2話
「すいません取り乱しました」
「い、いや、こちらこそごめんね」
あれから衛兵さんたちの力を借りて数十分かけて頭を上げさせた。…頭を上げさせたって使ったことないよ。
「ほら、ティファ。ごめんなさいしなさい」
「う"っ!!…ご、ごめんなさい」
しぶしぶと言った表情で謝るティファちゃん。
「あー話を戻すけど、お…僕はこれからどうすれば?」
凄い余計な時間を取ってしまった。
「あっ!!」
「どうしました?」
「父う……国王様との謁見するはずでした…」
ん?本来なら召喚した後に謁見する予定だったってことだよな。だけど1時間くらい余計な時間を取ってしまった。と、いう事は……
「おいバカ!王様ずっと待ちぼうけくらってるだろうが!しっかりしろよ!」
「バカとは何よ!早くも敬語が崩れてるわよ!」
「知るか!俺は悪くないぞ!俺は何も知らなかったからな!」
「お、おお落ち着いてください!いいい急げば!急げば大丈夫です!」
お前が落ち着け!
「なら早く行こう!どっちだ!」
「こ、こっちです!」
急げ!ダッシュだ、ダッシュ!
「ああぁ、何でこんなことに」
それはごめん。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「よくぞきた勇者よ」
「「「ゼェハァゼェハァ」」」
「すでに聴いておるとは思うが、お主には悪の根源である魔王を倒してもらいたい」
「ハア、ゴッホゴホ!」
「だが、いきなり魔王討伐に行くのは難しかろう」
「ゼハー!ゼハー!」
「そこで、しばらくの間城で訓練を受けてもらいたい。どうだろうか?」
「うるせえよ!何が『どうだろうか?』だ!こっちの状況見えてないのあんた!?」
疲れてんだよ察しろ!
「そうか。ならばまず、部屋に案内しよう」
「あれ!?本当に見えてないの!?」
「セレス!」
「はい」
そう言われて出てきたのはメイドの格好をした女の人。
「勇者を案内しろ」
「了解しました」
「まって話聞いて」
「こちらです」
「いやだから俺はって力強いなおい!まって!だから俺ーー」
バタン!
セレスという女に連れていかれてドアが閉められた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「申し訳ありませんでした」
「は、はあ」
曲がり角を曲がったところで突然謝られても困るのだが。今俺たちは部屋に向かう途中だ。
「なにぶん国王様は緊張しておられるようでして」
「だから話も聞けなかったと」
「はい」
いやいやいやいや、国王として緊張してしまいました、はどうなのよ。
「国王様は幼き頃から勇者に憧れておりまして…」
「あー…」
憧れていた勇者に会える!意気込んだものの変に緊張してしまい放ちも聞けないと。…うん、話を聞いても国王としてやっぱりどうなのよそれは。
「でもさ、言っとくけど俺勇者じゃないからね」
「でしょうね。さっきの貧弱な力を見る限りそうではないかと思っていました」
「酷っ!」
俺のハートにダメージが入ったよしっかり!自分で言うと何とも無いけど改めて他人から言われると心に突き刺さる!しかも真顔で言うから冗談なのかどうかわからねえ!
「ここが勇者様の部屋です」
「だから俺は勇者じゃねえって…あぁ、まだ名前言ってなかったか」
「はい。やっと思い出して下さいましたか。知能のステータスも低いと…」
ぐっ!うるさい!いちいち心にダイレクトアタックをかましてくるんじゃない!
「じゃあ『ソラ』だ。よろしく」
「『セレス』です。不本意ですがこれからよろしくお願いします」
「ありがとう。案内ありがとう。それじゃ」
「それじゃ?何を言ってるんですか?」
「うん?」
お前こそ何を言ってるんだ?
「私はあなたの専属メイドです」
「は?」
マジで?この人が専属メイド?日々心にダメージがたまっていく気しかしないんですが。
「セレスさんはそれでいいのか?」
「ですから不本意ですがと言ったでしょう。それと私のことは『セレス』とお呼び下さいご、ご主人様。……ちっ」
「今舌打ちした?」
「してません」
したよねぇ?
「まあ了解。俺のことも『ソラ』でいいよ」
「申し訳ないのですが呼び捨てはできません。『ソラ様』で」
「うーん、わかった」
メイドにもルールというものもあるだろうし。
「助かります。この国ではありませんが、過去には無理やり変な名前をメイドに呼ばせたということがあったらしいので」
「へえ、その名前って?」
「確かユウシという名前だったかと」
バリバリ日本人っぽいな。可哀想に。
「ちなみに俺の名前って変?」
「いえ、本人に勿体無いくらいまともな名前かと」
「そうか、よかっ……うん?」
今変なこと言われたような…?
それにしても基準がわからん。
「では、30分後に食事があるのでそれまでお休み下さい。何かあればお呼びを」
「あ、じゃあいいか?」
「…何でしょう?」
そんなに嫌そうな顔しなくても……。
「話し相手になってくれよ。食事まで暇だからさ」