39話
「どうでしょう?」
いやに....心臓の音がうるさい。ドクドクと耳元から聞こえてくる。
「ふむ........」
一言一言に集中する。
「うまい!このトンカツというのは絶品だよ!」
「日本人の僕からしてもほとんど完璧ですよ!」
ああ、この言葉をどんなに待ちわびたのだろうか。大量に量産したトンカツだったが、重大な問題が発生した。.....ソオオオオオオス!ソースがない!たしかにトンカツはそのままでも美味しいが、ソースのかかっていないトンカツなんてもはやトンカツではない!トンカツみたいなトンカツなのだ!.....やばい、何言ってんのかわかんなくなってきた。
まあとにかく!俺たちは日本のソースを再現するために何時間も何日もかけて俺とユイの2人で再現した。試行錯誤の途中で元の味がわからなくなった時もあった。そこは魔法でどうにかした。
ユイが一度母とオリジナルのトンカツソースを作ったことがあると言ったので、そこを参考に何度も何度も挑戦した。
どうにか思い出せないかと思い、魔法を作った。想起。記憶とは思い出せないだけで忘れた、消去されたわけではない。なので、引き出しにしまわれている記憶を掘り起こすという魔法。
思い出せないものほど負荷がかかる。何度も使える魔法ではなかった。
初めて作った時にはあまりの不味さに吐きそうになったりもした。勿論美少女が吐くのは嫌なので二度目以降俺が実験台、もとい味見役をしたのだが。
こうしたいくつもの試練を乗り越えた末にようやく...っ!ようやくOKを頂けた。感激のあまり涙が出る。
「ユイ....」
「ソラ....」
俺たちはお互いを抱きしめ合い、成功を祝う。
「俺...俺こんなに嬉しいの初めてだよ....」
「ん...私も」
「我が生涯に一片の悔いなし...!行こう」
「ん...」
俺たちは自然に手を繋ぎあっていた。やるべき事は終えた。あとはもう.......何もない。
「ちょっと待ちなさい!ユイさんもソラのテンションに引き込まれないで!?」
その時、待ったの声が上がる。
「馬鹿じゃないの!?」
いきなりひどい言い草だ。俺たちはすでに使命を果たしたというのに。
「魔王討伐は!?」
トンカツでも差し上げよう。きっとそれでうまくいく。トンカツが世界を救うんだ。
「私たちは!?」
?あぁ、ずっと一緒いるとかなんとかの話か。大丈夫。心はいつでも共にいるから。
「家族は!?いいの!?」
逆にいいわけないだろう。でももう会えないんじゃどうしようもない。美希、会いたいよ。
「ソラ...」
ああ、わかってるよ。大丈夫。だって...
「俺にはお前とトンカツが居るから...っ!」
「もうこのノリ飽きた」
..................さいですか。




