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誤解の上のすれ違い

「ど、どうしたの?」

「あいつ、あいつだよ! ストーカー野郎は!!」

 少年が指をさしたのは駿河だった。

「えっ?」

 あまりにも意外な返答に、和泉はつい間抜けな声を出してしまった。

「いつだったか、家にまで訪ねてきた。間違いない」

 和泉が止める間もなく、周は駿河に向かって走って近付いて行く。


「おい、あんた!!」

 そして和泉は同じ班になって初めて、駿河のひどく驚いた顔を見た。

「呆れた変態野郎だな、こんなところまで追いかけてきたのか?!」

「君は……?」

「義理の弟だよ、藤江美咲の!!」

「義理の……? 藤江……?」

 どうも二人の遣り取りがしっくり来ていない。


 先制を機して右ストレートを繰り出したものの、間違って審判の顔に当たってしまったという感じだろうか。

 駿河の方も相当混乱している様子だ。

 周もなんとなく様子がおかしいことに気付いたようで、救いを求めるように和泉を見つめてきた。


「えーと……」

「和泉警部補、これはどういうことですか?」

 駿河はそれでも表情を元に戻して、そう訊ねてきた。

 周はストーカーだと思っていた男が和泉に話しかけたのを見て、ひどく驚いている。

「……和泉さん、知り合い……?」

「知り合いも何も、同じ職場の仲間だよ……」


 その時だ。

「彰彦、キンパイの手配だ!!」

 聡介が血相を変えて門のところへ出てきた。

「西崎が見つかった!!」

 それから聡介は周の両肩に手を置いて、真っ直ぐに目を見つめて言った。

「いいか、連絡するまでこの旅館を出ないこと。わかったな?」

 あまり納得していないようだ。

 しかし、西崎は拳銃を持っている。彼を危険な目に遭わせる訳にはいかないという配慮だろう。

「葵、この子の傍についていてくれ。おかしな真似をしないように」

 駿河は微かに眉根を寄せた。

 周ももちろんだ。二人とも不満らしい。

「彰彦、行くぞ!!」

 聡介は年齢の割に素早い動きで駆けだす。


 今日は長くなりそうだ。

 それから、なんだか面白いことになりそうな予感がする。

 和泉はともすればニヤニヤ笑いそうになるのを必死で堪えた。


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