23話
最近王城での生活にも慣れてきた。訓練して勉強して寝て、たまに遊んで。兵士たちとも仲良くなって友人と呼べる存在が出来た。今思えば異世界に来てから男の友人は作れてなかったと思う。
その友人についてだが、悪友の方が正しいかもしれない。なんたって王族専用の風呂を覗きしようとしてたしな。
そりゃあティアとフィアは可愛いから気持ちは分からなくもないが守るべき相手を覗きするのはもうカッケーと思う。
ちなみにこの話の結末としては鍛え抜かれた現国王の裸身を目に焼き付けて帰ってきた。それはもう真っ白になって帰ってきたよ。見てて面白かった。
さて、そんな平和な日々を送っている俺のもとに今日も人が来る。ドアをノックする音が聞こえる。
俺はどうせまたあいつらがこの部屋に遊びに来たんだろうと席を立つ。勇者用の部屋とあって広く綺麗だ。セレスも居るし、設備も充実していて過ごしやすいため溜まり場になってしまった。
今日はなにをして遊ぼうか。
ドアノブに手をつけたところで俺の危機感知スキル(持ってないけど)が反応する。
…待てよ?今ノックされたか……?あいつらはノックなんて上品な真似はしない。ならばティアとかフィアみたいな人たちだろう。そして奴らはほぼ間違いなく面倒ごとを運んでくる。今のところ驚異の100%だ。
……居留守を使おう。
しばし考えたのち居留守を使うことに決めた。な〜に、物音を立てなければバレはしない。また遊びに行ってるんだとでも思うだろう。そして探しに行ったその隙に俺は逃げる!
フワハハ、完璧な作せ「ガシャーーン!」
「モウシワケアリマセン。コップを落としてしまいました」
「もはやワザとだよねぇ!?なんでそんな片言なのさ!?こんな音立てたらーーー」
「ソラーー!いるのーーー!?」
「ソラさーん!開けて下さーい!」
ほらー!部屋の前で叫んでるよもう恥ずかしい!
「行った方がよろしいのでは?」
「……お前後でお仕置きしてやるからな」
その言葉にセレスはフッと鼻で笑い、『出来るの?』と行った表情を浮かべる。
「楽しみにしておきます」
「覚えてろよ!」
我ながら三下っぽい台詞だと思ったがこのままでもアレなのでドアを開ける。逃げたと思われるかもしれないが違うからっ。2人を待たせるは男としてアレなので早く開けたげようと思っただけだからっ!
「遅いわね!早くしなさいよ」
「…悪かったとは思うけどお前態度変わらないのな」
「ふん、今さらでしょ?」
「まっ、そうだけどな。その方が親しみやすい」
「…そう」
「ありがとうございます。ソラさん」
別にお礼を言うほどでもないが。
「それで……今日はなんの目的で来た」
「悪役っぽく言わないでよ…っ!」
「俺にとっては悪役なんだよ!どうせまた面倒事を持ち込んで来たんだろ!?もう諦めたからさっさと言えよ!」
「えぇぇ…わ、わかりました。一昨日、イースニル王国で勇者召喚が行われました」
「勇者召喚!?」
俺1人じゃなかったのか!?
「なんで!?」
「あんた1人じゃ心配だったんじゃない?」
「ああそっか。納得」
「納得しないでよ…」
「いえ、そういうわけではありませんが」
「違うのか。でも勇者召喚って莫大な費用がかかるんだろう?本に書いてあったから詳しくは知らんが、過去にも魔王を倒してもしばらく経済的に苦しかったんだ?よくやる気になったな」
「確かに費用がかかることには変わりありませんが、逆に言えば費用さえあれば召喚できるということです。イースニル王国は大国です。世界の危機なので、協力してもらう事になったのです。勇者といえどソラさん1人では大変立つと思いますし」
「フィ、フィア…っ!」
なんて優しい子なんだ…!ちゃんと俺のことも考えてくれてたんだな。でもなフィア。なんかナチュラルに俺が魔王討伐に行くこと決定してない?
「だだ…想定外のことが起ったみたいで……」
あー、これはなんとなくわかるぞ。勇者召喚の事故といえばーーー
「勇者が4人も召喚されたみたいなんです!」
やっぱりか。『巻き込まれ召喚』ってやつか……。
「4人…か」
「思ったより驚かないわね」
「何か知ってるんですか?」
「ふっ…まあ少しはな」
2人が尊敬の眼差しで俺を見る。ふふ、ふ、期待してくれ。期待で伸びる私だよ。
「その4人の中に1人だけ弱い奴はいなかったか…?」
疑問形で言ってみたがほぼ確実に近い。
「い、いえ…全員特徴は違いますがほぼ、同レベルだと」
あれぇー?
「そ、そうか。ん?でもそれだけだと特に面倒なことでもないな」
おっ?ついに100%が崩れる時が来たか…!
「いえ、勇者同士の会合があるのでそれに参加するように。…逃げてもすでに結界を張らせてもらってますので…ごめんなさい」
「クソがああ!」
確かにドアに薄い膜が貼られている。流石に2回目とあって対応が早い!それでも俺は!全く変わっていないというわけではない!
聖剣を召喚し打ち付ける。ちっ、効果なしか。それなら!
「ソラ!諦めなさ…ちょ、何しようとしてるかわからないけど止めるわよ!セレス!お姉ちゃん!」
「ハアァァっ!」
レベルの上がった聖剣の力…っ!それは!
「くっ!この輝きっ!」
「眩しい!」
「セアァァアア!!」
バリーーン
砕け散った破片から幻想的だ。
「「「………」」」
3人も呆気にとられている。
「これが…強くなったスキルの力……」
俺は自分の手のひらを見つめる。そうか…これが……。
「ただ眩しくなっただけじゃんこんちくしょう!!!」
召喚時の輝きが増すだけだった。




