28話
「これからよろしくなみんな。歳も近そうだし俺に対して敬語は不要だから。強制はしないけど。
そういえばみんな何歳なんだ?俺は17歳」
「僕もだ」
「私も同じです」
「私も」
同い年と。となると高2くらいか。王女様は…?
「レディーに歳を聞くのは失礼ですよ?」
「ぷっ…すまん。気をつける」
「今笑いましたね!?無礼ですよ!」
その見た目でレディーとかウケる。もっと大人になってから使いなさい。
「スンマセン。それと間違ってたら悪いんだが、勇者たちは4人と聞いていたんだが?」
男の子が1人だけ見当たらない。お腹が痛くて遅刻!とかならいいんだが………。
「その通りなのですが…」
「アイツは逃げ出したんだ!戦わなくちゃいけないのに!」
「それは違います!」
「どういうことだ?」
「すいません。分かりやすく教えていただけないでしょうか?」
逃げ出した?異世界召喚なんて大抵の男の子だったら喜ぶと思うんが?
「分かりました」
レシアが説明してくれるなら有難い。コウキだと感情的になってしまうと思うしな。
「私たちは魔王討伐のために勇者召喚を行いましたーーー」
少年1人と少女2人は並んで下校していた。三人は小学校から高2になる今までずっと一緒だった。いわゆる幼馴染というやつだ。
「昨日交通事故に遭いそうだったんだっけ?大丈夫だったのかい?」
「もう、コウキ君。朝も話したでしょ?危ないところで王子様が助けてくれたんだよ!だからこの通りピンピンしてる!」
「でもそこに誰もいなかったの聞いた。勘違いじゃ?」
「そんな事ないよユイ!私ハッキリ見たもん!」
1人の男が手違いで召喚された時の事を話し合う三人。少女は『輝く王子様』に助けられたと思っているようだ。1人のオタクに突き飛ばされ召喚の光に包まれているのを、どうやらかなり美化されているよう。
今も何処かウットリとした表情を浮かべている。そんな彼女を心配そうに見る2人。
そんなところに満面の笑みを浮かべ、本を抱えた少年が走ってくる。
「早いね駿くん。本買ってるよ」
「あぁ、確か今日は人気の本の発売日だから急がなきゃとか言ってたな」
「成る程。急いでいた理由がわかった」
少年少女と1人のオタクがすれ違うその瞬間、足元に光り輝く魔法陣が描かれる。その光は一瞬で4人を包み込んだ。
そしてとある王城。
「んん…ここは?」
「いったい何が起こったんだ?みんな無事かい?」
その言葉に全員が起き上がり、周りを見渡す。そこには何人もの人たちがおり、そこから1人の少女が出てきた。
「ようこそ勇者様!」
何処かの勇者とは違い、テンプレ通りに問題なく説明が終わり王様との話し合いが始まった。
「お主達には魔王を倒してもらいたい。だが…強制はしない。帰還の方法は勿論探す。その間は無論我々が責任を持って保護する」
幸運な事にこの国の王も優しく、強制はしなかった。正義感の強い少年は当然のごとく魔王を倒すと宣言し、少女2人はなし崩し的に参加することとなった。
だがここにオタクが1人。
「悪いが俺は辞退させてもらう」
「なんだって!?この人たちを助けたいとは思わないのか!?」
「なんではこっちのセリフだ。何故知りもしない誘拐犯達と協力したいと思う?理解に苦しむよ。まあ、そこの美人のお姫様に頼まれた時は迷ったけどな」
ケラケラと笑う少年。その言葉に正義感の強い少年は怒りを露わにするが、王女はというと満更でもなさそうな顔をしている。
「ただ、この世界の知識とある程度の力を手に入れた後はこの世界を見て回りたい。なのでその間だけお世話になる事にする」
「了解した。その程度なら喜んでさせて頂こう」
こうして1人の少年は知識と、転移時に身につけたスキルの使い方を身につける。ただ本来の勇者ではなく、巻き込まれただけなので勇者のようにチートなスキルを持っていなかった。しかし、この何ヶ月かは死にものぐるいで訓練に勤しんだ。さらに勇者級ではないにしろ、充分チートに近いのでこの世界でも自分の身程度は守れるほどの力を身につけた。
そしていよいよ旅立ちの時。
「本当に…行ってしまうのですか?」
「ああ。その為に頑張ったんだ」
朝日に照らされる少年と王女。王女の方は目に涙を浮かべている。彼女にとって少年との別れは辛いものだった。
正義感の強い少年は彼の行動が理解出来ず、今も仲は悪いままだ。
「でしたら何も言いません。でも……たまにでいいので遭いにきてくれますか?」
「当然だろ?」
