか久々に異世界っぽいことを目にしている気がする。

それにリサの隊長っぽい姿は初めてだ。


ただ、鎧とかに砂が付いていたり血が付いているので汚かった。そのまま討伐の帰りに気をだろうな。でも人数が少なかったし、怪我を負ってる人とかはいなかった。ちゃんと怪我人は治療とか受けてるんだろうけど。


話を聞いてて分かったけど、討伐したのは『ワイバーン』という魔物らしい。

王都の少し離れた場所に現れたらしいのだが、高ランクの冒険者がいなくて困っていたらしい。なので王国の兵士が派遣されたみたいだ。


随分と迅速な対応だなぁ。いい王様なんだろう。勇者でもない俺を未だにここに居させてくれてるんだし、本当に有難い。まあ金さえくれれば出て行くけどさぁ。


「ソラ?どうした?」


「ん?いやーちょっと考え事をね」


「ユイのこと?」


「んー?違うぞ?」


「即答....。魔法を使って?」


む、バレてたか。まあ俺と魔力コントロールだと、魔法を使う際に余計な魔力が漏れ出してるんだしバレてしまうだろう。


三流の魔法使いならバレないかもだけど、才能のあるユイには簡単にバレてしまうだろう。

超鑑定で見せていただきましたけど、見事に後衛向きのステータスだった。称号に『賢者の芽』と『学者の卵』というのがあったし。


「まあな。ちょっと謁見の間の覗き見をしてた」


「...?ソラの魔力量じゃ簡単にできない。どうやって?」


「ここから謁見の間まで光を反射させた」


「............なるほど。一度固定させるか、場所さえ 覚えてしまえばあとは簡単。賢い」


流石はユイだ。少しの説明でいろいろと見抜いてしまう。学者の卵というだけある。


俺がしたのは水による全反射による覗き。最初はここから謁見の間に繋げるまで大変だったがけど頑張った。今ではいろんなところを好きに見られるようになっていた。


一応既存の魔法で『ディメンションスコープ』というものがある。遠く離れた空間と自分の場所の景色と音を繋げるというもの。ただそれ相応の魔力を食われるので使えない。

なので簡単の知識チートを使った。


「声は?」


「声の方は常に魔力を食われるけど再現できたぞ」


声とは空気の振動で生じるものだ。なのでその時の空気の振動をこっちまで響かせるだけ。

簡単にいうけど、ある程度集中しないと出来ないし魔力も常に食われる。


「すごい...」


これを伝えてみたところ感心された。少し気分がいい。後輩から褒められるとなんだか威厳を感じさせることができた気がする。


「でも覗きし放題じゃ?」


俺を見ながら腕で貧相な身体を隠すユイ。


「しねぇよ」


「また即答....。それはそれでレディーとして悔しい」


いやどうしろと?


「して欲しいなら立派なレディーになってからにしな」


「むう.....」


自分の身体を見下ろし、胸を揉みだすユイ。だが小さすぎるため満足に揉めていない姿がなんとも言えない哀愁を帯びている。


「ソラは大きいのと小さいのどっちが好き?」


「いや俺は大きい小さい関係ないと思うが」


「そう...」


そう言って何処かホッとしたような顔をして小さく微笑むユイ。...ちなみに俺はロリコンじゃないぞ。


「それにお前くらい可愛かったら胸くらい関係なさそうだけどな」


「っ!え、えと...」


「それに一部では需要もあるし、貧乳もステータスのうちだって言うし気にすんなって!」


「.....成長途中」


「ちょっ!痛いっ!わ、悪かったよ!そうですね!成長途中ですよね!」


貧乳という言葉は禁忌だったのか脇腹を突いてくるユイ。

中3の女子の成長期なんてすでに過ぎ去っているはずだが.....。まあ何事か希望は捨ててはいけないから....。


ユイの前であまり胸の話はしないようにしようと決意したその時....


バタン!


と扉が開いた。


「誰?」


「ん?リサか!久しぶりだな!」


つかつかと歩いて来たのはリサだった。

既に生活魔法で汚れを落として来たのか泥や血は落ちており服も着替えている。


合わなかったのは1カ月くらいのはずだったが、コウキ達の来訪や、料理などで濃密な時間を過ごしていたので、凄く久しぶりに感じる。


「こいつはリサといって王国の兵士長なんだよ。俺の訓練をしてくれる鬼教官だよ」


「よろしく」


「ああ、こちらこそよろしく頼む。ところでソラ、1つ聞きたいことがあるんだが...」


「ん?なんだ?」


「私のことを忘れていたというのは本当だろうか?」


「はは、何を言ってるんだ。そんなわけないだろう」


おいおいおいおいおいおいおいおい!

詐術さん頑張ってください!あなたが頼りです!


