3話
「へえ、そんなことがあったのか」
「ええ、大変でした。その時の同僚の顔が今でも忘れられませんよ…」
「はははは」
笑いながらお茶を飲む。セレスは無表情に見えるけど小さく表情が変わっていて、意外とコロコロ表情が変わる。今ではその変化がよくわかるようになった。いやまあそこまで時間経ってないけど。……ん?時間?
「やっべ時間!」
時計を見るとすでに40分が経っていた。
「も、申し訳ございません!すっかり忘れていました!」
「急げ急げ!」
転移してから待たせてばっかだな!
「こちらです!」
ドタバタと廊下を走っていった。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「ごめん!待たせた!」
ドアを開けながら謝る。
「全く。王族である私たちを待たせるなんて何考えてるのかしら」
「ぐっ!」
ティファがこれ見よがしに嫌味を言ってくるが今回は全面的にこちらが悪いので何もいえない。
「別にお前に申し訳ないという気持ちは抱いていない」
「何ですって!」
「仲がいいな2人は」
おいおい誰だ?目玉に似たビー球をはめてる奴はよお?
「そんなことないです父上!」
「父上?」
「国王様です」
セレスが小声で教えてくれる。
「はあ!?」
この人が!?嘘つけ!国王はもっと顔が青くてげっそりしてて自信のなさそうな感じの負のオーラを出してただろ!
「驚くのも無理はありませんね。あんなでしたから」
「手厳しいな。ハハハ」
「お前王様にそんなこと言っていいの?」
「はい。もともと私はお妃様にお仕えしていた身ですので」
「うむ、我も気にしておらんよ」
まあそれならいいけどさ。
「皆さん、ご飯が冷めちゃいます!早く食べましょう!」
「そうだな」
「いただきます」
さてと、何から食べようかな。どれも美味しそうだ。ん?
「なに?」
周りから視線を感じたので率直に聞いてみる。
「さっきのなに?」
「さっきのって…『いただきます』の事か?」
「そうよ。教えなさい」
「えぇぇ、嫌だぁ」
ティファにはあんまり教えたくないなあ。
「私も気になりました!勇者様の国の儀式か何かですか?」
「うん、これは食材となってくれた命に感謝するみたいな?感じのやつだ」
「なんで姉様にだけ素直に教えるのよ!」
「しかも何故疑問形なのですか?」
「姉ちゃんの方が好感が持てるから。それとセレス、小さいことは気にするな。シワが増えるかもしれないぞ。…いて!」
振り向くと小さなハリセンを持ったセレスがいた。
おい今それで俺を叩いたのか?というかどこから持ってきた。
「なあ、お姉ちゃんの方の名前知らないんだけど」
「あっ、そういえばちゃんと自己紹介してませんでしたよね。私の名前はフィア・アルフォードです。フィアと呼んでくれて構いません」
「よろしくフィア」
「しょうがないから教えてあげるわ!ティア・アルフォードよ!ティア様と呼びなさい!」
「これ美味いな!」
「話を聞きなさい!」
「そして我が第14代目国王、ルノド・アルフォードだ。よろしく頼む、勇者殿」
「あーこちらこそよろしく」
「じゃあ最後に俺だな。ソラ・アカツキだ。なんちゃって勇者ですよろしく」