その言葉に王女は笑みを浮かべ彼を送り出したのだった……。
「そして、私はあの人を送り出したのです」
「…へー」
そうなのか。正直コイツとその彼とのノロケ話はクソどうでもよかった。でも全員が強力なスキルを持っているのではないのか?それにその彼は常識的だったのだろうか?詳しいことはイマイチ分からん。
「君たちのステータスを見せてもらってもいいか?手札を見せたくないなら別にいいけど。俺も詳しく話す気はないし」
「なっ!協力しようという話だろ!?みんなの力を把握するのは当然じゃないか!」
「まあそうかもしれんが、仮にこの中の誰かが裏切る、捕まるなどして情報が漏れたりするのは避けたい」
「裏切るわけがないだろ!」
「悪いが出会って数分の相手を信用するほどできてないんでね。あと、純粋に俺が恥ずかしい」
俺のへんなスキルと貧弱スキルを見せるのは避けたい。それに今この瞬間まで忘れていたが、裸を見せるのと同じなんだっけ?…あっ、ヤバイ恥ずかしくなってきた。
「コウキ様、彼のいう事にも一理あります。引きましょう」
「ぐっ!レシアがいうのならいいけど……。僕はキチンと見せるよ!ほら!」
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コウキ・シンジョウ 人族
レベル2
力:B
耐久:C
知力:D
敏捷:B
魔力:F
スキル
光魔法
剣術
人族語理解
成長補正
称号
召喚された勇者
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懐かしいものが出てきたな。出てきたのは俺が初めて自分のステータスを鑑定した時に使った鑑定紙だ。でもやはりクオリティが低い。よって超鑑定を使わせてもらいます。
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コウキ・シンジョウ 人族
レベル2
力:B
耐久:C+
知力:D+
敏捷:B-
魔力:F
スキル
光魔法2
剣術2
人族語理解
成長補正(小)
称号
召喚された勇者
召喚され、勇者になったものに与えられる称号。
召喚者の使う言語を扱えるようになる。『人族語理解』を入手。
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成る程ね……よわ!いや、ステータスは高いと思うよ!?けどスキルが少ない上にショボい…!本当にこれが勇者か?俺とは違いチートとはいえないようなスキル。俺が特別だった?もしくは召喚された人数に分散された?原因はなんだ?
鑑定紙から目を離したフリをして顔を見ると若干得意そうな顔をしたコウキがいる。えぇぇ…。
「私もいいよ!」
そういって鑑定紙を差し出してくるサユリ。
これも見るフリをして、紙から手を離す前に鑑定し鑑定紙を見続ける…フリをする。すると予想外の結果が出た。
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サユリ・タケカミ 人族
レベル2
力:C+
耐久:C
知力:C+
敏捷:S-
魔力:A-
スキル
身体強化6
刀術8
剣術2
人族語理解
土魔法2
称号
召喚された勇者
召喚され、勇者になったものに与えられる称号。
召喚者の使う言語を扱えるようになる。『人族語理解』を入手。
(神託)
ソラ君かい?僕は神だよよろしくね!さて、まずわかってると思うけど君は真の勇者じゃないよ。この神託を持っている彼女こそが真の勇者さ!彼女は地球とかいう場所で最も戦闘力が高かったからね!あっ、勿論年齢とか魔力量とか成長率を考えた上でだよ?
で!本題に入るけど、本来彼女にあげるスキルを君が所持しちゃってるんだよね〜。そのままじゃ魔王討伐はできない!なので君には悪いけど彼女にスキルを上げて欲しいんだ。彼女に触れて念じれば出来るはずだよ。
あっ、大丈夫!渡した瞬間話せなくなる事がないように、このステータスに映ってるスキルが君のところにいくから!ようは交換みたいなものかな?でも、彼女本来のスキル。例えば刀術スキルだね。これは彼女自身のものだから君の下にはいかないんだ。
じゃ、長々とごめんねっ!よろしく!
ちなみにこの神託は君にしか見えないようになってるから心配しないでねー。
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