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誰かさんのワンダーランド  作者: 天竺霽
第壱章 デュハルムベルセン商街
2/7

第2話 泥棒猫はどの世界にもいるー前編

「待て!泥棒猫ー!」


 デュハルムベルセン商街に大声が響き渡る。

 建物の隙間をスルリと駆け抜けていく猫に対して猫を追いかける少女は身体能力を生かしてしなやかにくぐり抜けていく。

 ダンボール、古雑誌、古本、ゴミ袋。

 様々な物が建物の隙間には置かれてあった。

 途中何度か躓いてこけてしまったが、すぐに起き上がってそのまま猫を追いかけ続けた。

 ずっと追いかけていくと細い路地に出た。

 さらに細い路地を抜けると大通りに抜けた。

 行き交う人々が何事かと騒ついているが今は猫を追いかけることに集中している。


「くっそ、なかなか止まんないね。じゃあこっちも奥の手使うわよ。」


 輝くような金髪のミディアムの髪型の少女、アリス・スウェンは自身に装備してある長剣を鞘から引き抜くと呪文を唱え_ようとした。


「止まりやがれ泥棒猫!こっちは魔法レベル低いから攻撃系の呪文唱えられないの!だからいい加減止まれ!」


 ただ力任せに剣をブンブンと振り猫に威圧をかけた。

 大通りを歩く人に当たりそうになるも何とかアリスの意思で当たらないようにしている。

 アリスは魔法を習得出来るレベルに達していない為、呪文を知っていても唱えることが不可能なのだ。

 目の前を走り抜ける猫に物理的な攻撃を与えようと剣を振り続けるが、掠りもすることがなくただ闇雲に剣を振っているように見えた。


 魔法レベル。この世界に住む人々は誰でも持つことが出来る。

 レベルは0から無制限にあり、上がる事によって出来る事が段々と増えてくる。

 剣を扱える魔法、治癒魔法、剣ではなく魔法で攻撃出来る攻撃魔法、自身の身を守る防御魔法など数多の魔法を習得することが出来る。

 例えばレベル10になると簡単な剣術を習得出来たり、簡易的な自身への治癒魔法が使えたりする。

 レベル20になるとやや本格的な剣術や仲間への治癒魔法が使えるようになる。

 こうして段々とレベルを上げるといつしか簡易的から本格的な魔法へと鍛え上げられる。

 ちなみにアリスは今、レベル50である。

 レベル50であると、剣術をほぼ全て扱えるようになり、治癒魔法は広範囲の者達の回復が可能になる。

 しかし、この段階では攻撃的な魔法を習得していなく、唯一使える魔法は治癒魔法のみだ。


「おいそこの泥棒猫!私から逃げられるとでも思ってるの?こう見えても身体能力高いからね、結構執念深いからね!」


「ミャーオ」


「え?何?『捕まえてみるなら捕まえてみなさい』って?そんなのすぐに捕まえてやるわよ。地獄の果て、宇宙の果て、何処へでも追いかけるからね!指をくわえて待ってろ!」


 5分後


「あー、やっぱめんどくさいし疲れた。リコー、捕まえて来て。」


「アリスあんたさっき執念深いとか自分で言ってたんじゃなかったっけ!」


 リコと呼ばれた少女、リコ・フラフィウスはアリスの友人である。

 アリスが物心つき始めた頃からの付き合いであり、今では共に家に住んでいる。

 アリスとは見た目が違い、ハーフアップの髪型で茶髪になっている。

 魔法レベルは60であり、剣術を全て使いこなすことが出来、広範囲の完全回復が出来る治癒魔法、そしてアリスが持っていない近距離の攻撃系魔法が使える。


「リコはさぁ、攻撃魔法使えるんでしょ?私がさっき追いかけてた猫に使ってきてよ。」


「嫌だよ、だって猫派だし。」


「猫派だからこそ泥棒猫を仕留めてほしいの。犬派だったら犬を、鳥派だったら…まあ雀でも烏でも、だったら猫派だったら猫を仕留める。そういう哲学が私にはあんの。分かる⁉︎アンダスターンド?」


「分かるかそんなもん!」


 アリスはそう言うと手元に置いてある雑誌を手に取り読み始めた。

 雑誌の日付を見ていなかったため後から気づく事になるが、自分が読みたい雑誌のちょうど一年前のものであった。


「じゃあ結局私が行く羽目になるのね…まあいいや。猫が持って行っちゃったものを取り返すだけでいいよね?」


「…え?ゴメン何?聞いてなかった。」


 __アリス、あとで覚えてろよ。

 リコは猫が持って行ってしまったものを取り返しに行く準備を始めた。

『何事も準備が大事』だと思っている性格であり、かなり入念に準備をする。

 適当な物を小さめのカバンに入れながらアリスの反応を待った。


「あー、でも一人になっちゃうし、私、寂しんぼからやっぱり行かないで。」


「どっちなのよ結局!行って捕まえてほしいのか行かないで一緒に遊びたいのか!それにさ、今雑誌読んでるからいいでしょ。」


「あー、じゃあもう分かったよ。私も一緒に行くからリコも付いて来て、猫を探して取り返すから。」


 アリスはめんどくさそうに頭を掻きながら欠伸をした。

 早く行って終わらせようとして行こうとしたが、リコに止められて『ちゃんと準備をしないと痛い目に遭うわよ』と言われ、念のため自身が付けている装備を確認した。

 アリスがいつも装備している短剣、長剣はしっかりと磨き上げられ影を寄せ付けないような輝きだ。

 持ち手のところも特に異常は無かった。

 チェックが終わってリコに準備は終わったかと確認を取ろうとすると、リコは何故か先程まで小さめのカバンに荷物を入れていたはずなのに大きめのカバンに変わっていた。


「…ん?リコ、何でそんな大きなカバンにしたの?猫を捕まえて盗った物を取り返すだけでしょ?」


「いや、少し準備がいるような気がして。」


「そ、そうなのね。」


 リコの準備には10分ぐらい時間を費やしてしまってアリスから鉄拳が下された。

 かなり痛かったため、痛みを我慢して二人は泥棒猫探しへと向かっていった。


「アリス、討伐じゃないからね。」


「え、猫を殺しに討伐に行くんじゃないの?」


「つい数秒前にアリスが確認とったのに普通に覆されたよ…。」













ここには今回出てきたキャラクターのレベルなどを記入していきます。

たまに他の事が記入される事があります。


アリス:魔法レベル50

使える魔法:広範囲の治癒魔法、ほぼ全ての剣術


リコ:魔法レベル60

使える魔法:広範囲の完全回復、全ての剣術、近距離の攻撃系魔法

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