11話
「よし!今日の訓練はこれで終わりだ!」
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…」
し、死ぬかと思った!
キツイ!死ぬほどキツイ!
何があったのか教えてやろうか!一日中試合だった。言葉にすると簡単でも!内容は最悪だ!何度も身体中を強打され吹き飛ばされる!身体中痣だらけだよ!
「ほら、水だ」
「あり…がとう…」
「どれだけ疲れているんだお前は」
う、うまい!多分水をこれほど美味しく感じたのは生まれて初めてだと思う。
「ふう…ヒール」
ある程度落ち着いてきたところで自分にヒールをかける。だんだん痛みが引いて行く。
「そうだ、すっかり忘れてたけど俺の名前はソラ・アカツキだ。ソラでいいぞ」
「ああ、ティア様から聞いている」
ああ、だから魔法をろくに扱えないと知ってたのか。
「なあ、今更だけど本当に命令があんなのでよかったのか?」
「しつこい奴だなお前も。わたしかいいと言うのだからいいのだ」
「俺、『命令無限にしてもらおうフワハハハハ!』って言おうとしてたんだけど」
「っ!!?て、天才かお前は……」
「そう言うお前は脳筋だな」
「何だと!決めた!明日からの訓練を増やしてやる」
「お?望むところだこのやろう」
☆☆☆☆☆☆☆☆
「グホァ!」
「ビビってるんじゃない!剣は友達だぞ!」
バカ言ってんじゃないよ。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「フン!おわ!…ごほぉ!」
「まだまだあまいなソラ!」
クッソ!躱したと思ったんだが。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「セア!」
「ぬおお!?」
あぶねえ!こいつ俺が回復できるから全力で斬りかかってきやがる!
「くっ!うおっ!?あぶっ!」
「このっ!逃げるな!」
「逃げるわ!」
最近は躱せるようになったと言っても本当に紙一重だ。一瞬でも体の反応が遅れると吹き飛ばされる。
足を狙われ、ジャンプで躱す。チャンス!
「おらっ!」
「フッ…」
「なっ!グエッ」
ズシャアアア!
「まだまだあまいなソラ」
「いつつ……狙ってたのかよ」
こいつめ、脳筋のくせに!
「今失礼なこと考えてなかったか?」
「脳筋のくせに」
「何だと!」
☆☆☆☆☆☆☆☆
「そろそろ次のステップにいってもいいかもしれないな」
「次のステップ?」
「ああ、反撃とはいかないまでもわたしの攻撃をある程度避けられるようにはなっただろう」
「まぁ……」
「とは言ってもわたしは身体強化してないからな!調子にのるなよ!」
「いや乗らな……は?身体強化?」
「ん?何を驚いている。わたしだって身体強化の魔法くらいできるぞ」
いやいやいや、待ってくれよ。素のスペックでこんだけチートなのかよ。いや、ズルではないか。一体ここから身体強化したらどうなるんだ?
「それでだが、お前は戦場に出てもすぐには死なない程度の力を身につけた」
行かないからね?絶対行く気ないからね?
「なので魔法の訓練メニューを組み込んでもいい頃かと思ってな」
「お!マジで!やっとこの地獄の訓練から抜け出せるのか!ヒャッホウ!」
「何を言ってるんだ。これからも毎日続けるに決まってるだろう」
……え?
「ならいつ魔法の訓練をするんだよ?」
「午前中は魔法の訓練、午後からは剣術の訓練を……おい待て逃げるな!」
「は、離せ!そんな生活嫌だ!この城から抜け出してやる!」
「させるわけないだろう馬鹿者!」
じゃあ一体いつ遊べばいいんだよ!アメを!このままでは鞭オンリーになってしまう!
「もう教官も来てるんだ!挨拶をしろ!」
「嫌だね!どうせお前みたいな脳筋だろ!?見てろ、今にこの牢獄から抜け出してやるからな!」
「貴様また脳筋と言ったな!今まで以上にシゴいてやろうか!」
はっ!望むところだこのやろう!どんな汚い手を使ってでもお前を倒してやるよ!
「あ、あの……」
「はっ!?も、申し訳ありませんフィア様!」
「ん?何でフィアがここに居るんだ?」
暇なのか?それとも俺がボコられる様を見に来たのか?
「言ってませんでしたっけ?私が魔法の訓練を担当する教官です」
「マジで!?よっしゃあ!」
「ふふ、喜んでもらえて嬉しいです」
「そりゃあ……」
俺はこの世界に来てから出会った人たちを思い出し、最後にリサをチラッと見て、
「……唯一まともな人間だからな」
「おい、私がいるだろう。何故こっちを見ない。あっ!今鼻で笑ったな!」
「鼻で笑ってゴメン」
「反省しておらんな貴様!」
「まあまあ、落ち着いてリサ」
「しかし…!」
俺はサッとフィアの後ろに隠れる。
「ほら、話が進まないから落ち着けって」
「ぐっ!ぬう…!」
きっとコイツは真面目なのでフィアに強く進言などできない。うん、何かあったらフィアに助けてもらおう。
「では、先程リサの言った通り午前中は魔法の訓練を、そして午後からは剣術の訓練を行うことになります」
「うぇぇぇ…」
改めて聞くけど地獄みたいなスケジュールだな。
「決まったことだ諦めろ」




