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誰かさんのワンダーランド  作者: 天竺霽
第壱章 デュハルムベルセン商街
7/7

第7話 過去編 アリスの幼少期 其の一

今回は投稿が1日遅れてしまいました。

待っていた読者様、すみませんでした。

 アリスはそこで生まれたのか、誰が実の親なのか見当がつかない。

 誰にこの名前をつけられたのかも分からない。

 唯一覚えている記憶は、自分はどこかに捨てられた。

 つまり捨て子だ。

 もう何年も前の記憶だが、一人に男と一人の女が自分をどこかに置いていくとそのまま一切姿を現さなかった。

 幼き頃だから顔も声も匂いも覚えていない。

 それからの記憶は殆どなく、次に覚えているのは物心がつき始めた頃の記憶だ。

 そこからの記憶は鮮明で、詳しくではないが大体は話せる程度覚えている。

 その頃の記憶から引き出そう。


 アリスはリコの両親に拾われリコとともに幼少期を駆け抜けた。

 リコはアリスと初めて出会った時からアリスに興味を持っておりすぐに打ち解けることが出来た。

 7歳になる頃には、近所で仲良し2人組と呼ばれるくらい仲良しになっていた。

 同時期に魔法レベルというものを知り、少しずつだが習得していった。

 この時にアリスは自分は他の子と少し違うことに気づく。

 ほんの些細な出来事だった。


「ねえアリスちゃん、この運動って人間に出来るの?」


 リコが自分の手を器用に使って説明した。

 人差し指と中指を揃えて地面に立てる。

 その二本の指を弧を描くように上へ向けて地面につけた。

 言葉にするならバク転という技だ。

 普通の人でもするのは難しいのに幼い子にやらせたら普通は失敗するか怪我を負う。

 当のリコはそんな事を知らなかったが、一度試しにやってみた。


「ふんっ、んっ!」


 両足、両足を上げた瞬間、足は弧を描くことなく、リコの体はそのまま地面へと吸いつけられた。

 ドスンという音がしてリコが少し痛がった。

 その様子を見てアリスも試してみた。


「ん…えいっ。」


 何とアリスはバク転を軽々しくやってのけたのだ。

 リコは目を丸くしてもう一度自身もやってみようと再挑戦した。

 しかしリコの両親が来て止めに入った。


「リコ、そんな事をしたら大怪我しちゃうわよ。」


「イヤだもん、出来るもん。だってアリスちゃん出来たもん。」


 リコの両親がリコの発言に疑問んを持った。

 アリスちゃん出来たもんという言葉が脳に引っ付いて離れない。

 どうせ嘘だろうと思いたいが、誰の子供かわからないアリスなら出来るかもという謎の期待が勝り、本人に聞いてみた。


「アリス、もしかしてバク転出来たの?」


「そうだよ!くるくる回れたよ!お空も見えたよ。」


「じゃ、じゃあもう1回やってもらって良いかしら?」


 アリスはうんと頷くと何の掛け声も無くいきなりバク転をした。

 地面から両足が離れ両手がしっかりと地面を掴むと、そのまま胴体を動かし足で綺麗な弧を描いた。

 勢いを殺さず両足はそのまま地面へと着地し両手は地面から離れた。

 しなやかで軽々しく、無駄な動きが無かった。

 リコの両親にはアリスがバク転をしている時間がとても長く感じた。


「ア、アリスちゃん。す、凄いじゃないの!」


「すごいでしょ?私出来たよ!」


 アリスは褒められて嬉しかったが、数日後自分が普通にできていたことに違和感を感じた。

 自分にとっては簡単すぎる運動に筈なのになぜリコは出来なかったのか。

 幼いアリスにとっては一度考えたがどうでも良くなった。

 このようなことが度々あって考察してみると、自分は他の人よりかなり身体能力が優れていると分かった。

 __私は他の子より身体能力が高い。何でだろう。

 そんな疑問を毎日毎日抱きながら、約12年の年月が過ぎた。


 アリスの元に一通の手紙が届いた。

 アリスにとってもフラフィウス家にとっても見覚えのない住所だ。

 封を開けてみると、何とアリスの親の使いを名乗る人からの手紙であった。


「『お久しぶりです。アリス様にとっては覚えていらっしゃらないかと思いますが、幼き頃にお会いしています。あなたのお母様の正体、そのお方をご存知ではないでしょう。断言させていただきますが、この国のトップに君臨する国王の妻、リリス様でございます。そのリリス様が一度アリス様に会いたいと申しておりますので、是非とも王都に足を運びくださいませ。』ですってアリス。」


