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27話



「は〜驚いたなぁ」


「私だって驚いたわよ」


俺たちは会場の隅に移動して素の口調で喋っている。流石にこの会話を聞かれるとヤバイというのはなんとなくわかる。


ちなみにフィアはさっきから男の貴族どもにナンパさせられている。いっちょ邪魔してきてやろうか。何人かの若い坊ちゃんが谷間に釘付け…とはいかないまでもチラチラと向いている。


「あんたって敬語が使えたのね」


「まぁ俺のいたところじゃこれが普通だと思うぞ?それより敬語使えるんだったら俺にも使えよー。お姉ちゃんを見習え」


「あら、申し訳ありませんわソラ様。以後気をつけますわ」


「悪い、俺が悪かったやめてくれ」


「そう、ならしょうがないわね」


なんだろう、ティアに敬語を使われると何故かはわからんが鳥肌が立つ。


「なあ、これ勇者同士の会合だろ?ふつうにパーティーしてちゃダメだろ」


「…そろそろ来るはずなんだけどね」


そう呟いて扉を見るティア。その瞬間ドアがバンッと開く。噂をすればなんとやら、だな。おそらくあれが勇者だろう。


「僕がイースニル王国の勇者!神城光輝…いやコウキ・シンジョウだ!」


そんな勇者様の声が響き渡った。うん、元気があるようで何よりじゃないかな。見た感じ中二から高2くらいの背丈だ。


ん?勇者は4人じゃなかったっけ?


「こ、コウキ君。ダメだよ静かにしないと」


「あ、ああゴメン紗由理。怖がらせるつもりはなかったんだ」


「そういうわけじゃなくて…」


後ろからもう1人の子が出てきた。紗由理というのか。…?あの子どこかで……?んん?


「あっ、唯!どこに行くんだい?」


さらに後ろから出てきたちっちゃい子。黒髪黒目ということはあの子も勇者なのか?どう見ても小学生じゃん。


「別に。ご飯を食べようとしただけ」


「そうか。しょうがないな唯は。僕がとってきてあげるよ」


「私は別に…行ってしまった」


この三人が勇者か。あれ、もう1人は?何処だ?イースニル の勇者は4人だった筈だが…。ここからじゃよく見えん。人に隠れたり隠れなかったりでよく見えない。


「あなた方がイースニル王国の勇者様方ですか?」


ナンパを受けていたフィアが現れ、3人に質問…確認の方が近いか。


「そうだけど君は?」


「申し遅れました。私はこの国の王女。フィア・アルファードといいます。よろしくお願いします。早速ですが、我が国の勇者と「あなたが噂に聞く王女様でしたか」


なんとこいつ話を折りやがった。さらにーーー


「噂以上に美しい女性ですねフィアは」


こいつナンパしやがった。もうアンタカッケェよ…。


「フィ、フィア?」


「安心してください。この国は、君のことは僕が必ず守ってみせる!」


「は、はあ…」


そういうとコウキ君は膝をつき、フィアの手を取ると手の甲に口づけをした。周りから黄色い声が飛ぶ。が、当の本人はというとどうやらお気に召さなかったようだ。引きつった笑顔を浮かべている。


「ありがとうございます。では我が国の勇者と面会を。こちらです」


「そうかありがとうフィア」


うわああぁ、めんどくさそう。トイレと言って逃げ出そうか。


チラッとティアの方を見ると、笑顔を浮かべ俺の手を握っていた。うん、普段なら嬉しいんだろうけどこういう時にやっても意味がないぞティア。


あっ!おい引っ張るな!危ないから!



☆☆☆☆☆☆☆☆



「こんにちは」


集まっていた勇者たちに挨拶をしながら近く。集まっていたのは勇者たち3人とフィア、そしてさっき見かけなかった子がいる。誰だ?


「そ、ソラさん…!」


フィアが救世主を見たような目で俺を見つめて来る。おいそんな目で見るな!期待してもなんもやらんぞ俺は!


「見つけた…」


「え?」


どうしようか迷ってるとそんなこと声が聞こえた。声のした方を見るとさっきの紗由理と呼ばれた女の子が俺の方を熱っぽい目で見ていた。


後ろになんかあるのかと思い右へ横へ動いて見ても視線は俺に固定されたままだった。


「やっと見つけた!私の王子様!」


「は?」


突然の事に頭の回転が止まる。…再回転。……あぁ、そっか。頭のおかしい子か……。


「あ、あの!あの時私を助けてくれた人ですよね!?」


「あの時?」


「覚えてませんか?私がトラックに轢かれそうになった時私を助けてくれましたよね!?」


トラックに轢かれそうに…?あぁー召喚を邪魔しちゃった時のやつか。


「思い出した!たしかに君だった気がする」


「はい!命の恩人です!」


「いやいや、んな大袈裟な」


「そんな!私はーーー」


「あの!そろそろ話を進めたいのですが」


驚きの再開に熱くなっていたところにフィアが声をかけてくれる。あぶねー、このままじゃ話が全く進まないところだった。


落ち着いて用意されていた席に座る。ちょうど国同士で向かい合う感じで。


「はじめまして。僕の名前はコウキ・シンジョウだ。気軽にコウキっと呼んでくれて構わないし、敬語もいらない。勇者同士だしね。よろしく頼むよ」


コウキが立ち上がって手を差し出してくる。なんだ、意外といい奴じゃないか。俺も立ち上がって手を握り返す。


俺のことを知ってるということはもうある程度話したのか?


「こちらこそ。フィアから聞いていたかもしれないがソラ・アキツキ。よろしく頼むよコウキ。そちらの子達は?」


残りの子達の自己紹介を促す。


「申し遅れました。イースニル王国王女、レシアと申します。以後お見知り置きを」


まず最初にしたのはさっきから気になっていた子だ。髪も目も異世界っぽくカラフルで、気品が漂っている。紹介を聞いたから気がついたから、多分この子はティアやフィアみたいな俺の監視役みたいなものだろう。ん?そうなるとコウキの婚約者なのか?…決めつけるのは早いか。


「私は武神紗由理です!あっ、そうか逆だったんだ。えと、サユリ・タケカミです!お願いします!」


「ユイ・ミヤマ。よろしく」


サユリとユイか。ユイはなんだか無表情プラス無口だ。個性が際立つねうん。


「では改めまして、私はアルファード王国王女、フィア・アルファードです」


「同じくティア・アルファードですわ」


こうして自己紹介が終わった。




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