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俺と刀の異世界英雄譚  作者: 紫電 一閃
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一章 第三話・前編 俺と魔王と世界の理

また間が大きく開いてしまい申し訳ないです。

一章 第三話・前編 俺と魔王と世界の理


刀の名前を考えていたらもう夕方になってしまっていた。

「勇者殿、刀の名前は決まりましたかな?」

そう言いながらガウデさんが隣に腰掛けた。

「待たせたてしまってすみません。もう少しだけ待っていただけませんか?」

少しと言ったのに、もう何時間も待たせてしまっていた。

「ゆっくり考えていただいてよろしいですよ。なんせ自分の半身のようなものですから。」

それでも優しいガウデさんはまだ待ってくれるようだ。

考えるのを再開していると、こんどはガウデさんが話しかけてきた。

「勇者殿、マリナのやつのことをどう思いますかな?」

マリナに対してあまりいいようには思っていなかったが、心配したように聞かれたのでありがたいところだけを伝えた。

「いろいろ教えてくれるし、魔獣にあった時も助けてくれたのでとても感謝してます。」

それを聞いてガウデさんは、自分の事のように喜び笑顔になった。

「そうですかそうですか。それは良かったですじゃ。実はあの子は両親を魔王たち魔界軍に亡き者にされていましてのぉ...

仇を取るために戦っているのですじゃ」

これまでマリナのことはただの上から目線女だと思っていたが、まさかそんな事情があったとは...

「両親を亡くしてからというものあの子は悲しみの感情を表に出さず、何に対しても強気であたるようになってのぉ...

人に弱みを見せたくないからじゃろうが、事情を知っているものはむしろそれがかわいそうで仕方がないのですじゃ...」

マリナはまだガウデさんがいたからよかったものの、身寄りのなくなってしまった子供たちもいたのではないか。そう考えると胸が締め付けられる。

そういう子供たちがもう出ないようにするためにも、俺が魔王たちを倒さなければ!

そう決意を新たにしていたらいつの間にか日は沈み、もうすっかり夜になっていた。

「こんな時間まで長話を聞かせてしまって申し訳ない。それでは勇者殿、また明日お会いしましょう。」

そう言ってガウデさんは夜の闇の中に消えていった。

俺も宿屋に行き、ふかふかのベッドで明日に思いを()せながら眠った...


そして叫び声と何かが燃えている音で目が覚めた。

そして次の一声で、眠気がすっかり消え去った。

「てっ、敵襲ぅ!魔王が攻めてきたぞぉぉ!!」

俺は飛び起きるや否やまだ抜けない刀を持って外へ駆け出した。

そして見た光景は一言で言うと『赤』だった。

火の赤

血の赤

その二つが目の前に広がっていた。

俺は広場へ向かった。あの広場になら誰か集まっているはずだと思ったからだ。

結果から言うとそれはあっていた。

しかしそう考えたのは自分だけではなかった。襲撃者側も、住民のみんなも広場に集まっていた。

住民たちの周りを魔獣どもが囲み、ジリジリと近寄っている。

しかし俺が助けに入る前に、救世主が現れた。

寄ってきた魔獣達を一振りで吹き飛ばし、叫んだ。

「みんな!大丈夫⁉︎」

マリナだった。

魔獣達を薙ぎ倒しながら、住民たちのところへ向かうマリナ。

もちろん俺も、駆けつける。

俺とマリナが住民たちのところへたどり着いたその時、老人のような声が聞こえてきた。

「ハハハハハ!愚かなる人間どもよ!

我の前にひれ伏すがいい!」

実際に見たのは初めてだったが、その圧倒的な存在感で分かった。魔王だ。

「さて、新しい勇者というのはどれだ?」

魔王がこちらを向く。

睨まれただけで足が震えだし、声が出なくなる。

「貴様か...なんとも貧弱そうなものだな。いつもなら殺戮を始めるところだが、今回は貴様が目当てだ。」

屋根の上から見下ろしていた魔王が、下まで降りてくる。

「貴様の持っているその刀どうやってお前の手に渡っているか、知っているか?」

この刀は俺がこの世界に来た時にマリナに貰ったものだ。説明を求め、マリナの方を向く。

「その刀は私があなたに最初にあったあの平原であなたの隣に落ちていたわよ」

マリナはそれを拾って俺に渡しただけのようだ。

すると魔王が見かねたように説明をした。

「転生者がこの世界に来た時、この世界に存在するもののなかから何かが変化して刀となり、それが転生者に渡るのだ。素材が何になるかはランダムだ。刀の強さは元の素材に比例し、素材の特性がそのまま受け継がれる。」

つまり木でできる事もあれば金でできるような事もあるという事だ。

「貴様のその刀は、触っただけで命を刈り取られるという死歿鉄(しぼつてつ)が変化したものだ。つまりは触ったら即死の対生物用兵器だな。」

魔王はこの刀を狙っていたのだ。魔王の言っている事が本当なら、この刀が魔王の手に渡れば、魔界軍による殺戮は加速するだろう。

「その刀を我に渡せ。この世界が我の手に堕ちようと、無理矢理転生させられた上に転生して一日も経っていないお前には関係の無い話だろう?」

確かに『英雄的行動』をしたからというだけで、そこまでこの世界との縁は深くは無い。俺のその心を感じてか、マリナが声をかけてきた。

「それは違う!結果的に『英雄的行動』をしているだけでは転生はできない。誰かを助けたいという気持ちを持っている人間だけが、勇者として転生するのよ!」

俺は無意識のうちだと思っていたが、あの行動は自分の意思での事だったようだ。

そこに魔王が心を読んだかのように合わせてきた。

「しかし自分の意思とはいえ、貴様は何のためにここにいるのだ?勇者というのも頼まれただけのものだ。自分がここにいる理由も分からない小僧が世界を救えるとでも思っているのか?」

...この世界に来たのは人助けが『英雄的行動』だったからだ。

だからはじめは英雄になりたくて、目立ちたくて勇者になった。

でもこの街で一日過ごして考えが変わった。

この街の、いやこの世界のみんなが魔王に怯えなくて済むように...

もう悲しまなくて済むようにするために...

「...俺は」

俺は抜けないはずの刀の柄を握った。

「ハハハ!最後の悪あがきか?名付けの儀をしていない刀を抜けるものか!世界の理を貴様のような小童(こわっぱ)が変えられるものか!」

たとえ相手が何者でも

たとえ世界の理が邪魔をしようと

俺は!

「魔王を討つ英雄になるためにここに居るんだ‼︎」

先ほどまでビクともしなかった刀が、するりと抜けた。

「何ィ!?」

さぁ...俺の英雄譚の始まりだ

To Be Continued...

三話は前編と後編に分けているんですが、前編だけでいつもの二倍の長さなんですよねww

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