「王都ってすごく綺麗なところだよね、私行きたい!リリス様に会いたい!」


「ええ、そうですわね。では支度を始めましょうか。」


 アリスとリコの両親は、早速王都へと向かい準備を始めた。

 今住んでいるところから王都へとはかなりの距離があり、長さにすると約100km。

 魔法レベルが高ければ移動魔法も使えるのだが、リコの両親は魔法レベルがそんなに高くないので馬車か知人の移動魔法を使うしかなかった。

 長旅になることを想定して、服を10着、身を守るための使い切り盾、魔法レベルを上げるための剣の手入れ道具などなど多くの物を鞄に入れた。


 準備が終わるとリコの従兄弟であるウェルディに移動魔法を頼んだ。


移動(テレポート)!」


 唱え終わると瞬時に王都の入り口に降り立った。

 ウェルディとはそのまま別れ、リコとリコの両親とともに王都へと入った。

 途中で奇妙なお店や、変わった食べ物を売っているお店、面白い芸をしている人に出会い楽しんだ。

 一行は、リリスがいると思われる城門に着いた。

 上を見上げると、この世のものとは思えないくらい、大きく、華やかに飾られている城が目の前に聳え立っていた。

 純白の色を基調とし、屋根の部分は自然を連想させるような緑色に塗られていた。

 ずっとこのまま見ていたいと思えるほどに綺麗なのだが、本来の目的があるため城の中に入っていった。

 城内へ入るとなぜここに来たかと、兵士に理由を問われた。

 説明するより、まずは見せた方が早いと思いリコの母親はリリスから送られてきた手紙を見せた。

 その手紙を見た瞬間、兵士は肩をビクッと動かし、少し待つようにと告げてから何処かへ行ってしまった。

 言葉通りその場で待つことにした彼らは、待っている時間の間にあたりをぐるりと見回してみた。

 アリスやリコは勿論、リコに両親さえも城内に入るのは初めてでとても興奮していた。


「おお〜、すごく綺麗ね。いつか私もこんな所に来てみたいなって思っていたのよ。」


「そうだな、こういう形でまさかここに来れるとは思わなかったよ。」


 城内の飾り付けに心をときめかしていると、3人の兵士がこちらへと近づいてきた。

 すると突然、3人の兵士は膝まづいた。


「スリュク様、今までのご無礼をお許しください!我々はリリス様を唆し、スリュク様を殺そうと目論んでおりました。しかしリリス様がこの悪事に気付き我々を止めてくださいました。止めてくださった頃にはスリュク様は既に下民に育てられてしまいました。このままではスリュク様はこの栄えあるジレック王国の王女として生きていくことが大変困難になってきます。」


「ジレック王国の王女…?」


「左様でございます!ですので、ジレック王国の王女としてこちらのお城で暮らしていただきたいと存じ上げます。いかがでしょうか?」


 アリスは自分がまさかジレック王国の王女だったとは知らなかった。

 そして自分はアリスという名前ではなくスリュクという本当の名前があったことをドサクサに知らされた。


「ア、アリス。どうするの?」


 リコの母親はアリスに問いたが、自分の状況を整理するのに精一杯なアリスには届かなかった。

 そんな中、アリスは一つの答えを告げた。


「…えっと…私は、この城で暮らしたくないです。」


「⁉︎」


 その返答にはリコもリコの両親も兵士も驚いた。


「ど、どうしてそのようなご決断を…されたのですか?」


 アリスは意を決したように息をすうっと吸った。


「だって…下民なんでしょ?私を必死に育ててくれたリコの両親が。」


「い、いえ、で、ち、違いますよ。」


「さっき下民って言ったのはしっかり聞こえたよ。」


 兵士は何も言い返せなくなり黙ってしまった。

 代わりにアリスが言葉を続けた。


「私のことを何と呼んでくれても良いけれど、この方たちのことを悪く言うなら私はこの城に住まない。ずっとリコとリコにご両親と暮らすから。」


「し、しかしそれでは__」


「これがあるのかは分からないけど王女命令として私を城に入れないで。」


 本当に何も言えなくなり兵士は黙り込んでしまった。

 黙り込んでしまった兵士を見かねたのか、ある人物がアリスに話すかけてきた。


「王女命令というのは実在します。」


 声の聞こえた方向を見てみたが、誰もいなかった。

 声の主は気にせずに話し始めた。


「スリュクが王女命令を使うのならば、私も使いましょう。王妃命令として、あなたはこの城内で暮らしなさい。」























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