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裏サイト

 あの男の言ったことは本当だった。

 この美咲という女性は、自分の嘘を頭から信じて疑わなかった。

 一緒にいた孝ちゃんと呼ばれる男も。

 

 あの男……ハンドルネーム『Rain』……本名は知らない……とにかく自分に同情を引くような嘘を言えば『ミサキ』は必ず信じて庇ってくれる。

 仮に警察を呼ぶような真似をしたら、命の危険を訴えろ。

 

 おもしろいように事は上手く運んだ。

 

 ホームレス襲撃事件は翔が言いだしたことだった。

 昔本気で惚れて付き合って別れた女の子が、他チームの男、それも昔翔がケンカを売って負けてしまった相手と付き合っていると聞いた時、非常な悔しさと、どうしようもないという無力感に襲われて、とにかくムシャクシャしていたので、誰かをサンドバッグにしてやりたいと思っていた。

 

 ちょうどその時、いつも行くコンビニでホームレスが残飯を漁っていた。

 絶好のカモだと思った。

 そして最近仲間に加わった『タカヒロ』の度胸を試してみたいという気持ちもあった。

 

 タカヒロは『Rain』がある日突然、仲間にしてやってくれと連れてきた少年だ。

 華奢な身体つきで頼りなげで、女の子みたいだと思った。

 

 ホームレス襲撃事件の顛末はこうだ。

 まず下見をして、最初は石を投げたり、花火を投げ込む。警官がやってこないように見張りを立てておく。花火が建物に引火してボヤを起こした時は正直、少しぞっとした。


 しかし、慌てふためくホームレス達を見ていると楽しくなってしまった。

 何人かのオヤジ達は怒鳴りつけてきたがそんなことは気にもならない。

 あの日、逃げ遅れた仲間の1人が、ホームレスの一人につかまった。


 馬乗りになられて髪の毛を引っ張られていた。仲間と言ってもただつるんでいるだけの間柄だ。

 助けなければ、という気持ちが起きない。

 

 ただ、警察に捕まって余計なことを言われたら面倒だ。それに、足を引っ張りやがってという腹立たしさもあった。

 翔は仲間の少年の元に戻ってホームレスを引き剥がした。

 いつも護身用に持ち歩いているナイフをちらつかせると、相手は途端に怯えの様子をみせた。本当に刺すつもりはない。しかし。

「ぐえっ」とか「ぐわっ」とかカエルを潰したような声が聞こえた。

 

 見るとタカヒロがどこから持ってきたのか、角材を振り回していた。

「おい、よせよ! マジで死ぬぞ!?」

 翔はタカヒロに向かって叫んだ。他のホームレス達も止めようと必死だ。しかし彼の耳には届いていないようだった。

 やがて、一人のホームレスが完全に動かなくなった。

 

 ついにやってしまった。タカヒロは呆然と、川土手の草むらに座りこんでいた。

 どうしよう。

 そのうち警察がやってくる。少年院に入るのだろうか? 

 

 翔があれこれ考えているちょうどその時に『Rain』が車に乗ってやってきた。

 だから、その場はしのげた。

 

 けれど、生き残ったホームレス達が自分達の顔を覚えており、似顔絵まで作成されて、警察が探し回っていると聞いた時は生きた心地がしなかった。

 大丈夫だ、と『Rain』は言った。

 

 仮に警察に逮捕されても君達は未成年だ。

 それに必ずお父さんが何とかしてくれる。

 優秀な弁護士をつけてくれて無罪放免だ。


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