嫁と家2
金があればいいのに。
お金があればいいのに。
お金さえあれば、宝くじが当たりさえすれば。
好きだった人を考えるとそんなアングラな思いが
頭を駆け巡る。
お金を渡したくなる。
罪の意識がお金を渡すことで消えて、
お金を渡すことで好感度が買える様な気がするからだ。
「なぁ」
リビングに居るアカリに声を掛ける。
アカリはお気に入りのお笑い番組を見ている。
「ん~?あははははは」
「・・・、お金欲しいな・・・」
「え~?そうだね~・・」
「お金さえあれば、何だってできるじゃんか」
「ん~」
「俺だって仕事(週3のバイト)辞めれて、小説に集中できるし」
番組がCMへ入る。
「そうだね~・・・。お金あれば私も仕事辞めていいし~、宝くじ当ててよ~」
内心少し、ドキリとする。こいつが家計の大部分を担っている現状である。
俺が週2バイトで済んでいるのもコイツのおかげなわけだ。
「お前、お金持ってるじゃんか。趣味貯金だろ」
結婚する前に預金残高を聞いて驚いた。
「趣味が貯金」と言っていただけあって、俺の百倍の預金がそこにはあった。
俺は俺の貯金を共有財産にするのは死んでも嫌だったので
結婚してからの貯金以外の、独身時代の貯金には触れないでいたのだ。
「今は使ってるよ~。お金は使い道が思いつかなくて使わなかっただけだし。
ヨウにゃんと出会って、そしたら、楽しいこととかやりたい事とかに出会って
そういうのにお金使ってるし」
アカリはもともと、就職するまでに短期バイト経験しかない。
お金の為と言うより、高校を卒業し、大学生活までの休みが暇だったからと言う理由だ。
趣味は小説を書くことで、どこに行くわけでもない。
たまに友達に誘われて映画に行くくらいだろうか。
ご飯も自分で作る。全然お金を使わないようであった。
俺と出会って、野外ライブやTVで紹介された飯屋に行ったり、
海外旅行が好きな俺に付き合って、旅行へ行ったりしている。
「お金があれば、何でも解決できるし」
「・・・でも、お金が目的になったらダメだと思うな」
「あ?」
「目的があって、そのためにお金が必要ってこと」
「は?」
「じゃないと、お金があったらある分だけお金を使っちゃうよ」
全然言っている意味が分からない。
CMが明け、アカリはまたテレビ鑑賞へ戻る。
俺はバラエティはあまり見ない。
見るのはラノベ原作のアニメーションが多い。
参考にするのにちょうどいいからな。
俺が目指しているのは日本文学だが、
ラノベを書いている人間が日本人なので結果、参考になるってことだ。
「アカリ、俺が作品書いて出版社に投稿したら100万くれない?」
「ええ~、何で~、嫌だよ~」
「良いだろ!旦那のやる気UPにつながるし、お前100万くらい全然容易いだろうが!」
「持ってるお金の多さで、価値観って変わったらダメだと思うのだけど。
・・・何に使うの?100万円・・」
「え?・・・いや、欲しいから」
「(さっきの話、全然伝わってない・・・)」
「ん~・・・」
「それに!夫婦で貯蓄に差があり過ぎるし、結婚してからの貯蓄は勝手に使えないし
独身時代の貯金は減る一方なんだよ」
「お小遣い足りない?」
アカリと同額貰っている俺に足りないとは言えない・・・。
「いや、足りなくはないけど、急に御お金が必要になるときだってあるだろ?」
「言ってくれたら、渡すけど・・・」
「言う暇も無いかもしれないだろ!」
「・・・、分かった。じゃあ、一年以内に1作書き上げて、さらに三年で6作品以上応募すること」
「・・・、OK、それが出来たら、100万くれるの?」
「うん、良いよ」
「(まじか、言ってみるもんだな。アカリには全くメリットが見えない事だぞ)」
アカリは少し、辟易して、コーヒーを淹れにコタツから立ち上がった。
さて、四年後の100万円が楽しみだ!
「おい、アカリ、俺にもコーヒー、牛乳と砂糖入れてくれ~」