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1話

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今日はお気に入りのラノベの最新刊が出る日。

高校から急いで帰り、財布を持って本屋に出かけた。何しろとても人気のあるラノベなので急がないと売り切れてしまう。どれくらい人気で面白いかと言うと、3次元に興味がなくなるくらい面白い。


汗だくであと残り数冊といところで手に取り会計をして本屋を出た。あと数秒遅かったらゲットできなかった。僕はルンルン気分で帰り道をスキップで歩いていた。


その時、ふと前方を眺めていたら一台のトラックが目に入った。何かおかしいなと思っていたら、だんだんと道をずれて行っている。居眠り運転だった。しかも、その先には中3くらいだろうか?の女の子が気づかずに歩いている。


俺は走り出した。

なんか女の子を庇って死ぬのってカッコよくね?

別に死にたいと思っているわけじゃないが、命一つで命を一つ守れるんだ。しかも、自分よりも若くて未来ある子の。等価交換ではないだろうか?


ただ、予想外の事が起こった。突き飛ばす瞬間女の子の足元が光り始め、魔法陣が描かれ始める。あれ、何これ?この子異世界召喚される流れだったの?助けなくてよかった?むしろ要らないことしちゃってる!?


だが、俺は止まれずに女の子を突き飛ばしてしまった。そして光に包まれ、俺は地球から消えた。



☆☆☆☆☆☆☆☆



「ん、うん?」


何処だここ?

薄暗い石造りの部屋の中。だが、何処か神聖さを感じる。


「ようこそ勇者様!」


びっくりした!!

後ろを振り向くと豪華なドレスを着た同じ顔の美少女が2人いた。その周りを騎士やら魔法使いっぽい人達が2人を守るように立っていた。


これはあれだね、テンプレだと『魔王を倒して!』て言われるやつだな。いや、最近では悪徳召喚が流行りだからな。まあ何にしても面倒なことには変わりない。


「スンマセン人違いです」


「「え?」」


こういうのは先に行っておうた方がいいと思うんだ。あれは小3くらいだったか、国語の授業で習字をすることになった時1人の生徒が『習字習ってるらしいよ!』と言った。そのせいで習字を習っている=上手い!という事になり、書いた結果上手くも下手でもない微妙な結果になった。僕にはあの時のみんなの視線が忘れられない。


つまりは出来ないことは出来ないと言っておいた方がいい。期待させとくと後が怖いからな。うん。


「そ、そんなはずはないだけど…」


「お姉ちゃんしっかり!」


お姉ちゃんという事はやっぱり双子か。

けど、双子といっても違いがわかりやすい。まず第一に髪の色が違う。お姉ちゃんと言われた方が青色で、もう一人が赤色。

次に分かりやすいのが胸。お姉ちゃんの方がでかくて妹の方が…まあなんだ…慎ましいお胸だ。


「う、うん!コホン、あなたには神から与えられた力があるはずです!」


「うーん」


手をグーパーして力を入れてみる。何ともないけど…。試しに地面を思いきり殴ってみる。………い、痛いめっちゃ痛い!か、皮がむけた!


「違うみたいですね」


「「………」」


ほら、この沈黙が嫌いなんだよ。


「どういう事よ!」


「え?」


「何で力を持ってないのって聞いてるの!」


知るか。俺、神様とやらに会ってないし、力をもらってないし。


「さあ?」


正直に言ったらちょっと勝気な印象を与える美少女(多分妹の方)が顔を真っ赤にして怒り始める。


「使えないわね!」


「ちょっとティファ!」


喚き散らすい妹を怒る姉の図。いきなり使えない扱いされて怒りよりも困惑の方が大きい。


「えーと、僕はどうすれば?」


「あんたみたいな使えない奴なんか必要ないわ!追放よ追放!」


「はあ?」


勝手に呼びつけといて(不慮の事故があったけど)、使えない奴とか言われるのはさすがの俺もカチンと来ますよ。なにこいつ?ツンデレ?


「はあ?とはなによ無礼者!早く私の目の前からいなくなりなさい!」


こいつマジでうぜえ!


「いやーちょっとそれは困るというか」


お、おい…さすがに俺もそろそろ激おこぷんぷん丸カムチャッカファイアーするぞ。

ほら、周りを見てごらんなさいよ。みんなオロオロしちゃってるから。優しい俺だから起こってないだけだぞ。


「はっ!知らないわよそんな事!アンタなんかさっさと消えなさいよ!...やっと成功したと思ったのに、こんなのなんて....」


決めた!こいつ痛い目見せてやる!


「あーそうかそうか。この国は誘拐してその上に見知らぬ土地で餓死させるのが王族のする事なのか」


「ふ、ふん!」


「じゃあ、そんな王族の姿を国民が見たらどうなるのかな?」


「はあ?バカじゃないの?見せるわけないじゃない」


僕はニヤリと笑い、()()()()()()()()()撮り続けていたスマホの動画をみんなに聞こえる音量で再生する。


『使えないゴミなんか必要ないわ!』


「「「っ!?」」」


おーみんな驚いてるなー。ククク。


『ゴミ、ゴミ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴミ』


なんども再生する。ちょっとだけいじりながら。


『ティファ! バカ! ゴミ!』


「う、うそ!そんな事言ってない!」


「ふふ、それを国民が信じるかな?」


「そ、それを壊して仕舞えばいい話よ!行きなさい衛兵!」


やれやれ、もうちょっと慎重に動かないと。


「動くな!少しでも動いたらその瞬間この映像を全世界流す!」


「「「「っ!!!!」」」」


この場にいる僕以外の人間が動きを止める。なにこれ超気持ちいい。まあ、そんな機能スマホには無いんだけどね。


「う、嘘よ!そんなことできるわけない!」


「じゃあ試してみるかい?」


「くっ!」


いいねぇ、その顔!


「勇者様。どうかお許しください」


「お、お姉ちゃん!」


「妹の無礼はお詫びします。どうか…」


えっと…いや、ちょっとまって。これじゃあすごい俺が悪者みたいな感じになってるんだけど!俺被害者だよね?そんな風に謝られても!


「い、いや、その子が謝ってくれさえくれればそれでいい?みたいな?」


凄いしどろもどろになっちゃったよ。


「何でもしますので妹の悪評だけは広めないでください…!」


あ、あれ?


「いや、うん。もういいって」


「どうか…!」


話聞かねえなこの子!


「ゆ、許すから。頭を上げて」


「お許しを…!」


「ごめんなさい調子に乗りましたスイマセン!」


助けて衛兵さん!






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