10話
「今から訓練を行う!」
「おおおおお!」
「……なあ、言うべきではないのかもしれないがさっきまでとはやる気が違いすぎないか?」
ふふふ、男なら誰だって剣を見せられれば興奮するさ。ああ、思い出すなぁ。小さい頃、木の棒を持って『アバ○ストラッシュ!』って言ってたっけ。
「それより俺は何をすればいい?」
「そうだな。先ずはお前の実力が知りたい。何をしてもいいかかってこい。何なら魔法を使ったって構わんぞ?」
「お、言ったなこのやろう。女だからって容赦しねえぞ」
我ながら最悪なセリフだな。
渡された木剣(片手剣)を握りしめる。
「おらああああ!」
一気に間合いを詰め、袈裟懸けに剣を振り下ろーーー
「ふん!」
「ぐえ!」
ーーーす前に腹パンされ、吹き飛ばされる。いってえええ!
「げほ!ごほ!ちくしょう!まだまだああ!……グフゥ!」
痛い!
こいつ本当に女か!?
「ふん、勇者といえどこんなものか。聞いていたが魔法もろくに扱えないらしいな。そんなものではゴブリンにさえ勝てんぞ全く」
「お、おい。剣を握って初めての試合でそんなこと言われるのは心外だぞ」
勝手に呼び出したのはそっちだろうに。
「はっ!言い訳か、見苦しいぞ男のくせに」
こいつ…!
「……お前は何でもしていいと言ったな?」
「ん?ああ言ったとも」
「なあ、ひとつゲームをしないか。次の試合で負けた方が何でも……何でもひとつ言う事を聞かせると言うルールで」
「ほう、面白い。何故そんな自信があるのか知らんが乗ってやろう。いつでも来るがいい」
「なら、行くぞ…?」
ある程度離れたところで一直線に走り出しーーー
「正面から来るか!迎え撃って…な!?」
ーーー俺は手に持っていた木剣を投げた。不意はつけたようだが弾かれる。だがその程度予想は出来ていた。驚き、目を見開くリサの目の前に向かって
「光源!」
「ぐっ!目が!」
俺はアイテムボックスからしまったままの聖剣を取り出し、そのまま首元に
「あまい!」
添えようとした瞬間聖剣を弾かれる。
「はあ!?」
何で目をつむってるのに分かるんだよ!
「目が無くとも相手の事はわかるのだよ」
「化け物め!」
「誰がだ誰が!私はれっきとした乙女だ!」
のわぁ!目が無くとも正確に剣を当てようとして来るやつは絶対化け物だろ!
「ぐはっ!」
何度も躱しているうちに壁際に追い込まれ、胴に一発入れられてしまった。
「ちくしょう」
「ふう、思いの外楽しい試合ができたな」
そうかよ。こっちは全くだったけどな!
わかるか?目が見えない筈なのにこっちに迫って来る恐怖。木剣を振り回しながら。
「何でもひとつだったな」
「ぐっ!」
絶対勝てると思ったのに!
「な、なら…その、ちゃんと名前で呼んで欲しい。化け物と言われるのはその、嫌だからな……」
「ん?そ、そんな事でいいのか?」
「そ、そんな事とは何だ!私は女の子なのに……」
「分かったよ、なら、リサ、これから頼むよ」
「あ、ああ!ビシバシ鍛えてやるからな!」
「それは勘弁して欲しいね」
それなりにお願いします。




