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30話



「申し訳ありません…お見苦しいところをお見せしました……」


ここがパーティー会場だと言うことをすっかり忘れ、大声を出したりしていたのでコウキたち勇者一行のみならず、貴族たちまで俺たちを注目していた。


恥ずかしい思いでいっぱいだ…。女を2人泣かせ、ずっと一緒にいる宣言。今すぐ窓から飛び降りたい…。

ここ一階だけど…。


ちなみに落ち着いたティアは俺と目が合うと顔を赤くし、視線を彷徨わせると周りの視線に気づき、更に顔を真っ赤にして逃げていった。


フィアの謝罪に貴族の人たちはニヤニヤと笑いながら『青春ね…』『羨ましいねぇ』などと言っている。とても恥ずかしい。すこぶる恥ずかしい。


レシアも『ああやって止めればよかったっ!』とか言ってるし…。


「ゴホン!本題に戻るが!サユリさん、スキルを返すけどいいよね?」


「うん、それはいいけど…本当にいいの?」


「ああ、本来あるべき場所に戻すだけだしね。それじゃあ」


そう言ってサユリさんに手を伸ばす。


「いてっ、何すんだよ」


コウキに手を叩き落される。なんなんだよ。


「お前こそ何をしようとしたんだい?」


「だからスキルを返そうと……ああ説明してなかったな。悪いスキルを返すには身体のどこかに触れる必要があるみたいなんだ。いいかな?」


「もちろんいいよ!むしろウェルカムです!」


「お、おおう!」


食い気味に反応され戸惑うが、許可は取ったので手を取る。


「あの!私も頭の方がいいかなーって…」


「別にいいけどなんで…?」


「だって羨まーーその方が上手くいく気がするんです私は!」


なるほど。だったらそうかもしれないな。少し恥ずかしいけどもう今更だし、そういうのが麻痺してきてる。


「わかった。…えー失礼します」


言いながら頭に手をおく。


「ん…」


髪がツヤツヤで、ヒンヤリしていて気持ちがいい。


いやいやそうじゃない。確か念じるんだっけか?とにかく物は試しである。スキルをあるべき下へ!


その瞬間何か俺とはサユリさんとの間に一本の糸のようなものを感じる。その糸が何処か深い場所に繋がっているのが感覚的に理解できる。この糸がスキルの架け橋のようなものだろう。


繋がりをもっと強くし、深い場所…魂に接続する。ここに俺のスキルを流せばいいんだろう。


だがやってみるも上手くいかない。この繋がりは細い管みたいなもので、俺のチートスキルが大きすぎせいで流れてくれない。


もっと強く念じればいいのだろうか?俺はスキルを無理やり流し込む。するとだんだんと流れていく。


「んんっ!」


管を無理やり拡張し流し込む。ゆっくりとだが、確実に進んでいっている。


「んあっ…ひぅ…」


くっ、最後の最後で詰まってしまった。なぜ詰まるのかと思うが詰まった。仕方ないので一度引き、グイっと押し込む。するとスポンと入る。スキルがサユリさんに定着するのが分かる。


「んあっ!」


この調子で次に行こう…行こうとは思うのだが……。


「もうちょっと静かに出来ないかなぁ」


「ご、ごめんなさい」


「サユリに何をしようとしてるんだお前は!」


コウキに胸ぐらを掴まれる。首が服で閉まり苦しい。………。


「離せ。苦しい」


「答えろ!」


「スキルを譲渡しているだけだ」


「それだけであ、ああんなこ、声を出すわけないだろ!」


「じゃあスキルを見てみろ!アイテムボックスEXというスキルを渡したから!」


そろそろ我慢の限界なので離してほしい。鑑定紙の使用を促し、やっと手を離してくれた。サユリさんが少し恥ずかしい詠唱をして鑑定紙を使う。


「ほ、本当に増えてる!」


当たり前だろ。そうしたんだから。


「さて、証明も出来たところで次に行きたいんだが大丈夫か?」


「う、うん。大丈夫」


「そうか、なら」


「待て!」


再度手を伸ばしたところで再び止められる。ったく…今度はなんだ?


「そのスキルの譲渡…僕に出来ないか?」


「は?」


「僕がサユリの代わりにスキルをもらい受けると言っているだ」


バカなことを言い出す勇者。コイツは何を言ってるのか分かってるのか?自分にスキルを寄越せとしか聞こえない。


「無理だ」


イライラしているせいか返答が適当になってしまう。


「なんでだ!?スキルを渡せるならできるんだろ!?」


…………。


「俺は無理だと言ったが?」


「なぜ出来ないのか僕は聞いてるのだが」


なんでコイツは自分の意見が通らないだけでこうも騒ぐ…?


「第一に俺とサユリの間にしか譲渡できる感覚がない。こればかりは感覚としか言えない。

第二に神はサユリの戦闘力を見込んだ上でスキルを渡そうとしたんだぞ。つまりお前にこのスキルはふさわしくない。諦めろ」


「なんだと!?」


「事実を言っただけだ。ここは公の場だ、静かにしてくれないか…?」


「くっ!」


さて、邪魔者も静かにしたことだし再開しよう。今度は管も広くなったので簡単にいくだろ。


頭に手を乗せ実行。思った通り、全てのスキルを譲渡出来た。


「終わりだ。超鑑定スキルがあるはずなので自分を鑑定してみてくれ」


「うん。……あっ!凄い!本当に増えてる!ステータスもちょっと上がってるし!」


「そうか。よかったよ」


こうして無事に…とはいえないまでもスキルの譲渡が終わり、そのタイミングでパーティーも終わりを告げ、みんな帰っていった。



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