「そうかっ!だよな!そんなわけないと思っていたのだ!」


「当たり前じゃないか。ちなみにそんな冗談を言ったのは誰だ?」


「ん?ティア様から聞いた話だが、それがどうかしたのか?」


「いや、面白いこと言うのは誰かと思ってね」


本当に面白いね。下手したら俺の命が吹き飛ぶ。

そうか、ティアがチクりやがったのか。あとでOHANASIしに行こうか。


「そういえばその子は誰だ?」


「ああ、お前にはユイだ。もしかしたら聞いてるかもしれないけど、イースニル王国で召喚された勇者の1人だ」


「ん、ソラと同郷」


「そ、そうか。よろしく頼むぞ」


一瞬眉をピクッと動かしたような気がしたが気のせいか?...気のせいだろう。動かす理由がなさそうだし。


「さて、じゃあ俺ティアに会いに行ってくるから」


「...何故だ?」


グヌッ!?


「す、少し用事がね。すぐに戻ってくるから待ってて。じゃっ!」


俺は言うだけ言って逃げるように部屋を出た。

さて、何処にいるのだろう。OHANASIをしようかティア。



☆☆☆☆☆☆☆☆



「な、なに?」


王城の廊下の隅で俺とティアは向かい合っていた。


「フっ....」


視界いっぱいにティアの顔が映るほど俺たちは近づいており、なんだかいい匂いが鼻腔をくすぐる。ティアの息遣いが聞こえる程の距離で俺は囁く。


「言いたいことはわかってるだろ?」


「っ!!」


気づいたみたいだな。まあ俺のことを見た時点で薄々勘付いてはいたと思うが。だが今俺はティアを挟んで壁に手をついている。そう簡単には逃がさねぇぜ。


「ま、待ってっ...!こ、心の準備が......っ!」


「待てねえよ.....!」


俺は息を深く吸い込み、


「なんで言ったのさああああ!?」


「きゃあ!ちょっ、うるさ!?」


「言わなくてよくない!?わざわざ言わなくてもよくない!?」


「やめっ、近いから!顔近いから!」


「こわかっよぉ...。ズンズン一直線に向かってくるあいつの顔がぁ」


「わかったから一旦離して!?居るから!」


「真顔でさ?無表情でさ?向かってくるんだよ?」


「うぅぅ、だからさっきから見られてて恥ずかしいから....」


「忘れてたとバレたら....は?見られる?」


「居るのよさっきからそこに!」


言われて指の指して居る方向を向くと廊下の角からこちらをじっと見ている幾つかの影が。あっ、出てきた。


「ってお前らかよ!」


「いやーバレちゃったねー」


「ソラさんって時々大胆ですよね」


「壁ドン。羨ましい」


「見ててドキドキしましたっ!」


影の正体はサユリさん、コウキ、ユイ、フィアだった。そしてーーー


「おい貴様。本当は忘れていたのか?」


「ギクリっ!」


リサまで居るとはっ!や、ヤバイ...。何がヤバイって思わず『ギクリ』なんて言ってしまう自分の口が恨めしい。さっきから居たということは会話も筒抜けというわけで...。


「おい!まさかその反応本当に忘れていたのか貴様!?」


「い、いやー、えーと......ゴメンね☆」


「ぶっ殺してやる!お前を殺して私も死ぬぅ!」


「おわあ!?ちょ、それ本物じゃないよね!?偽物だーーあぶね!?ち、血が!?」


掠った頰から真っ赤な血が出てきた。ひいいぃぃぃ!?あぶっ!?おわっ!ちょっ助けて!みんな助けーー目を逸らさないで!?こっちを見ろよテメェら!


「くっ!この!ああそうだよ!忘れてましたごめんなさい!」


「貴様開き直ったな!?」


「しょうがねえだろ!同郷の勇者が遊びに来たんだぞ!?インパクト強すぎて忘れちまうよ!」


「なっ!?くっ、この.....!」


俺の言葉に歯軋りしながら目に涙を浮かべるリサ。その姿を見て今頃になってリサの心を考えることができた。友達と思っていた相手に忘れられるなんてどんな気持ちなんだろうかと。ようやく気づく。


「いや、その、言いすぎた。ゴメン....」


「くっ!謝るなバカ者!」


「どうしろと!?」


「こう、なんかお前に謝られると鳥肌が立つ....」


流石にそれは酷い!俺だって傷つくし怒るぞ!?


「それになんださっきから!『ユイ』などと呼び捨てで呼び合うなどと!」


はあ?今それ関係なくない!?


「あ、それ私も思ってました」


「私だってまださん付けなのに....」


お前らまで乗ってくるんじゃねぇよ。


「どういうことなの?ソラ」


「ティアまで一体なんなんだよ....。別に気に入ったというか友達ならそれくらい普通だろ?」


それにお前らのことだって呼び捨てで呼んでんじゃん。


「くっ!気に入っただと....!?」


「ふふんっ」


なぜお前らは名前ごときで悔しがったり自慢げになるんだ....。


「もういい!お前のことは許す」


え、なんか許してもらえた。なんだかホッとしたような気がしたが、リサこの後でもと続けてーーー


「私の事を忘れられないようにしてやるからな」


ふっと微笑みこちらを指差した。




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